タイヤサイズに「ミリ」と「インチ」が使われる理由 昔はクルマも単位が混在していた?

タイヤサイズについての謎が解明か!?

 この謎を解明するため、「一般社団法人 日本自動車タイヤ協会(JATMA)」の方にうかがってみました。

──なぜタイヤのサイズはミリメートルとインチが混在しているのでしょうか。

 1940年ごろ、メートル法が制定されていたフランスで、タイヤのサイズをミリメートルで統一しました。もちろんタイヤの内径もミリメートルで表記していたのですが、中途半端な数字になるのでわかりづらいと、タイヤの内径のみ、すぐにインチに戻されました。他国のメーカーもこの表記にならい、結果、現在もミリメートルとインチの表記が混在したままとなっています。

──タイヤの幅で末尾が「5」に限定されているのはなぜでしょうか。

 これは諸説あるので、明確な答えはお伝えできないのですが、タイヤの幅もインチだったのがミリメートルに統一した際に、キリのいい「5」となった説があります。

 現在は四輪車用タイヤの末尾が「5」で、二輪車用タイヤの末尾が「0」となっているケースがほとんどです。理由としては、誤って組み付けて使用しないように分けられています。先に四輪車用の末尾「5」に設定されたので、二輪車用は後から決まりました。

※ ※ ※

 タイヤの内径、ホールのリム径は表示上インチですが、日本において設計図はミリメートルの表記になっているようです。

 なお、タイヤサイズに限らず、日本のクルマでミリメートルとインチが混在していた時期があります。たとえば日産は1950年代にイギリス車であるオースチン「A40サマーセットサルーン」と「A50ケンブリッジ」というクルマを生産(ノックダウン)していました。当初この2台はイギリスで部品生産され、日本で組み立てていましたので、当然、部品の寸法はイギリス式のインチです。

 このノックダウンで近代の自動車製造を学んだ日産は、戦後はじめてとなる自社開発の「ダットサン セダン」(110型)を1955年から生産したのですが、各部品の寸法にミリメートルとインチが混在していたといいます。

 その次に発売した「ダットサン1000」(210型)も、まだミリメートルとインチが混在していました。「ダットサン1000」は1958年にオーストラリアのラリーに出場してクラス優勝したのですが、その時にミリメートルとインチ両方の車載工具を持っていったという逸話があります。工具は鉄でできていて重く、ラリーを戦ううえで非常にムダな行為だったため、その反省もあって、後に生産された日産車はすべてミリメートルに統一されました。

ミリメートルとインチが混在していた「ダットサン セダン」(110型)

 現在は世界的に「メートル法」が採用されています。採用していない国は極わずかですが、そのひとつがアメリカ合衆国という大国です。アメリカでは「ヤードポンド法」を使っており、クルマの場合インチが基本でメートルが混在している場合もあるようです。

 当然、アメリカを走る他国メーカーのクルマは「メートル法」で作られていますので、アメリカの修理工場は工具をたくさん用意する必要があるでしょう。

 もし、アメリカが「メートル法」を採用したら、将来はタイヤサイズもすべてミリメートルに統一されるかもしれません。ただし、これまでに生産されたホイールの流通量を考えると、よほど革新的な出来事が起きない限り遠い未来の話になりそうです。

【了】

ミリとインチが混在した旧車等を画像で見る(8枚)

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