「幼稚園バス」なぜシートベルトの装備なしでOK? 園児を事故の危険から守る対策とは
チャイルドシートが取り付けられる仕様の幼稚園バスもあり
ガイドラインが出てから、すでに6年以上が経過しています。シートベルトが装備された幼稚園バスは、存在するのでしょうか。
累計販売台数1800台以上と日本でもっとも多くの幼稚園バスを販売している、光源舎オートプロダクツ株式会社(北海道・北広島市)に聞いてみました。
幼稚園バスのシートベルトについて、取締役社長の斉藤賢一氏は次のようにコメントしています。
「車両である以上、シートベルトはあったほうが安全であることは事実として受け止めていますが、幼児車両の椅子の構造的、幼児の体格的問題を課題としてシートベルトが設置できない実情もあります。
このような状況でも、可能な限り安全運用の方法を模索する責任が私ども製造者側にはあるとも考えております」
同社では、シートベルトの代わりに「4点式ベスト」を独自に開発したといいます。この4点式ベストは、肩・胸・腰の支えによって急ブレーキや衝突などで体が前方に放り出されることを極力抑える構造になっていて、2歳から6歳の幼稚園児の体に合わせてベルトの調整も可能です。
乗降時の取り付けや取り外しに時間と手間はかかるということですが、衝突の衝撃で座席から転げ落ちることを防ぐなど、一定の効果が期待できそうです。
また同社では、1歳前後からの本当に小さな子ども用に、3点式ベルトやISO-FIX方式で市販のチャイルドシートが安全に装着できる仕様の幼稚園バスの製造もおこなっています
自動車用シートベルトと同じように、ELR式(緊急時固定式)簡易ベルトを装備した幼稚園バスを製造する会社もあります。
幼児送迎バス専門店のシャイニングチルドレン(埼玉県・さいたま市)では、簡易型ELR式ベルトを装備し、2名から3名の幼児を一緒にベルトで固定しています。社長の大熊氏に、子どもたちの使用状況について聞きました。
「ベルトのない幼稚園バスは世の中で一番危険な乗り物です。統計の数字には出てこなくても、全国各地では毎日のように軽い接触事故や急ブレーキの衝撃によって、子どもたちが頭をぶつけたり、座席から転げ落ちたりしています。
これらの日常的な事故から子ども守る幼児バス用シートベルトは、法的な装着義務はありませんが、『つけてはいけない』という規則もありません。
弊社で開発したELR式ベルトは簡易的なものですが、子どもたちは座ったらすぐ自発的にベルトを着用しています。子どもでも3秒で着用することが可能です。
構造上、ベルトが出る部分に砂利や砂などが入ってうまく引き出せないことがあると、子どもたちは大騒ぎして、『僕だけ死んじゃう!』と泣くんですよ。
クルマに乗ったら当然ベルトを締めるという習慣ができているのですね。幼稚園バスでのシートベルト装着は、教育的な効果も大きいと思います」
※ ※ ※
チャイルドシートやシートベルト着用に関して大切なことは、自家用車ではベルトをするけど幼稚園バスではしなくていいといった、例外を作らないことだと筆者(加藤久美子)は考えます。
幼稚園バスのシートベルトが義務化されるには、さまざまなハードルを越えなくてはいけないでしょう。
そんななか、法律では規制されていなくても、園児の安全を守るため独自開発の安全ベストや簡易シートベルトなどを備えた幼稚園バスを導入する幼稚園が増えています。
安全意識の高い幼稚園を選ぶことも、保護者としての大事な選択といえそうです。
Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。
保育,幼稚園送迎バスにも シートベルトを義務化した方が良いかと思います、このところの,置き去り問題にも 大人が手伝う手間等のワンクッションで 一手間増え乗降の確認に一役かうのでは無いでしょうか、大変な仕事内容だとは思われますが 人の命を預かると言う事は それ以上に気持ちを引き締めて安全安心に向け取り組むべき事と思います。