3ナンバー化したVW「ポロ」 スポーティさ満点の追加モデル「Rライン」の実力はいかに?

「ポロTSI・Rライン」の実力はいかに?

 自然吸気のノーマルエンジンに当てはめると2.5リッターに匹敵する、エンジンの概要が分かったところで、「ポロTSI・Rライン」に試乗しました。

 まずはエンジン性能ですが、1300回転付近から過給効果が立ち上がります。1200回転以下では駆動力が低下しますが、この回転域は使用頻度も低いから使いにくさは感じません。1400回転でも十分な粘りがあり、ここから3500回転付近までの常用域が扱いやすいです。

フォルクスワーゲン「ポロTSI・Rライン」のエンジン

 4500回転を超えた領域では吹き上がりが活発になり、Dレンジでフルにアクセルペダルを踏み込むと、6000回転を少し超えたところでシフトアップ。高回転域の吹き上がりは、「ゴルフTSIハイライン」の1.4リッターターボの方が機敏な印象もありますが、1.5リッターターボも十分にスポーティです。

 エンジンノイズはとくにに小さくないですが、動力性能に余裕がある4気筒のため、直列3気筒1リッターターボに比べると大幅に静かで、アクセルペダルを深く踏む機会も減り、洗練された印象を受けます。

 「ポロTSI・Rライン」は、スポーティなグレードに位置付けられ、サイドスカートやリヤスポイラーなど「TSI・Rライン」専用のエアロパーツを標準装着。タイヤサイズは「ポロGTI」と同じ17インチ(215/45R17)で、タイヤの銘柄は「コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5」です。

 乗り心地にバタバタした粗さはありませんが、市街地を時速50km以下で走ると硬く感じます。細かなデコボコを含めて、路面の状態を乗員に伝えやすく、17インチタイヤの装着も影響しました。

 「ポロTSI・Rライン」には、スポーツセレクト・シャシー付きスポーツパフォーマンスキットが標準装着され、ショックアブソーバーの減衰力をスポーツとノーマルに切り換えられます。

 ノーマルモードでも硬い印象で、スポーツになると突き上げ感がさらに強まった。ただし試乗車は、走行距離が短いので、現時点では足まわりの動きが渋い可能性もあります。

 走行安定性は高いうえ、プラットフォームの設計が新しく、先代ポロに比べると操舵に対する鈍さを抑えた感じ。小さな舵角から正確に反応するため、運転感覚が緻密で上質に感じられ、ドライバーの操作に忠実だから楽しいです。

 硬めの足まわりと17インチタイヤの相乗効果で、カーブを曲がる時のグリップ性能も高い。峠道などをスポーティに走っても、旋回軌跡を拡大させにくく、下り坂のカーブでは後輪が確実に接地して不安を感じさせず、余裕のある動力性能と相まって、スポーティな走りを満喫できます。

 VW「ポロ」には、従来から「TSIコンフォートライン」や「TSIハイライン」が搭載する直列3気筒1リッターターボ(最高出力は95馬力・最大トルクは17.9kg-m)と、GTIの直列4気筒2リッターターボ(200馬力・32.6kg-m)が用意されていました。先ごろ追加された「TSI・Rライン」は150馬力・25.5kg-mなので、両エンジンの中間に位置します。

 価格にも同様のことが当てはまり、「TSIハイライン」は267万9000円、「GTI」は348万円で、「TSI・Rライン」は中間の298万円。「TSI・Rライン」は「TSIハイライン」に比べて30万1000円高いです。

 しかし、先に述べた「TSI・Rライン」専用エアロパーツや足回りのほかに、空転したホイールにブレーキを作動させて駆動力の伝達を保つ電子制御式デファレンシャルロック(XDS)が装着されます。

 これら装備の総額は少なくとも20万円に達するから、残りの約10万円でエンジンが高性能化する計算が成り立ちます。つまり「TSI・Rライン」は意外に買い得なグレードなのです。

 また、ゴルフに直列4気筒1.2リッターターボを搭載して安全装備を充実させた「TSIコンフォートラインテックエディション」が、ほぼ同額の302万9000円で用意されます。

「ポロTSI・Rライン」に比べて動力性能とスポーティ感覚は低下しますが、窮屈な後席がゴルフでは快適になり、乗り心地も向上。ボディサイズが許すなら、この2車種を比べて検討するのも良く、こういった多角的な選び方や買い方ができることもVWの特徴だといえます。
 
【了】

スポーティさ満点の「Rライン」が追加されたVW「ポロ」の画像を見る(31枚)

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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