SUVブームには共通点が存在? 平成の終始にあったクルマのブームが似て非なる理由とは
同じアウトドアブームでも昔と今では質が違う?
現在のSUVと並行してムーブメントになっているのが、グランピング。またしてもアウトドアレジャーです。グランピングは、10年ほど前からイギリス発祥で流行しているライフスタイルで、世界の情勢不安や景気後退が原因で海外を旅しなくなった人たちが、家の近所で充実したアウトドアライフを楽しむのがきっかけといわれています。
しかし、四駆ブームの頃に流行したオートキャンプなどとは、ブームの質が違うという人もいます。SUV用パーツメーカー・JAOS(ジャオス)社長の赤星大二郎氏は次のように話します。
「かつてのアウトドアブームは、とりあえず人がやっているのだからやってみようという受動的な部分があり、不便さを我慢しながらやるという面もありました。
しかし、現在のグランピングに代表されるアウトドアスタイルは、自分らしく生きるために選ぶ能動的なライフスタイルのひとつ。そのため、豪華で快適、清潔です。これはかつての四駆と、現在のSUVの関係に非常に似ています」
また、昨今のSUVブームについても、次のように分析しています。
「10年ほど前からSUVという大きな流れがありますが、この2年ほどはSUVなら何でもいいというわけではなく、どちらかというとスズキ『ジムニー』やメルセデス・ベンツ『Gクラス』、ジープの各モデルといった本格派四駆の車種が好まれる傾向なのではないでしょうか。
これは、2006年のトヨタ「FJクルーザー」誕生がきっかけだと思います。北米西海岸のファッション感度の高いユーザーを中心にFJクルーザーが非常にウケて、キャラクターがファジーな乗用車系SUVよりもクロスカントリー系SUVの方が、自分の生活様式が反映しやすいライフスタイルカーだということになりました。これはまさに今の日本のSUV市場だと思います」
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赤星氏によれば、ランドクルーザープラドは一時的にはいかにSUV化するかを模索していましたが、昨今では逆に優れた悪路走破性を持つ『クロカン四駆』であることをアピールする戦略に変わったといい、そのイメージ変更とともに、販売実績が回復しているのは確かです。
こうしたオフロードテイストを前面に押し出すイメージ戦略は、CR-Vやトヨタ「RAV4」といったライトなSUVにも見られます。
RAV4の開発者は「優れたオフロード性能を100%活用するシーンは、先進国ではほとんどありません。でも、そういう性能も持っているという多様性が、これからのSUVを選択する理由になっていくと思います」と語っています。
かつての四駆は、オンロードでの進化を標榜し続けて、現在のSUVに昇華しました。ですが、そのSUVは再び悪路走破性というベクトルに戻り始めています。
もちろん乗用車ライクなSUVが今後無くなることはありませんが、より多様性のあるクルマへと変化していくことは間違いありません。同時に、SUVはブームという一過性のものではなく、セダンやワゴン、ミニバンといったカテゴリーと同線上に並んだことは、もはや否定しようがないのです。
【了】
Writer: 山崎友貴
自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。
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