見た目を裏切るパワフルモデル! 羊の皮を被った狼なクルマ5選
現代版「羊の皮を被った狼」にふさわしいモデル
●ダイハツ「ブーン X4」2006年
ダイハツ「ブーン」はトヨタ「パッソ」と姉妹車のベーシックなコンパクトカーです。通常モデルは1リッターと1.3リッターの自然吸気エンジンを搭載していますが、この「ブーン X4(クロスフォー)」は「KJ-VET型」1リッターDOHC4気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力は133PSと高性能なもので、ドライブトレーンもフルタイム4WDとなっていました。
「ブーン X4」はラリーやダートトライアルなど、モータースポーツに出場するためのベース車で、エアコンなどの快適装備を省いたグレードと、装備を充実して街乗りにも使える「ハイグレードパック」を設定。
実際に街なかで使い勝手のよいコンパクトカーなので、普段遣いできる高性能車として、いまも中古車市場では高めの相場を維持しています。
ちなみに「ブーン」の先代は「ストーリア」でしたが、「ストーリア」にも「X4」がありました。こちらは軽自動車用4気筒エンジンをベースにした713ccターボで、最高出力は120PSもあり、リッターあたりの馬力は168PSと、コンパクトカーとは思えないほどパワフルなエンジンを搭載していました。
●スバル「レガシィ 2.0GT DIT」2012年
元々スバル「レガシィ」はスポーティなミドルクラス4WDセダン/ワゴンとしての地位を確立していました。初代ではWRC(世界ラリー選手権)に参戦し、歴代「レガシィ」は常にパワフルなエンジンを搭載していました。
現在「レガシィ」の地位は「WRX」や「レヴォーグ」が引き継ぎ、現行モデルは水平対向4気筒2.5リッターエンジンに1本化され、おとなしいイメージのクルマとなっています。
しかし、ひとつ前のモデルでは「BRZ」の水平対向4気筒の「FA20型」にターボを加えたエンジンを搭載する「レガシィ 2.0GT DIT」(Direct Injection TURBO=直噴ターボ)がラインナップされました。
最高出力は300PSに達し、トランスミッションはCVTのみでしたがスポーツモードも用意され、足回りも専用にチューニングされるなど、スポーティなセダン/ワゴンとなっていました。
外観は小ぶりなエアインテークをボンネットに備えるくらいで、ベースモデルはとくに派手なエアロパーツもなく、それでいて300PSのエンジンという、現代版「羊の皮を被った狼」にふさわしい1台となっています。
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「羊の皮を被った狼」“的”なクルマ5選はいかがでしたか。なぜ “的”を付けたかというと、本当の意味で「羊」ではないと思ったからです。例えば「ブーン X4」の外観は、大きなエアインテークを備えており、「羊」ではありません。
本物の「羊の皮を被った狼」ならば「ストーリア X4」の方がふさわしく、初代「ミニ クーパーS」や、ちょっとマニアックですがロータリーエンジンを搭載したセダンのマツダ「ファミリアプレスト」や、フェラーリのV8エンジンを搭載したランチア「テーマ 8.32」などが挙げられます。
今回紹介した5車種のようなモデルは、新車ではほとんどなくなってしまいました。強力なエンジンを搭載するモデルは、それにともなってスポーティな外観を持つようになり、三菱の5バルブエンジンも軽自動車には意味がありません。また「ブーン X4」のようなモデルも出ておらず、1リッタークラスのコンパクトカーはおとなしいモデルばかりです。
メーカーとしては車種とグレードを整理して、合理的な販売を行なうということが正しい判断なのかもしれませんが、ちょっと無謀にも思えるようなユニークなモデルが出てこないのも寂しい限りです。
【了】