ガソリンは給油だけで大気汚染? 環境に優しくムダも減らせる最新給油機とは

ガソリンスタンドでの給油時には、ガソリンベーパーと呼ばれる有害物質が発生し、環境問題の原因となっています。それを防ぐベーパー回収装置と、今後の展望を環境省に聞きました。

給油時のあの臭いの原因はガソリンベーパー、人体や環境に悪影響がある

 ガソリンスタンドでの給油時や近くを通ったときに、独特の臭いが気になる人も多いと思います。あの臭いは給油作業などの際に揮発したガソリンが、大気中に蒸散されることで発生します。気化したガソリンは「ガソリンベーパー(蒸気:以下ベーパー)」と呼ばれ、人体に有害性がある「揮発性有機化合物(以下VOC)」です。とくにヨーロッパでは環境問題として広く認識されていました。

給油時に揮発する燃料は環境に悪いだけでなく火災の原因になる

 日本でも2006年から「改正大気汚染法」によってVOC排出規制を実施しています。国内で排出されるVOCの約10%がガソリンスタンドで発生しているともいわれています。

 ベーパーは独特の臭いと人体への有害性だけでなく、他の化学物質と結合して光化学スモッグを引き起こす原因になることや、引火して火災を引き起こす可能性もあるなど、問題視されています。火災については、乾燥する冬場に静電気で発火する事故が実際に起きています。

 最近普及している「キャップレス給油口」はベーパーを減らすために有効な手段です。しかし、一般的な燃料キャップ式が、まだまだ国内では多くを占めていますので、今すぐに国内のクルマすべてをキャップレス給油口に換えることは、まず不可能です。

 現状できる対策として、クルマにガソリンを注入する給油計量機に、気化したベーパーを回収する装置を搭載したものが開発されました。

 ヨーロッパではベーパーは環境問題として早くから認識されていたので、ベーパー回収装置は以前から使われていました。ただし、気体のままベーパーを回収(吸引)するため、回収率が低いだけでなく、回収した気体を移動させる際に大気中に漏れてしまうなど、環境保護への貢献度はそれほど高くはありませんでした。

 そこで、給油時に大気中に蒸散したベーパーを、計量機が回収し液化して再生する装置が新たに開発されました。高効率でベーパーを回収して再生が可能になれば、公害や資源のムダ遣いも減ります。

 現在出回っているタイプは給油ノズルが2重構造になっていて、ガソリンの給油は従来どおり中心部で行ない、ノズルの外側でクルマの燃料タンクから蒸散するベーパーを吸引できるようになっています。

 また、ガソリンが揮発して大気中に蒸散することで、給油中の燃料損失も膨大になっているとの試算もありましたが、ベーパーを給油計量機の中で圧縮・冷却して液化することで、燃料の損失も極めて少なくなり経済的でもあります。

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