電動、HV、ガソリンエンジンのPCX3兄弟を一気乗り! ホンダの熱き挑戦魂感じ、夢が膨らむ

走りはハイブリッドに軍配!

 3車のなかで、もっともキビキビ走るのはハイブリッドでした。停止状態からの加速は充分に力強いPCXですが、ハイブリッドでは電動モーターのアシストによってさらにダッシュがスムーズで、スロットルレスポンスもより機敏。アシストは3秒間継続して最大トルクを発揮し、その後1秒をかけて除減させていきエンジンとの繋がりを滑らかにしています。

 スロットルを戻せば再びアシストしてくれ、アシストレベルはメーターディスプレイのバーグラフで目視しながら走行可能です。

PCXハイブリッドと筆者(青木タカオ)

 エンジンに対するモーターのアシストレベルは切り換え可能で、通常の「Dモード」に加え、アシスト力を強めスポーティに走れる「Sモード」を設定。ガソリンエンジン車と比較すると、トルクは4000rpmで約33%、5000rpmで約22%の向上を実現しています。

 常用域でのトルク上乗せは際立ち、走りに力強さと軽快感をプラス。0→50mの発進加速では4メートルも先を行き、さらに40km/hからの中間加速では200メートル先で7メートルも前に出られるとのことです。ドカーンとパワーが上乗せされるのではなく、滑らかに速度がグイグイ伸び、扱いやすいリニアな出力特性となっています。

 また、アイドリングストップが進化し、停車からエンジン停止までの時間を3秒から0.5秒に短縮。静粛性向上を果たしつつ、エンジン再始動もクイックなクラッチミートによってスピーディかつスムーズになりました。ストップ&ゴーを繰り返す都市部では、立ち上がりでもたつきの一切ないアイドリングストップが、とくに秀逸に感じたことを付け加えておきたいです。

 ハイブリッドシステムは、モーターの追加なしで構築されました。エンジン始動と発電を担っていたACGスターターが駆動をアシストし、追加したのはシート下に配備した48Vリチウムイオンバッテリーと、システム全体を制御し司る「PDU(パワードライブユニット)」だけ。重量増をわずか5kgに抑えたのでした。

ハイブリッドシステム搭載でも車体重量5kg増としたPCX

 大幅な重量増なしに、ただでさえ強力な125ccエンジンを最高出力1.9PS/3000rpm、最大トルク4.3Nm/3000rpmの電動モーターで後押しするのですから、走りが強力なのはいうまでもありません。

 車体価格(税抜き)はPCXが31万7000円なのに対し、ABSも追加搭載して40万円ですから決して高くないと思います。

都会でビジネスに使うならオススメできる

 乗っていて、ついつい自慢げになってしまうのが、PCXエレクトリックです。音もせず走行していることは、窓を閉め切ったクルマからもわかり、電動バイクであることは周囲にもすぐ気付かれました。

 珍しいだけでなく、走りも俊敏でスマートですから、街では注目を集めます。横断歩道で停まっていると海外からの観光客にカメラを向けられ、歩行者も優しい視線を送ってくれるのです。

PCX エレクトロニックと試乗中の筆者(青木タカオ)

 企業や個人事業主に向けてのリース販売ですが、仕事に使っているところを、もし取引先やお客様が見たら、きっと好感を抱いてくれるでしょう。ゼロエミッションの乗り物は、自分だけでなく人からも親しまれるのが魅力と言えます。

 また、これまでのEVスクーターは、国産メーカーでは原付1種クラスにしかなく、幹線道路に出るには躊躇いますし、走行しても車線の一番左をゆっくりと遠慮がちに走るしかありませんでした。

 しかしPCXエレクトリックは原付2種登録で、煩わしい2段階右折はありませんし、制限速度もクルマと同じ。最大18Nmの最大トルクをわずか500rpm、つまり発進の立ち上がり時に発揮するので信号待ちからの加速も力強く、都会の混雑した道路ならクルマの流れに乗れ、場合によってはリードすることもできてしまいます。ただし最高速度は60km/h強に設定され、流れの速い郊外の幹線道路を走るには不向きでしょう。

PCX エレクトロニック

 都会でビジネス用途に使うならストレスは感じないはずです。気がかりなのは航続距離で、フル充電での走行距離は60km/h定地走行なら41km、実際の走行に近いWMTCモードでは50km以上(EVの場合、定地走行の方が短い)とのこと。これは導入予定国で1日当たりの実走行距離をリサーチし、8割以上のユーザーの使用条件を満たすことが調査済みだと開発チームに教えてもらいました。日本の都市でも仕事の用事は、短距離で済むのかもしれません。

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