ヤマハ「SR」生誕40周年 “最小限”の改良のみを重ねることで守り抜かれた柔軟性と懐の深さ

1978年に初代モデルが登場し、その姿をほとんど変えることなく進化してきたヤマハ「SR」は、同メーカーの中でもっとも息の長いシングルエンジン・モデルです。

1978年の登場からほとんど姿を変えていない「リアルクラシック」モデル

 ヤマハのシングルスポーツ「SR」が発売40周年を迎えました。今回は1978年に登場した初期型以来、ほとんど姿を変えることなく今に至る超ロングセラーモデルの歴史を振り返っていきましょう。

一年ぶりの復活となったヤマハ「SR」(写真:SR400 40th Anniversary Edition)

 2018年現在、バイク業界は国内外問わずネオクラシックと呼ばれるカテゴリがブームになっています。初代モデルを知らない若い世代にはヤマハ「SR」もその1台に見えるかもしれませんが、空冷単気筒SOHC2バルブのエンジン形式も、それをキックで掛ける始動方法もティアドロップ型の燃料タンクも2本のリヤショックもほぼ当時のまま。

 時代に合わせて形状や構造こそ微妙に進化してきましたが、ネオクラシックというよりリアルクラシックと表現すべきモデルなのです。

 さらに言えば、ネオクラシックは当時のハイスペックマシンや歴史的なヒットを記録した名車をモチーフにし、現代に蘇らせたケースがほとんどです。その点、SR400は1978年の発売当時からすでにやや枯れた雰囲気を漂わせていました。

カワサキ900 Super4(1972年)

 というのも、70年代はとっくに大排気量&多気筒の時代に突入していたため、ホンダCB750Four(1969年)やカワサキ900 Super4(1972年)に引っ張られるようにして、スペック競争が激化。

 パワーはあればあるほど、スピードは出れば出るほどシェアに直結した時代の中、あえて控えめなスペックとスタイルで世に送り出されたのが「SR」というバイクです。

 その変化球が逆にウケてベストセラーとして君臨、ということもなく、空前のバイクブームが巻き起ころうとする中、SRは浮くこともなければ沈むこともなく、淡々とラインナップの中に存在し続けてきました。

 絶対数は多くなくとも、そのシンプルな機構と飽きのこないデザインを支持するファンが必ずいて、ヤマハも右往左往することなく、「SR」を守り続けてきたというわけです。

 SRは最初からスペック競争のステージに立っていなかったため、そこで負けることもありませんでした。負ければメーカーはテコ入れせざるを得ず、それが過剰なモデルチェンジや不必要なドレスアップにつながるのですが、ヤマハ「SR」はどうしても必要な時に最小限の改良だけを施してきました。

2000年まで生産されたSR500

 それでもなお「もっとこうだったら」というポイントがあれば、ヤマハはユーザーの工夫にゆだねることにしましたが、ある意味でカスタムやチューニングでいかようにも変われる素材の柔軟さが、「SR」が長年に渡って支持されてきた理由のひとつでしょう。

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