ライバルなのに他社のクルマを売るのはなぜ? OEM車が増えた背景とは
メーカーが違うのに、見た目はまったく同じクルマを見かけたことはありませんか。それは「OEM」という生産体制によるものですが、近年増加傾向にあるようです。なぜ増加しているのか、その理由をメーカーに聞いてみました。
メーカーが違うのにカタチが同じクルマがあるのはなぜ?
街で同じ形のクルマなのにブランドロゴと車名ロゴだけが違うクルマを見かけることがありませんか。これはOEM(Original Equipment Manufacturer)車と呼ばれ、提供を受けるブランドは製造を請け負うOEMメーカーからクルマを仕入れて、販売元として自社のブランド名や商品名、型式などで販売しています。
かつては海外メーカーと提携して供給する(される)ケースが多かったのですが、いまは国内メーカー同士のOEMが増えているようです。
同じ形の商用車がさまざまなブランドのマークを付けて走っていたり、グリルのデザインのみ異なったり、以前は軽自動車と無縁だった日産やトヨタのマークを付けている軽自動車もよく見かけるようになりました。
では何故OEMが増えているのか、多くのメーカーにOEM車を提供しているスズキの広報にうかがってみました。
──現在、OEMとして供給している車種を教えてください
「ラパン」を除く「アルト」は「キャロル」、「ワゴンR」は同じく「フレア」、「ハスラー」は「フレアクロスオーバー」、「スペーシア」は「フレアワゴン」としてマツダブランドで販売されています。
エブリイワゴンはマツダ「スクラムワゴン」、日産「NV100クリッパーリオ」、三菱「タウンボックス」、エブリイ(商用車)はマツダ「スクラムバン」、日産「NV100クリッパー」、三菱「ミニキャブ バン」、キャリイはマツダ「スクラムトラック」、日産「NT100クリッパー」、三菱「ミニキャブ トラック」となり、「ソリオ」は三菱「デリカD:2」として販売されています。
──では、OEM車として提供を受けている車種を教えてください
日産「セレナ」の供給を受けて、スズキ「ランディ」として販売しています。
──OEMによるメリットは、どこにあるのでしょうか?
提供する側としては、生産台数が増えることによる製造コストの削減や生産性の向上といったメリットがあります。逆に提供を受ける側としては開発コスト削減や、自社にないラインナップを加えることにより、幅広いお客さまのニーズにお応えすることが可能になり、新たな顧客の拡大が期待できます。
──自社販売車種と他社に供給している車種とで、販売時に競合となってしまうことはないのでしょうか?
販売時に競合となるケースもあるかと思いますが、それよりもコスト削減などのメリットの方が大きいと考えております。
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スズキの広報に「これからもOEMは増えるのでしょうか?」と聞いてみましたが、「商品計画に関する質問にはお答えできかねます。」とのことでした。
今回はスズキのみに取材を行ないましたが、ほかにもトヨタ「プロボックス」やいすゞ「エルフ」なども他社への供給を行なっています。とくに小型トラックでは他社にOEM供給している割合はきわめて高くなっています。
珍しいケースではマツダ「ファミリアバン」は2018年まで日産「NV150AD」でしたが、フルモデルチェンジという名目でトヨタ「プロボックス」に変更されています。単にトヨタとマツダで業務資本提携契約があったためですが、まれな事例です。
「メーカーの個性がなくなる」といった指摘があるOEMですが、メーカーにとってはお互いメリットの大きい生産体制のようなので、今後の動向を見守っていきましょう。
【了】