初代は先進的すぎて不人気だった? トヨタ「プリウス」が世界的な大ヒット車になった理由
コスパがよくないのに、わざわざプリウスを購入する理由とは?
北米市場では、日本より前の2005年からヒットしました。プリウスは「環境に優しいクールなクルマ」として、ハリウッドセレブの間で人気に火が着いたからです。
2006年は環境問題を指摘する「不都合な真実」という映画も公開されるなど、地球規模の環境問題がクローズアップされるようになった時代だったことで、その動きをハリウッドセレブが敏感にキャッチし、愛車にプリウスを選んだというわけです。
また、欧州市場でトヨタのハイブリッド車の販売が大きく伸びたのは2016年からです。欧州メーカーは、「環境対策にはハイブリッドよりもディーゼルエンジンが本命」といっていましたが、2015年秋にフォルクスワーゲンによる「ディーゼルエンジンへの不正」が発覚し、その後、一気にトヨタのハイブリッドの人気が高まったというわけです。
ただし、欧州の人気車はプリウスではなく、「オーリスハイブリッド」「ヴィッツ(欧州名:ヤリス)ハイブリッド」「C-HR」です。
1997年にトヨタが、これからは環境対策が重要になると考え、初代プリウスを世に送り出したときの世の反応は、正直、「環境問題ってなに?」というものでした。トヨタの考えは、先に進みすぎて、ほとんど理解されなかったのです。
しかし、第2世代で北米が気づき、第3世代で日本、そしてディーゼルの不正が発覚した2016年以降に欧州がようやくハイブリッドの価値を認めたことになります。
いまでは、だれもが「地球の気象がおかしくなっている」ことを実感していますし、その対策のために「燃費の良いクルマ」が必要であることは理解できていることでしょう。
とはいえ、購入するすべての人が世界的な環境問題を理解した上で、プリウスを選択しているわけではありません。単純に「燃費が良い=ランニングコストが安い」という理由で購入している人も多いのです。
お金のことだけをいえば、プリウスは同サイズの普通のガソリン車と比べると新車価格が割高です。燃費の良さで新車価格の割高さを解消しようというのであれば、相当な距離を走らなければなりません。
それほど距離を走らない人にとっては、あまりコストパフォーマンスの良いクルマではありません。「カローラハイブリッド」のような、もっと車両価格と燃費性能のバランスが優れたクルマも存在するのに、なぜプリウスをわざわざ購入するのでしょうか。
プリウスを所有する多くの人は、「先進性が魅力である」といいます。
プリウスは、パワートレインがハイブリッドというだけでなく、「人をクルマにどう乗せるのか」というパッケージングも独特なものがあります。外観や車内のデザインも、新しいモノを求める姿勢が感じられます。つまり、動力源だけでなく、すべてが新しいモノを狙っているのです。
逆にいえば、伝統的なものを好む人たちにとっては、プリウスは掟破りなことばかりするひどいクルマに見えるでしょう。スタイルは伝統的ではありませんから、「格好悪い」となります。パワーよりも燃費性能を優先しているため「パワーが足りない」、操作系も新しくしているので「使いにくい」となります。
しかし、そうした先進性を“全身”で体現するから、プリウスの個性が光るようになるのです。そして、日本人は、そうした先進性が好きなのでしょう。
けっして安くないクルマが販売ランキングのトップを飾るというのが、日本人の国民性といえるのではないでしょうか。
代々で性能の進化を語るのは間違い製品としては初代プリウスこそが本当の製品