日本の救急車「誰でも無料」世界でも異例 悪質利用年々増加「タクシー代わり」約半数 年間50回以上の利用者も

日本は要請があれば、誰でも、どんな症状でも救急搬送してくれる

 日本の救急車に話は戻ります。日本では国籍や保険の加入、事前の登録などに関わらず、要請があれば救急車は出動しますし、誰が利用しても距離に関わらず「完全無料」です。完全無料にもかかわらず、質の高い搬送、救急車内での高水準の処置が行われる国は世界に例がないと言っても過言ではないでしょう。

日本の救急車

 なお、日本でも10年位前から救急搬送におけるトリアージ(患者の重症度に基づいて治療の優先度を決めて選別すること)が行われるようになりました。要請があれば、いったん救急車は出動しますが現場について患者の症状を確認し、呼吸が安定していて自力で歩行できるなど軽症の場合は救急搬送を拒否し、自力で病院に向かうことを勧めています。

 とはいえ、救急車で搬送せず自力で病院に行くことに対して、患者の同意を得られなければ救急搬送を一部の極端な例を除いては、断ることができないのが現状です。これが諸外国と大きく異なるところです。

 海外では救急車が無料/有料にかかわらず救急車の要請があった場合、救急搬送をするかしないかは患者の意思にかかわらず医師や救急救命士が判断し、患者はそれに従わなくてはなりません。

 このような状況ですから、症状に関わらず(実際にはほぼ無条件)で無料利用できることから、救急車をタクシー代わりに使う非常識で迷惑な利用者が年々増えているといいます。

「大した症状ではないのに救急車を要請する人はたいへん多いです。私たちは要請があれば原則として出動しなくてはなりません。ひどいケースでは救急車で病院に搬送したあと、『帰りも送ってくれるんでしょ?』『連れてきてくれたんだから帰りも送ってよ!』など言われることもあります。救急車はタクシーではないので、もちろん事情を説明してお断りします」(首都圏の消防署に勤務する救急救命士)。

 なお、傷病程度別の搬送人員数を見てみると、近年は救急搬送の必要がない「軽症」がなんと約50%、救急車を「タクシー代わりに使う」悪質なケースが約半数ということになります。

 総務省消防庁の調べによると、2014年の1年間に10回以上救急車を要請した人の実績は全国で2,796人おり、それらの「頻回利用者」が年間52,799回もの出動要請をしている実態があります。なかには年間50回以上も救急車を呼んでいる人も250名ほどいるそうで、このような悪質な頻回利用者に対しては各消防署が家族の協力を得るなどして事前に説明、または名簿に載せるなどして搬送を見送る例も増えてきているとのことです。

【了】

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Writer: 加藤久美子

山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。

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