走りのホンダ復活へ「S2000」以来の後輪駆動 来年発売のEV「ホンダe」から方向性大転換の理由
今後のEVは後輪駆動を基本として走りとパッケージングを両立
そんな期待大のホンダeですが、驚いたのはその駆動方式。なんと後輪駆動なのです。もちろん市販仕様も、そのまま後輪駆動で発売されます。
このボディタイプでは一般的な前輪駆動ではなく、後輪駆動とした理由について、開発をまとめているホンダ四輪R&Dセンター LPL主任研究員の人見康平氏は次のように説明します。
「ホンダeは、走りを楽しめるEVを目指しています。パワーもしっかりあるので、後輪駆動のほうが楽しく走れますよね。
また、車体サイズの割に径の大きなタイヤ(17インチ)を履いているので、後輪駆動としたほうがハンドルの切れ角を大きくすることができ、小回りを利かせられるというメリットもあります」
現在のホンダのラインナップは、軽の「S660」と「アクティ」は後輪駆動ですが、普通乗用車は前輪駆動もしくは4WDで、後輪駆動車はありません。ホンダeは、FRスポーツカー「S2000」以来の後輪駆動車となるのです。
Honda Meeting 2019では、今後の電気自動車用の考え方も示されました。そこで興味深かったのが、今回公開されたホンダeに限らず、ホンダの次世代EVは後輪駆動をベースとするという表明でした。
前輪駆動ではなく、後輪駆動もしくは後輪駆動をベースにフロントにもモーターを加えた4WDにするというのです。これは驚きました。
説明担当のエンジニアにあえて後輪駆動とする理由を尋ねてみたところ、次のような回答が得られました。
「後輪駆動とすることで、走りが爽快になりますよね。重量配分も(ハンドリングのために理想とされる)50:50に近づきます。
そしてモーターはエンジンより小さいので荷室床下へ搭載することが可能で、パッケージングも効率化できます。
タイヤも大きく切ることができるし、フロント部分(ボンネット内)の空間に余裕ができるので、変わったデザインのクルマも作れます」
考え方としては、荷室下にエンジンを搭載する後輪駆動とし、抜群のタイヤ切れ角を誇るルノー「トゥインゴ」に近いともいえます。
ホンダにはメカニズムのスペースを最小限にして居住空間を広げる考えの「MM(マンマキシマム・メカミニマム)思想」が根底にあり、これまではパッケージングの高効率化を実現するために前輪駆動を多く採用していました。
ところがEVでは、走りとパッケージングのために後輪駆動を基本とする方向へ大転換するというのだから驚かずにはいられません。
EV化はクルマのパッケージングも根本的に変えてしまう可能性があるのです。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。
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