トヨタに異変!? 人気だったC-HRやクラウンが大幅に販売台数を落としている理由とは
C-HRやクラウンを検討する人がほかのトヨタ車に移っている
ふたつ目の理由は、C-HRとクラウンの商品特性です。C-HRはモーターショーのコンセプトカーをそのまま市販するようなボディスタイルで、流行のSUVに属するため、発売時点では注目を集めました。

クラウンも同様に、歴代モデルは保守性の強いフルモデルチェンジを繰り返しましたが、現行モデルは路線を変えています。
外観は、サイドウインドウが3分割された「6ライト」のデザインで、リアウインドウを寝かせたサイドビューは、セダンというより5ドアハッチバック風に見えます。
グレード構成は、40年以上の伝統がある「ロイヤルサルーン」を廃止して、スポーティな「RS」を主力に据えました。従来はスポーティグレードの「アスリート」がありましたが、これも廃止しています。
C-HR、クラウンともにスポーツ指向を強めたので、好みに合うユーザーは購買意欲を刺激されます。「カッコイイ」「欲しい」となり、愛車の車検期間が残っていても乗り替えます。かつてのスポーツカーも、発売直後には売れ行きを一気に伸ばしたものでした。
その代わり、欲しいユーザーには短期間で行き渡るため、需要は長続きしません。先に述べた早期の受注開始もあり、発売後の短期間に集中して登録されるため、初期の伸びとその後の減少がますます激しくなりました。
C-HRとクラウンの売れ行きが伸び悩む理由に、ほかのトヨタ車が好調に売れているということもあります。
トヨタカローラ店のセールスマンは、次のように述べています。
「2019年4月に新型『RAV4』が発売されて、C-HRが影響を受けました。C-HRを検討したお客様が、後席や荷室の広さに不満を感じた場合、以前のトヨタ車では主に『ハリアー』が検討対象になりました。
ただし、ハリアーはC-HRに比べると価格が高く、雰囲気も豪華なので、C-HRを検討するユーザーにマッチしないことがあったのです。
ところがRAV4であれば、C-HRと雰囲気が似ていて、価格もハリアーほど高くありません。実際にC-HRからRAV4に購入対象を切り替えた方もいました。
また販売店に来る前の段階で、C-HRではなくRAV4を選んだお客様もたくさんいるでしょう」
クラウンを販売するトヨタ店では、このようにいいます。
「いまのクラウンにとって、一番の強敵は『アルファード』です。法人のお客様を含めて、アルファードを以前のクラウンのように使用するケースが増えました。
TVのニュースなどを見ると、政治家や企業の重役がVIPカーとしてアルファードを使っています。そこでクラウンからアルファードに乗り替えるお客様も増えました」
このほか「クラウンがRSを主力に据えて、メルセデス・ベンツ『Cクラス』などと比較されているかも知れません」という見方もあります。
以前のクラウンは「日本の高級車」を強く表現して、類似車種のない独立した存在でしたが、今はCクラスやBMW「3シリーズ」などの輸入車と同じ土俵に上がった印象があります。そうなると比較されやすく「クラウンよりもベンツ」という判断も成り立つでしょう。
そして売れ行きが下がるのは、ユーザーがその車種の商品力に満足していないからです。クラウンは従来のロイヤルサルーンに相当するような、落ち着いた雰囲気の上質グレードを用意する必要があります。
C-HRの登録台数も、最近は発売から5年以上を経過したヴェゼルを下まわります。ヴェゼルは1.5リッターターボなど新しいグレードを加えているので、C-HRにも魅力を高める工夫が求められます。
※ ※ ※
以前のトヨタは、好調に売れるライバル車を許さず、必ず対策を立てて販売面で上回る商品を投入してきたものです。
しかし最近は、このようなトヨタの厳しい姿勢が失われがちです。海外に重点を置くようになった結果かも知れませんが、トヨタが緩くなると、ほかのメーカーも緊張感を持ちにくくなります。
トヨタには意地を見せてほしいものです。C-HRとクラウンのテコ入れに期待しましょう。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。





































