相次ぐ高齢者ドライバー事故で自主返納者も増加 免許更新時の「高齢者講習」とはどんなもの?

70歳以上のドライバーが免許更新時に受講することが義務付けられている高齢者教習ですが、受講場所が混みあっており、免許更新がぎりぎりになってしまうドライバーもいるようです。

高齢者講習とはどんなもの?

 連日のように世間を賑わせる自動車事故ですが、近年は「高齢者ドライバー」による事故がとくに注目されています。

 高齢者ドライバーのしるしでもある「もみじマーク(高齢運転者標識)」は満年齢70歳以上のドライバーがクルマの前後に貼り付けすることが義務付けられていますが、警察庁や厚生労働省では満年齢65歳以上の事故を「高齢者による事故」として統計をおこなっているため、一般的には満年齢65歳以上が「高齢者ドライバー」であるといえます。

高齢者講習通知書

 人によって度合いはさまざまですが、人間である以上は加齢による各種能力の低下は避けられません。高齢者ドライバーによる運転では、クルマを運転するにあたって重要な、認知・判断・操作の動作ができない、もしくは遅れてしまうことによって、通常では事故に発展しないような場面でも事故に繋がってしまう確率が大幅に高まってしまうのです。

 認知・判断・操作ができない、または遅れてしまうことはとても危険なことですが、前述した通り人によってできる・できないの度合いはさまざまです。そのため、それらの症状を確かめ、ドライバーとして適正な能力があるかどうかを判断するための措置として、満年齢70歳以上になったドライバーには「高齢者講習等」を受講することが義務付けられています。しかし、その高齢者講習等が受講できないという事態が全国で発生しているようです。それはなぜなのでしょうか。

「高齢者講習等」は、免許証の更新期間満了日(誕生日の1ヶ月後の日)の年齢が70歳以上、もしくは運転免許証を失効させ、失効後の再取得手続により再び免許を取得する際の年齢が70歳以上のドライバーに対して受講が義務付けられています。受講可能な期間は法律で決まっており、免許の更新を希望する場合は、更新期間満了日(誕生日の1カ月後の日)の6ヶ月前から更新期間満了日までのあいだに、指定の自動車教習所などで受講することができます。

 高齢者講習の現状について、神奈川県内の自動車教習所に現状を聞いてみました。

「高齢者講習は、申し込み後1ヶ月後以内に受講できる場合もあれば、3ヶ月後以降にしか受講できない場合もあります。とくに年末から翌年3月末までは繁忙期のため、予約が非常に取りにくくなるのが現状です。

 さらに、自動車教習所が少ない地域では、なおのこと予約がとりにくい傾向があります。『高齢者講習のお知らせ』が届いて受講可能な期間になったら、なるべく早めに予約して講習を受講してください。『まだ期間があるから大丈夫』と思っていると、時期によっては受講予約を取ることができずに、そのまま免許失効してしまうケースが起こっています。」

※ ※ ※

 以上のような理由で高齢者ドライバーによる免許失効が相次いでいるとのことですが、免許証有効期限満了日(誕生日の1ヶ月後の日)の約190日前には「高齢者講習のお知らせ」のはがきが届くので、届いたらすぐに自動車教習所に講習の申し込みをすれば十分間に合うとのことでした。

 また、高齢者講習の代わりとなるものに「チャレンジ講習」というものがあります。チャレンジ講習とは、コースでクルマ等の運転をすることにより、加齢に伴って生じる身体機能の低下が自動車等の運転に著しい影響を及ぼしているかどうかについて確認を行う試験です。この試験に合格して「特定任意高齢者講習(簡易)」を受講すると、「高齢者講習」にかえることができます。ただし、失効手続きの場合にはこれを受けることはできません。

 さらに、満年齢75歳以上のドライバーの場合は、高齢者講習に加えて事前に30分間の「認知機能検査」を受講しないと免許証の更新はできません。認知機能検査とは、ドライバー自身の判断力、記憶力の状態を知るための簡易な検査です。この検査の結果「問題がない」場合は、高齢者2時間講習を予約のうえ、受講後に免許の更新手続きが可能となります。

 もしこの検査で「記憶力・判断力が少し低下しています」と判断された場合は、高齢者3時間講習を予約のうえ、受講後に更新手続きが可能となります。なお、「記憶力・判断力が低くなっています」と判断された場合は、「臨時適性検査(専門医の診断)」の受検、または医師による診断書の提出が必要となります。

 高齢者講習は予約制となっていますので、「高齢者講習のお知らせ」のハガキを受領後は希望する自動車教習所等にドライバー自身が直接電話予約をする必要があります。なお、高齢者講習を受講できる場所は「高齢者講習のお知らせ」のハガキに所在地や電話番号が記載してあります。

 免許を失効したくない人は早めの申し込みをすることが必須ですが、最近ではそのまま失効させる人や、「免許証の自主返納」をえらぶ高齢者ドライバーも増えてきています。高齢者ドライバーの年齢になったら、自分の身体能力をしっかりと見極めて運転に適しているかを判断することはもちろん、本当にクルマが必要なのかも考えてみると良いでしょう。

【了】

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