若者は「セダンがキモイ」 クルマの基本形が変わった日本 続々登場する新型国産セダンで潮流変わる?
ミニバンやSUVに押されるなかでの「セダンのメリット」とは
過去を振り返ると、1920年代までのクルマは、乗用車でも箱型のミニバンスタイルでした。車種によってはボディの後部に折り畳み式の荷台を装着して、大きなトランクを運べるように工夫していました。
1930年代に入ると、流線形のトレンドに沿ってトランクがボディに一体化され、いまのセダンスタイルが生まれます。商用車にはミニバンスタイルのバンが残り、1940年代にはセダンをベースに荷室を広げたステーションワゴンも登場しますが、乗用車の主力は実用性よりもデザインを重視するセダンでした。
このセダンの時代が60年ほど続き、1990年代には、再びミニバンスタイルが注目されるようになります。ボディ後部に背の低いトランクスペースを加えたセダンより、ボディの後端まで天井を長く伸ばしたミニバンスタイルの方が、空間効率が優れているからです。
2000年代に日本でも販売されたクライスラー「PTクルーザー」は、外観がクラシックなデザインです。後ろ姿も昔の乗用車をイメージさせますが、ルーフを後方まで長く伸ばしたことで車内は広く、実用性も優れています。
つまり、クライスラー「PTクルーザー」を見ると、昔の乗用車が、今でいうミニバンだったことが分かります。その後、乗用車にはデザイン面の付加価値が求められてセダンの時代が訪れ、その後再び実用重視のニーズが高まってミニバンが復権したのです。合理的なミニバンが復権した以上、今後セダンが大量に売れることはありません。
ただしセダンのメリットは健在です。セダンはミニバンやSUVに比べると天井が低く、後席とトランクスペースの間には隔壁があります。そのためにセダンは低重心で、ボディ剛性を高めやすいです。
そうなるとセダンはミニバンやSUVに比べて、走行安定性を向上させやすくなります。危険を避ける能力も優れています。そして走りの基本性能が高ければ、足まわりの設定を乗り心地に振り分けることも可能です。
このようにセダンは、ミニバンやSUVに比べて車内は狭いですが、『安全と快適』を追究できます。従ってセダンには、スバル「WRX」のような走りの優れたスポーツモデル、トヨタ「センチュリー」のように乗り心地が際立って快適なクルマも用意されています。
以上のようなセダンの価値を、ていねいに分かりやすくアピールすれば、ユーザーが感じる印象が変わるかも知れません。逆に旧態依然とした訴求を続けていたら、レクサス「ES」の発売やインサイトを復活させても、セダンに対する世間の印象は今までと同じです。