昔は乗用車も…若者は知らない? トラックメーカー「いすゞ」の名車5選
類まれなデザインが話題になった「ピアッツァ」
●ジェミニZZ/R
1971年にGM(ゼネラルモーターズ)と提携したいすゞは、GMの「グローバルカー構想」に基づいて、オペル「カデット」をベースに「ベレット」の後継車に当たる初代「ジェミニ」を開発し、1974年に販売を開始しました。
オペル「カデット」とそっくりな特徴的なフロントノーズ周りのデザインは好き嫌いが分かれ「逆スラントノーズ」とも呼ばれました。
1979年に「ジェミニ」オリジナルのスラントノーズへデザイン変更され、「ZZ」(ダブルズィー)シリーズを追加。「117クーペ」と同じ1.8リッターDOHCエンジンを搭載することで、スポーツドライブ好きへの対応や商品価値を向上させ、のちに装備を豪華にしたグレードも追加されます。
1981年にラリーで勝つため強化されたサスペンションやLSDを装備した「ZZ/R」を発売し、「ベレットGTR」の再来とマニアたちは歓迎。
その後も「ジェミニ」シリーズ全体でマイナーチェンジを繰り返し、1985年に「ZZ」が最後のマイナーチェンジを行いました。
G180エンジンの特性をチューニングしたものが搭載され、それまでのタペットカバーが青だったのに対し黒色に塗られていたことから、最終型のZZは「ブラックヘッド」と呼ばれ、同年に2代目「FFジェミニ」が登場したあとも、1987年まで並行販売され続けます。
●ピアッツァ ハンドリングバイロータス
「117クーペ」に代わるフラッグシップ・クーペを欲していたいすゞは、イタリアのデザイン会社である「イタルデザイン」(ジョルジェット・ジウジアーロが設立)にデザインを依頼し、1979年のジュネーヴショーで世界中の自動車関係者に衝撃を与えます。
その3ドアハッチバック・クーペは丸みを帯びたフォルムと、直線的なシャープさを兼ね備えていて「本当に市販するつもりはあるのか?」と疑われたほどです。その展示モデルに近似する状態で初代「ピアッツァ」は誕生しました。
美しいボディラインを断ち切ってしまうかのように見えた大きめのフェンダーミラーやベージュのボディカラーなど、先進的なルックスは賛否両論がありました。インテリアも特徴的で、メーターナセルの左右に配置されたサテライトスイッチなどは、その後の国産車にも大きな影響を与えます。
初期モデルの135馬力を発揮するエンジンは、ジェミニZZシリーズの1.8リッターDOHCエンジンのボアを拡大して2リッター化したものを「XG」に搭載。1984年には180馬力を発揮する2リッター電子制御式ターボ付SOHCエンジンが「XE」と「XS」に搭載され、その当時の2リッターエンジン車では最も高い出力を誇りました。
1985年には、オペルのチューニングで有名なドイツの「イルムシャー」が「XS」のサスペンションをチューニングした「ピアッツァ イルムシャー」が登場し話題となります。
そして1988年、「ハンドリングバイロータス」 (handling by LOTUS) が追加されます。スポーツカー製造やF1で名を馳せた英・ロータスとの技術提携で生まれた「ハンドリングバイロータス」は、モモ製ステアリングと専用バケットシート、アームストロング製のド・カルボン型ショックアブソーバーやBBS製アルミホイールが組み込まれただけでなく、リヤサスペンションが3リンクから5リンクに変更されるなどの「ロータス・チューン」を受けたクルマでした。
ひとめ目で普通の「ピアッツァ」とは違うと判る、英国車を思わせる深い緑色のボディカラーが人気になります。
1990年には、LSDを標準装備とした「ハンドリングバイロータスリミテッド」が追加され、1991年には2代目「ピアッツァ」が登場すると、10年間に渡る初代の歴史は幕を閉じました。