ホンダ創業50周年記念として登場した名車「S2000」ってどんなクルマだった?

ホンダ「S2000」は本格的なスポーツモデルとして「本籍はサーキット」を謳い登場したオープン2シーターモデルです。ホンダにとってS800以来、29年ぶりのFRスポーツでした。

ホンダにとって29年ぶりとなったFRスポーツ

 ホンダ創業50周年を記念して1998年にプロトタイプが発表され、翌1999年の4月に正式に発売された2シーターオープンスポーツがホンダ「S2000」です。

ホンダ「S2000」
ホンダ「S2000」

 新世代リアルオープンスポーツを全面に打ち出したホンダ「S2000」は、さまざまな新技術が開発され投入されました。オープン2シータースポーツとしながら、クローズドクーペに劣らないボディ剛性、運動性、環境適合性、そして安全性を実現することをテーマに開発されたのです。

 スポーツカーとして求められる運動性能を得るために採用されたレイアウトが、フロントミッドシップFRレイアウトです。前後重量バランスの最適化と、ステアリング操作に応じて遅れることなく旋回するハンドリング特性を獲得するため、ホンダ「S800」以来29年の空白を超えて選ばれました。

 徹底してコンパクトに設計されたエンジンは、前輪車軸の後ろに搭載されます。長いノーズは、このエンジンの完璧なフロントミッドシップ搭載のために必要だったのです。同時に燃料タンクやスペアタイヤなど重量物を後輪車軸の前に置き、ヨー慣性モーメントを低減して理想的な前後重量配分50:50を実現しました。

S2000のためだけに設計されたエンジン

 S2000に搭載された「F20C型」エンジンは、完全にS2000だけのために設計された専用ユニットです。2リッター自然吸気DOHC・VTECエンジンの開発テーマは「アクセルの操作に遅滞することなく加速するレスポンスを持ち、一般道からサーキット走行まで楽しめる高い性能を実現する」ことでした。

 得られたアウトプットはNAエンジンのクラス水準を大きく超える、最高出力250馬力。なんとリッターあたり125馬力を達成し、低回転からレブリミットの9000回転までスムーズで伸びのあるパワーフィールの持ち主でした。

 それでいながら、当時の排出ガス規制である平成12年規制値を50%下回り、燃費は12km/リッター(10・15モード)を実現していました。専用設計のエンジンゆえ、エンジンオイルの交換もS2000専属販売店のメカニック以外、手が出せないというものでした。

 この高性能VTECユニットの特性にマッチし、爽快な加速感と軽快なシフトフィールを得るために組み合わせたトランスミッションは、これも新設計となるクロスレシオ6速MTです。

 軽量なフライホイールの採用やドライブシャフトの剛性アップで、アクセル操作に対するレスポンスは抜群で、息を呑むような加速感をもたらしました。

 また、シフトノブは振動が伝わりにくい高剛性とし、ギアボックスケースにシフトユニットを直付けするダイレクトチェンジ構造を採用、操作性の向上を図っています。

 ただ、この6速MTは、マニュアルギアボックスに慣れていない乱暴な操作では、ジャダー(振動)が発生しやすく、左足による繊細なクラッチ操作が要求されました。

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