トヨタ「クラウン」と日産「スカイライン」 セダン不人気時代の明暗を分けた意識の違いとは

「スカイライン」には何が起こり、「クラウン」はどうなるのか

 1970年頃までは、若年層が憧れるスポーティカーといえばスカイラインでしたが、それ以降はトヨタ「セリカ」、ホンダ「プレリュード」、マツダ「RX-7」などが登場して、日産も「シルビア」が人気を高めます。こういった影響もあってスカイラインは売りにくくなりました。

 そこで1980年代のトヨタ「マークII/チェイサー/クレスタ」の高人気も影響して、スカイラインは豪華路線にシフトしましたが、スポーティなスカイラインファンからは反感を買ってしまいます。

 つまり1980年代以降、スカイラインのコンセプトとボディサイズが頻繁に変わったのは、何をやっても売れ行きが回復しない苦悩の現れ。世の中はバブル経済に浮かれ、クラウンも売れ行きを伸ばすなかで、スカイラインは早くも販売下降が始まり開発者は苦しんでいたのです。
 
 その結果、スポーツ路線はダメだと判断され、1993年の9代目(R33型)はボディを拡大。背景には1989年の税制改訂で3ナンバー車の不利が撤廃されたこともありました。しかし売れ行きは伸びず、1993年は6万3830台でしたが、モデル末期の1997年には1万9421台まで減るのです。

大型ボディとなったスカイライン(R33型)

 スカイラインは、ベーシックなセダンからスポーティな2000GTまで幅広いグレードが販売を支えていため、日本車の車種数が増えて細分化が進むと競争力が下がっていきました。

 一方、クラウンはスカイラインのようにグレードが多くありません。初期モデルにはピックアップトラックもありましたが、基本的には高級セダンに特化した車種として歩んできました。そのために時代の流れに翻弄されにくかったのです。

 対するクラウンは、セダンが売れない時代になっても国内向けの開発を行い、トヨタ店が力を入れて販売を行ってきました。企画・開発・販売のすべてが日本向けに足並みをそろえたから、一定の販売を維持できていました。

 気になるのはトヨタの今後の展開です。日産がかつて行った全店併売への移行を、2025年をメドに行うと発表。現時点でも、姉妹車やマークXの廃止など車種数を減らすことがアナウンスされています。

 全店併売で、今までのような「トヨタ店のクラウン」を守れるかは分かりません。店舗の削減は必至のため、トヨタ店が廃止され、近隣のカローラ店やネッツ店がクラウンの販売を肩代わりする場面も予想されるのです。

 クラウンがスカイラインと同じ結末を迎えることも考えられ、過去を振り返ると、日産やホンダは、系列化を撤廃したことで、売れ行きを下げたり低価格車に偏る売れ方になったこともあります。

 日本を代表する「クラウン」を守るためにも、トヨタには販売会社の意見を聞きながら慎重に戦略を立てて欲しいものです。

【了】

現代に蘇るセダン対決! トヨタ「クラウン」と日産「スカイライン」の画像を見る(17枚)

意外と多い救急車のヒヤリハット! その原因とは?

画像ギャラリー

Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

1 2

【NEW】自動車カタログでスペック情報を見る!

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす

最新記事

コメント

本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。

8件のコメント

  1. 分析が自分勝手。
    確かにスカイラインは途中から迷走し、クラウンは王道を歩んだ。でも、理由はそれだけではないし、そもそもスカイラインの対比で言えばマークⅡをあげるのが順当だろう。
    そのマークⅡは迷走していないのにもかかわらず、販売中止になった。クラウンだけ、販売店の声を聞いて、マークⅡは聞かなかったとも思えない。
    感想を述べるのは勝手であるが、記事としてはどうだろうか

    • スカイラインの立ち位置はもっと特殊でしたよね。
      マークII兄弟にはローレルありながらスカイラインもライバルになり得ましたし、場合によってはスープラやフェアレディZもライバルだったと思う。
      ライバル、ベンチマークをトヨタでは無くドイツのセダンに置くべきだし、国内でもトヨタでは無くレクサスに置くべき。
      もっともGTRが独立したブランドになり、北米向けのインフィニティがスカイラインになった段階で既に車種とすると死んでいるのかなと思ったりもしました。ブランド名だけが残っている。

  2. クラウンと比べるべきはセドリック、グロリア。現行ではフーガなんじゃないの?ちょっと違和感ある記事になってますよ。

    • カッコ悪いし高い…それだけでしょ。

  3. 人気ブランドの「スカイライン」をハイソにすればマーク2シリーズに対抗できるとおもって「7th」を作って失敗したのと同じ轍を伝統ブランドの「スカイライン」でフーガを作って踏んでしまったという感じ。

    ディメンジョンはBMW-3erと同じなんだからスタイリングだけでもGTRをモチーフにするくらいの「バカ」をしていいとおもうのだがね。

  4. 比較対象の車種構成になっていないのでは?

  5. クラウンのライバルだったのはセドリックとグロリアだろ。
    マークII兄弟にはローレルがあったし、もっと独自の立ち位置の車だったんじゃ無いかなと思う。
    歴史的なライバルは自社のフェアレディだったと思う。

  6. この人、分析下手だけどほんとに編集長だったの?
    日本のカーメディアのレベルの低さがよくわかる記事だね。

メーカーからクルマをさがす

国産自動車メーカー

輸入自動車メーカー