ラジオやヒーターすら無いクルマがあった!? 走るためだけに誕生したクルマ5選

方向性がまったく異なる2台のストイックなクルマ

●三菱「ジープ」

自衛隊車両に採用されるなど悪路走破性と信頼性が極めて高かった三菱「ジープ」
自衛隊車両に採用されるなど悪路走破性と信頼性が極めて高かった三菱「ジープ」

 三菱「ジープ」というと、これまで紹介したクルマとは対極に位置するモデルですが、しっかりと共通するところがあります。ジープは速く走ることではなく、悪路の走行性能をストイックなまでに追求したクルマということです。

 三菱「ジープ」は本格的な4輪駆動車の原点ともいえ、1952年に三菱自動車の前身である「新三菱重工業」とアメリカの「ウイリス・オーバーランド社」との間で締結された契約のもと、ノックダウン方式により翌1953年には第1号車が完成しました。

 1956年からは国産ジープを本格的に生産し、以来約半世紀に渡って根強いファンに応え、20万台を超える台数が生産されました。

 シンプルなメカニズムのパートタイム4WDシステム(切替式)と長いサスペンションストロークによって、悪路走破性の高さはもちろんのこと、トラックと同じフレーム構造に前後リーフスプリング(板バネ)の採用は、丈夫で高い耐久性を誇ります。

 また、装備は当初から一貫してシンプルで、快適装備というとヒーターとラジオくらいです。決して軽いクルマではありませんがパワーステアリングが無いため、カタチに惹かれて買ってみたものの普段使いには辛く、すぐに売ってしまうユーザーも多かったといいます。

 1998年に専用ボディカラー、専用幌生地、防錆強などを採用した「最終生産記念車」が発売され、三菱ジープは長い歴史に幕を引きました。

●ケータハム「セブン」

フォーミュラーカーに近い乗り味と評されるケータハム「セブン」
フォーミュラーカーに近い乗り味と評されるケータハム「セブン」

 イギリスを代表するレーシングカーおよびスポーツカーメーカーといえばロータスです。

 ロータスを創業したコーリン・チャップマンは天才技術者で、もともとは裏庭でクルマをチューニングしてレースに出るという「バックヤードビルダー」から会社を興し、F1に参戦するまでの成功を収めます。

 レースに出る傍らで、市販車(キットカー)の製造もおこなっていたロータスは、のちに傑作といわれた「セブン」を1957年に発表します。

 セブンは古典的なロングノーズ・ショートデッキのスポーツカーで、ドライバーは後輪軸付近に座るレイアウトになっていました。

 このセブンは大ヒットを記録して1973年の「シリーズ4」まで生産が続きます。そしてセブンの製造権と販売権を引き継いだケータハムによって作られた「シリーズ3」セブンの進化系が、いまのケータハム「セブン」になります。

 ロータスのころからエンジンや足回りは進化していますが、装備自体はほとんど変わらず、ヒーターは基本的にオプション扱いであったり、かつてラインナップしていた廉価グレードでは、フロントウインドウもありませんでした。

 セブンはドライバーをサポートする電子装備もなく、ドライバーの技量に委ねられているピュアスポーツとして、世界中で人気を維持しています。

※ ※ ※

 日々進化する安全装備や、低燃費化技術によって、クルマは人にも環境にも優しくなっています。

 今回紹介したようなストイックなクルマは、いまの環境での実現はなかなか難しいですが、新時代のスポーツカーとして、安全面を担保しつつ軽量かつパワフルなモデルが出ることに期待したいところです。

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Writer: くるまのニュース編集部

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