トヨタも軽視出来ず ダイハツのOEMで軽自動車販売せざるを得なくなった理由

トヨタの軽自動車販売の歴史は浅く、2011年からです。現在は、子会社であるダイハツからのOEMとして、乗用車の「ピクシスエポック」「ピクシスジョイ」「ピクシスメガ」と、商用車の「ピクシストラック」「ピクシスバン」の5車種を販売していますが、なぜトヨタは軽自動車を販売するようになったのでしょうか。

トヨタが軽自動車の販売を始めたのは、ディーラーや顧客のため

 トヨタが本腰を入れて軽自動車を売ろうと考えていたかというと、疑問です。それは年間6万台という販売の目標設定にあります。

トヨタ「ピクシストラック」
トヨタ「ピクシストラック」

 当時のトヨタの国内販売は、年間150万台以上。それに対して、年間6万台はあまりに少なすぎるといえるでしょう。

 しかも、振り返ってみれば、これまでのトヨタの軽自動車の販売実績は、2013年度の約4万3000台をトップに、2万から4万台弱に留まります。本気で販売攻勢をかけたという雰囲気はありません。

 トヨタの軽自動車販売は、疲弊した販売会社に対する数ある応援のうちの“小さなひとつ”。それが、本当のところだったのではないでしょうか。

 また、前々からトヨタのユーザーでありながら「セカンドカーとして軽自動車が欲しい」「家族のために軽自動車を購入したい」というニーズがあり、そうした声に応えるために、ダイハツのディーラーを紹介していたという現場の事情もあったようです。

 そういう意味でも、トヨタが軽自動車を扱うことを販売の現場では歓迎したに違いありません。

 トヨタに軽自動車を提供するダイハツは、2016年からトヨタの完全なる子会社となりました。目的は、小型車ビジネスの強化です。

 これにより、ダイハツは、自社だけでなくトヨタの小型車にも大きく力を発揮することが求められるようになり、現在では軽自動車だけでなく、「パッソ」「ルーミー」「タンク」など小型車もダイハツ製となりました。

 最近、ダイハツが発表した新しいクルマ作りの考えであるDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)は、ダイハツだけではなくトヨタとの協業も見据えているといいます。

 さらに、トヨタは電動化の挑戦として、軽自動車よりも小さな新しいジャンルに電気自動車を投入するという計画もあり、ここにもダイハツが関わってくる可能性があります。

※ ※ ※

 2019年1月の東京オートサロン2019で発表された「コペンGRスポーツ・コンセプト」は、ダイハツ車でありながら、トヨタのガズー・レーシングと連携して発売を目標に開発されたものです。

 もし実現できれば、「コペンGRスポーツ・コンセプト」はトヨタ「スープラ」の末弟ということになるのでしょう。

 ダイハツとトヨタの協業が進むことで、魅力的なクルマが誕生できるというのであれば、それは喜ばしいこと。どんどんと新しい提案が出てくることを期待したいと思うばかりです。

【了】

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Writer: 鈴木ケンイチ

1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。

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