日産が挑む開発プロセス大改革「ファミリー戦略」とは? 中国勢への危機感と次世代のクルマづくり

自動車業界が変革期を迎える中、日産自動車は新たな車両開発戦略「ファミリー戦略」を導入しています。従来の単一車種ごとの開発から、複数車種を一括で企画・開発する手法へ転換。中国メーカー台頭などの危機感を背景に、開発期間を約40%短縮し、より魅力あるクルマをタイムリーに届ける日産の大改革に迫ります。

なぜ今「ファミリー企画」なのか? 導入の背景にある強い危機感

 自動車業界が100年に1度の大変革期を迎える中、日産自動車は新たな車両開発・事業戦略である「ファミリー戦略」の導入を明らかにしています。

 今回はその戦略のひとつとなる「ファミリー企画」に関する説明会が行われました。このファミリー企画とは、従来の単一車種ごとの開発から、複数車種(車群=ファミリー)を共通のアーキテクチャーをベースに一括で企画・開発する手法です。

 今日がなぜ今プロセス改革に挑むのか、同社の商品事業企画部 副本部長 佐々木英王氏の説明をもとに、全貌と狙いを紐解きます。

ファミリー戦略について商品事業企画部 副本部長 佐々木英王氏が語った
ファミリー戦略について商品事業企画部 副本部長 佐々木英王氏が語った

 日産が開発プロセスを抜本的に見直した背景には、事業環境の急激な変化と強い危機感があります。同社の資料では、導入の背景として以下の5つの課題が挙げられています。

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●ライフサイクルの長期化による競争力低下:よりプロセスの効率化が求められる時代になっている。

●市場環境の急激な変化: EV化、規制変更、補助金政策、顧客ニーズの変化が加速している。

●長いリードタイムによる事業リスクの増大:長期の開発期間が、商品企画の不確実性を増幅させている。

●コスト構造の課題: 非効率な構造により、部品費、開発費ともに増加傾向にある。

●業界構造の変化(スピード競争の激化):中国・EV新興勢などは2年前後で開発するなど、競争が加速している。
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 佐々木氏はこれらの現状について、次のように語っています。

「昨日までのトレンドが明日どうなるか分からないほど、事業環境が急激に変化しています。朝起きたら次に何が起こるか分からないくらい世の中が変わってしまうため、ライフサイクルが延びているのに世の中が変わってしまうという大きな課題がありました。

 加えて、中国メーカーの皆さんは全然違うルールで、強い速さで動かしています。このまま同じやり方で仕事をしてたら事業を存続できない、あるいは競争を続けられないという決断から、イヴァン・エスピノーザ社長の強いリーダーシップのもとで会社全体で変わるために変革を始めました」

 新たな「ファミリー戦略」が目指すのは、「より魅力ある商品を、より納得できる価格で、よりタイムリーに」お客さまに届けるための事業基盤を構築することです。

 従来の日産の開発は、基準となる「マザーモデル」に最新技術を集中させ、派生車種の計画は後追いで行われる「個車最適での計画」でした。

 しかしこの手法では、ひとつのモデルの変更が他モデルに波及するなど手戻りが多く発生し、流用や共用の検討が難しいという欠点がありました。開発期間もモデルごとに約50ヶ月を要していました。

 そこで日産は、個車開発をぶれずに進めるため、短期間で個車の魅力を磨き上げる「前提条件」を複数車種で一括して計画する手法に転換。これが「ファミリー企画」です。

 チーフ・ファミリー・ストラテジスト(CFS)が主導し、経済的合理性が高い4〜5台の車種群をまとめて計画します。

 具体的なプロセスは以下の通りです。

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●アーキテクチャーの決定: 車両プラットフォーム、パワートレイン、共通ソフトウェア基盤などをファミリー単位で決定します。

●コンポーネントの事前仕込み: ナビやAD/ADAS系、シートなどの大物共通技術を事前に整備します。佐々木氏はこれを「工場の棚に一番旬な技術が常に載っている状態」と表現しています。

●開発期間の大幅短縮:複数車種で前提条件を決めるため手戻りが少なく、リードモデルで37ヶ月、後続モデルで30ヶ月へと開発期間が短縮されます。
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 日産はファミリーを、「フレーム」「ミドル」「コンパクト」といった共通のアーキテクチャーをベースに開発されるグループとして定義し、全体を網羅していく構えです。

 統一されたファミリー企画は、事業性と競争力を両立するファミリー統合を推進し、早期に一括意思決定を行うことで、多方面に絶大なシナジー効果をもたらし、最終的には以下の事業効果があるといいます。

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●開発:個車開発の期間を約40%短縮し、投資回収を早期化。戦略的な部品の流用・共用を推進します。

●調達:台数集約による部品コスト低減を実現し、部品種類を70%削減。新技術のための投資判断も迅速化します。

●生産:ファミリー単位での生産拠点最適化を図り、工場の重複投資削減と生産設備投資の効率化を実現します。
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 佐々木氏はこの「固定と変動のバランス」について、次のように解説しています。

「変えないで済むところは固定でいき、そこをベースとして何を取り替えれば個別の需要に応えられるのかという変動の要素を最初に決めます。共用化しながら性能を上げ、コストを下げる。浮いた時間と労力を使って、お客さまが本当に欲しい独自の魅力作りに投資することができます」

 さらに佐々木氏は、開発期間短縮による「市場との距離の近さ」を最大のメリットとして挙げました。

「開発期間が30〜37ヶ月と短くなることで、自分の車が売り出されてから次期型を作るまでに、1年半から2年半くらい市場を観察できます。従来は5〜6年かかっていたため、市場の反応を見ずに次世代の企画をしていました。リアルにお客さまの反応を知り、現行車の反響を次期型の企画に情報を還流できるのが大きなメリットです」

 また、他社との差別化については、プロセスそのものではなく、そこに乗せる日産としての「意志」だと力を込めました。

「プロセスだけでは日産の強みは出せないと思います。そこにはしっかり個車設計だったり、我々のブランドをどう作っていくかという意志が必要です。お客さまに喜んでもらったものをどう育て、何を約束していくかを企画として準備する。競争力のあるプロセスを使って、日産らしさをタイムリーに届けていくことが我々の強みになると考えています」

※ ※ ※

 日産の「ファミリー企画」は、単なる部品の共通化やコスト削減のツールではありません。厳しい経営環境と激変する市場の中で、「魅力ある商品を、納得できる価格で、タイムリーにお届けするための事業基盤」です。

 この新たなアプローチによって、今後日産からどのような個性溢れるモデルがスピーディに生み出されていくのか。業界構造が激変する中で、日産がどのように競争力を取り戻していくのか、大いに注目したいところです。

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Writer: くるまのニュース編集部

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