暴走族が大激減? 族員が全盛期の13%まで減った理由とは

少子高齢化も暴走族減少の一因か

 ほかにも、暴走族の減少には理由があるようです。

不良集団が乗るクルマにも変化が(写真はイメージ)

 昭和50年代後半の暴走族事情に詳しい杉森さん(仮名)は、次のように説明します。

「当時暴走族をやっていた若者は、東京・世田谷区や杉並区出身の人が多く存在しました。彼らは貧困層ではなくアッパーミドル層で、何不自由なく育ってきた若者たちが中心でした。

 しかし、パンチパーマ・リーゼント・特攻服で改造車に乗ることをかっこ悪いと思い始めた彼らは、昭和の終わりころになると渋谷や六本木に集まり始め、「チーマー(ファッション要素も入った不良集団)」へと変化していきました。

 それに伴い、『竹やり出っ歯』の改造に代表されるセダン系の暴走族車は、やがてハイリフトの4WD車や、ベタベタにローダウンしたVW『ビートル』などに代わっていったのです」

 たしかに、かつて渋谷ではチーマーが車高を極限まで上げた4WD車で夜のセンター街の近辺を闊歩(かっぽ)していました。当時、4WD雑誌の編集部にいた筆者(加藤久美子)も、とあるチーマーに何度か取材した覚えがあります。

 当時、圧倒的な人気を誇った「渋カジ」ファッションでキメて、車高を上げたトヨタ「ハイラックスサーフ」などに乗る彼らは、暴走族とはまるで異なるおしゃれな雰囲気だったと記憶しています。

 バブル崩壊後、暴走族はさらに減り続け、それぞれの規模も100台近い大規模集団ではなく、数台から十数台程度へ小規模化していきました。

 そして前述の春山さんが話す「規律の厳しい集団の一員になることを嫌う傾向が強まってきた」ことは、警察庁の調査でも明白です。警察庁が作成した資料『暴走族の勢力と動向の推移』を見てみましょう。

 カッコの外はグループ数と総人員数を表していて、カッコ内は「グループ未加入者」の人数とその比率です。5年間だけを見ても、グループ未加入者は63.7%から76.5%と約13ポイント近く増えています。

・平成25年:311グループ 5817名(3705名/63.7%)

・平成26年:282グループ 5656名(3707名/65.5%)

・平成27年:211グループ 5416名(3909名/72.2%)

・平成28年:193グループ 5265名(3804名/72.3%)

・平成29年:171グループ 5051名(3866名/76.5%)

 ちなみに、平成15年は全国で1251の暴走族グループがあり、総人員は1万7704名。うちグループ未加入者は5872名(33.2%)という割合になっています。

 ここから、暴走族のグループ数や総人員数が大幅に減っているなかで、急速な勢いでグループ未加入者の割合が増加していることがわかります。

 かつての暴走族は20歳以下の若者が中心で「引退するときに若い世代を代わりに暴走族へ入れるのが慣習だった」(春山さん)ともいいます。

 しかし近年は少子高齢化が進み、掟の厳しい集団に属することはもちろん、暴走族そのものを嫌悪する社会となっているため、後継者がいなくなりグループ自体が解散・消滅の傾向にあります。

 そこで「旧車會」に代表される「高齢暴走族」のように、一度解散した暴走族のメンバーが新たなグループを作って活動を再開したり、中高年が新たにグループを作ったりして活動するケースも増えているのが現状です。

【了】

かつて暴走族が乗っていたクルマとは?(10枚)

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Writer: 加藤久美子

山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。

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