ボルボの名車を蘇らせる”クラシックガレージ”とは? 懐かしの「P1800 ES」や「940」でタイムスリップ
”四角いボルボ”の代表格「940 エステート ポラール SX」(1996年式)
クラシックガレージでは、「P1800」や「アマゾン」、「240ワゴン」に「940」など、歴史的な名車を数多く手掛けていますが、今回の試乗会では、彼らが手掛けて販売する中古のクラシックボルボのハンドルを握る貴重な機会をいただくことができました。
最初に試乗したのは、1996年式の「940 エステート ポラール SX」。まさに、四角いボルボの時代を象徴するステーションワゴンですが、全長4850mm、全幅は1755mmと当時は大きめに映ったボディも、現代のVW「ゴルフ」よりも全幅が狭く、Uターンの際に小回り性に影響を及ぼす最小回転半径は5mと、コンパクトカー並みです。
女性ワンオーナーで11万km走ってきた個体ですが、5万kmのクルマのトランスミッションを載せ換えて、足回りをリフレッシュしたそうです。1996年式のモデルでありながら、すでに衝突時に乗員を保護するエアバッグが標準装備されていたという志の高さも、「安全のボルボ」と言われてきた所以です。
車内に乗り込むと、この世代のクルマの匂いが漂ってきて、懐かしい記憶が一瞬で蘇り、どこかホッとさせられる気持ちになります。
ファブリックシートは保存状態が良く、身体に優しくフィットします。ダッシュボードや各部の樹脂パーツは現代のクオリティから比べると素っ気ないものですが、ちょっと無骨な形で構成されているあたりもひとつの「味」といえそうです。
動き出してみると、一連の動きはスムーズなもので、縦揺れは「ふんわり」といった具合に滑らかな足取りで走行。ボルボならではの優しいタッチの乗り味に癒されます。それでいて、安定性はしっかりと確保されています。4気筒2.3リッターのターボエンジンは130馬力を発生するもので、アクセルを踏み込むとスーッと力を発揮していきます。
エンジン回転を高めながら、ジワジワと力を漲らせるパワーフィール。ターボだからといって、ドカンと力を出すような荒っぽさはなく、野太くも上品な加速フィールは乗員の身体を揺さぶらず、ストレスフリーの走りを提供してくれます。
まさに、ボルボらしく、大人の包容力と懐の深さを実感させる乗り味が見事に再現された一台といえるでしょう。
ガラスハッチの元祖「P1800 ES」(1973年式)
2台目は、1973年式の「P1800 ES」。現代のボルボのエステート(ワゴンモデル)に通じるロングノーズ、低いルーフのシルエットで描かれたスポーティな2ドアタイプのワゴンですが、ガラスハッチの元祖ともいえるモデルです。
エンジンは水冷4気筒の2リッター OHVで、2ペダルで操作できるATと組み合わせています。
華奢なハンドルに、ウィンカーやシフトは細いスティック状のレバーが採用されています。ハンドルを切り込むときは、腕力が要求されるいわゆる「重ステ」で、プルプルする二の腕に力を込めて操作します。
メーター周りはアナログ表示になっているなど、ビンテージカーの雰囲気が満点。当時からダッシュボードの素材はクッション性を与えていたようですが、ステアリングも衝撃を吸収する構造を採用しています。
フロントウィンドウは合わせガラスで、衝突の際に飛散しないように配慮されていたりと、安全で丈夫なクルマに仕立てられてことが分かります。
走行時に聞こえてくるパタパタというメカニカルな音や、空気を吸って力を得て呼吸する感じは、まるでクルマが生き物であるかのように思えてくるあたりが新鮮でたまりません。
現代のクルマと比べれば、決して速くはありませんが、アクセルペダルを踏みながら、クルマの重たさを感じ、地面を踏みしめて車体を前に進めていきます。それでいて、ブレーキは不安を感じさせることなく、素直にコントロールすることができます。発売から46年目を迎える今、当時のフィーリングに近い形で体感できることは、まさにタイムスリップした感覚です。
ボルボの歴史に名を残す名車を当時に近いフィーリングで体感することができるなんて、とても贅沢でステキなことです。ボルボ車を大切にしているオーナーさんの愛情とクラシックガレージのサポートによって、ボルボの名車を後世まで大切に受け継いでいって欲しいものですね。
【了】