今後登場するスズキの軽自動車は「マイルド以上ストロング未満」の48Vハイブリッドを正味プラス20万円で搭載!? 「100kg軽量化」と「開発期間半減」かかげる新たな技術戦略とは?
スズキは「10年先を見据えた技術戦略2026」を発表し、新車の開発期間を従来の半分となる約2年に短縮する方針を明らかにしました。あわせて、軽自動車向けの新たな「48Vハイブリッド」などの次世代パワーユニット戦略も公開。徹底した軽量化で驚異の低燃費を目指すスズキの最新動向と、新技術を搭載する次期モデルの登場時期について考察します。
新ハイブリッドや1.2Lターボが登場へ! 搭載モデルはどうなる?
2026年9月25日、スズキは「10年先を見据えた技術戦略2026」を発表しました。
同社は従来「小・少・軽・短・美」を商品開発の方針に掲げています。ボディなどは小さく、原材料や部品点数は少なく、効率アップのために軽量で、判断や実行は短期間で行う。それが美しさ、つまり顧客満足度を高めるという意味があります。
この方針は今後も継承されます。スズキは販売する地域に近い場所で生産を行うため、インド、ハンガリー、インドネシアなどにも4輪車の生産工場があります。販売地域に適した商品を、近い場所で生産する地産地消の考え方です。
今回発表された技術戦略では、開発期間を現在の半分(約2年間)に短縮して、開発効率は30%、生産効率は50%向上させることが明らかになりました。開発と生産が一体となり、マルチパスウェイを実現するために経営基盤を強化するとしています。
開発期間を短くすれば、ユーザーや社会のニーズに機敏に対応して、市場調査に十分な時間を費やすことも可能です。
現在の開発期間(約4年)では、新型車を発売したら、その直後に次期型の開発を始める必要があります。現行型の市場評価を次期型の開発に反映させにくいという課題が生じますが、2年間で開発できれば直近の市場動向にも対応できます。
その代わり開発期間を半分に短縮するには、さまざまな開発を同時に、なおかつ迅速に進めることが求められます。前の行程を受けて次の行程に進む順番があると、開発期間は短縮できません。途中の修正もしにくく、最初に正しい判断と確かな開発計画を立てる必要があります。
他社の動向を見ると、マツダは2012年に発売された初代「CX-5」から「SKYACTIV(スカイアクティブ)テクノロジー」を採用しており、エンジンやプラットフォームを同時に開発しました。直近では、日産も開発期間の短縮に乗り出しています。

スズキは開発期間の短縮を視野に入れつつ、今後のスズキ車の開発を支えるパワーユニット戦略も公表しました。軽自動車用の直列3気筒660ccエンジンを使ったハイブリッド、小型車用の直列3気筒1.2Lを使ったハイブリッド、直列3気筒1.2Lターボもあります。
このうち、軽自動車用のハイブリッドは48Vタイプです。1個のモーターがアイドリングストップ後の再始動、駆動、減速時の回生発電などを行います。
1個のモーターがさまざまな役割を担当する制御は現在のマイルドハイブリッドに近いですが、動力性能は従来のスズキの軽自動車が搭載するマイルドハイブリッドを上回ります。モーターの最高出力は10kW(13.6馬力)で、以前の小型車の「ソリオ」や「スイフト」が5速AGS(オートギヤシフト)と併せて搭載したハイブリッドと同等です。
軽自動車の現行「スペーシア」が搭載するマイルドハイブリッドは、最高出力が1.9kW(2.6馬力)。これに比べると48Vタイプは動力性能が高く、ストロングハイブリッドとマイルドハイブリッドの中間的なメカニズムです。
48Vハイブリッドでも、ボディの軽い軽自動車に搭載すると、動力性能に余裕が生じます。負荷の少ない状態では、現在のマイルドハイブリッドと違って、エンジンを停止させてモーターのみで走ることも可能。モーターが減速エネルギーを使って発電を行い、それを駆動用電池に蓄えて、エンジンを停止させてモーターだけで走るのです。
48VハイブリッドのWLTCモード燃費は未発表ですが、予想してみましょう。48Vハイブリッドを最初に搭載する車種は、燃費性能や環境性能の優れた「アルト」になる可能性が高いと言えます。
現行アルト2WDのノーマルガソリンエンジン車は25.8km/Lで、マイルドハイブリッドは28.2km/L(いずれもWLTCモード値、以下同)です。そうなるとアルトの48Vハイブリッドは、少なくとも30km/Lは超えるでしょう。
日本で売られている4輪乗用車で、WLTCモード燃費が最も優れた車種は、36km/Lを誇る「ヤリス」の「HYBRID X」です。トヨタのハイブリッド「THSII」は効率が高く、優れた燃費性能を達成しています。
アルトはボディが軽く、マイルドハイブリッドを搭載する現行型の「HYBRID S(2WD)」は700kgに収まります。ヤリスHYBRID Xの1050kgにくらべて350kg軽く、比率に換算すると67%です。
アルトはこの軽さを生かして、ヤリスハイブリッドに対抗するでしょう。つまりアルトに48Vハイブリッドを搭載した仕様の燃費目標は36km/Lです。
この燃費向上に大きく貢献するのが軽量化です。今後は安全性やセキュリティの充実で、軽自動車の車両重量は、今よりも80kg重くなるとされています。その上で100kg軽量化するため、現行型に比べると20kg軽くなります。アルトのマイルドハイブリッドなら680kgです。
スズキの開発者は以下のように述べました。
「車両に使うボルトも1本当たり1g軽くします。1台の車両は2000本以上のボルトを使うので、合計2kgの軽量化を実現できます。このようにスズキの軽量化は、高コストな飛び道具は使いません。鋼板も含めて、細かな軽量化の積み重ねでボディを100kg軽くします」
この方法は、価格上昇を可能な限り抑えようとするスズキらしい取り組み方です。

価格も重要です。現行アルトのマイルドハイブリッドでは、装備の違いを補正して正味価格を算出すると約6万円です。一方、ストロングハイブリッドの正味価格は、ホンダ「フィット」のようなコンパクトカーでも約35万円に達します。軽自動車にハイブリッドを搭載して価格を35万円高くしたら、割高になって販売は低迷します。
マイルドハイブリッドが6万円、ストロングハイブリッドが35万円という価格アップ分を踏まえると、スズキの新しい48Vハイブリッドの正味価格は20万円と予想されます。軽自動車ではこの金額が限界です。
ちなみに軽自動車の場合、エアロパーツやアルミホイールを装着した上級シリーズと、ベーシックな標準ボディとの価格差が約20万円です。48Vハイブリッドの正味価格が20万円なら、エアロパーツやアルミホイールで外観をカッコ良くするか、同じ金額でハイブリッドにより燃費を含めた環境性能を向上させるか、という選択が成り立ちます。
アルトでは電動機能を搭載しないノーマルガソリンエンジンの「L・2WD」が119万7900円(価格は消費税込、以下同)ですから、48Vハイブリッド搭載車の価格は140万円くらいでしょう。この価格で燃費は前述の36km/Lを目指します。
スペーシアは、標準ボディで装備を充実させた「(マイルド)ハイブリッドX・2WD」の燃費が23.9km/Lで、価格は170万5000円です。そうなると48Vハイブリッドの燃費は25%アップの30km/Lを目指し、価格は190万5000円になります。
そして48Vハイブリッドは、ノーマルガソリンエンジンに加えて、ターボでも成立します。軽自動車は車両重量に対して排気量が660ccと小さいため、ターボとの親和性が高くなっています。
例えばスペーシアカスタムの場合、ターボの最大トルクはノーマルエンジンの1.7倍ですが、燃費は8%しか悪化しません。従って48Vハイブリッドは、現在のターボの高効率をさらに引き上げます。
スズキでは、2030年に国内で新車として販売する4輪車の80%をハイブリッド、20%を電気自動車にする方針です。これを実現するためにも、細かな軽量化を行い、48Vハイブリッドで燃費性能を引き上げることが不可欠です。
このほか、スイフトなどのコンパクトカー向けには、直列3気筒1.2Lエンジンを使ったハイブリッドもあります。エンジンは発電、駆動はモーターが受け持つシリーズタイプのストロングハイブリッドです。
日産の「e-POWER」に似た方式で、電気自動車とユニットを共通化できるメリットもあります。電気自動車の駆動用電池を、エンジンと燃料タンクに置き換える考え方です。1.2Lエンジンを使ったハイブリッドはストロングタイプですから、価格は20万円には収まらず35万円前後です。
直列3気筒1.2Lターボは、直噴式を採用して、最高出力は93kW(126馬力)、最大トルクは230Nm(23.4kg-m)です。実際の走行に影響を与える最大トルクは、2.3Lのノーマルガソリンエンジンと同等ですから動力性能に余裕があります。
すでに生産を終えた「スイフトスポーツ」が搭載した直列4気筒1.4Lターボは、最高出力が103kW(140馬力)、最大トルクは230Nm(23.4kg-m)です。新しいターボはこの後継に位置付けられ、燃費や環境性能を向上させます。
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以上のように今後のスズキ車は、軽自動車やコンパクトカーに適したハイブリッドを中心に発展します。前述の通り、4輪車の新車販売台数に占めるハイブリッド比率は80%で、電気自動車は20%ですから、エンジンの果たす役割も大きなものになります。
発売時期ですが、軽自動車の48Vハイブリッドは、2028年頃にアルトに搭載される可能性が高いと言えます。ただし次期「ハスラー」になることも考えられます。現行ハスラーは2020年1月に発売され、次期型の発売が迫っているからです。
1.2Lのシリーズハイブリッドやターボも、スイフトやソリオに搭載されて2028〜2029年に登場するでしょう。新しいパワーユニットを搭載する今後のスズキ車には、大いに期待できそうです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
























