まるでスイフト!? スズキの新型“軽ワゴン”「e SKY」公開! 約1000kgの“軽量ボディ”とフットワークの完成度に注目! 新たなBEVプロトタイプの走りを試す
スズキの軽BEV「e SKY」の情報が公開されました。正式発表に先駆け千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイでプロトタイプモデルに試乗。長年軽自動車を作り続けてきたエキスパートが手掛けるBEVは、一体どのような特徴を持つのでしょうか。自動車研究家の山本シンヤ氏がレポートします。
プロトタイプに試乗! “乗り味”はスズキの軽自動車最良
今回、正式発表に先駆けてプロトタイプを袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県)で試乗してきました。クローズドコース(コースにはパイロンスラロームとクランクを設定)ですが、日常+αくらいのペースで走らせています。
アクセルを踏み込むと、応答や瞬時に立ち上がるトルクは感じるものの、いい意味で“普通”です。聞くと「そっと踏めば優しく、グッと踏めば力強い」「ガソリン車から乗り換えても違和感ないように」といった制御を行なっていると言います。
イメージ的にはトルクの谷間がないライトプレッシャーターボに近い感覚です。過度なトルク感や過剰な 音空間(無響室のような不気味な静けさ)を避け、必要な速度感や音を残した絶妙な静粛性と加速マナーは誰が乗ってもすぐに馴染める「乗りやすさ」があります。

予想を超えていたのは、フットワークの完成度の高さです。BEV用に開発された「e-HEARTECT」と高剛性ボディにより、1625mmの全高ながらもコーナリング中のロール感は驚くほど自然です。パイロンスラロームでもフリクションのないEPSも相まってスムーズなステアリング応答を示し、「腰高感」はほとんどありません。
車両重量は26kWhのバッテリーを搭載しつつも1030kgに抑えられていますが、軽さを活かしたキビキビしたフットワークと、格上モデルも顔負けのドッシリ感ある接地性が共存しており、予想以上に骨太な印象です。個人的には操舵した時のクルマの動きやロール感、更にはコーナリングの一連の流れは「まるでスイフトに乗っているかのような錯覚を覚える」ほどでした。
せっかくなので常用域を超えたハイスピードコーナリングも試してみましたが、タイヤ(165/65R14、燃費や転がりを重視)を限界まで使い切れるシャシー性能が与えられています。
ちなみにコースにはクランクのような条件も設定されていましたが、最小回転半径4.4mとフロントタイヤの切れ角が非常に大きく、「まだハンドルが切れるのか」と驚くほどの小回り性能を持っています。
乗り心地は路面状況の良いサーキットなので断言はできませんが、サーキット内の縁石やいくつかの凹凸を乗り越えても、突き上げを優しくいなしてくれます。この辺りは基本素性の良いシャシーとダンパーの味付けの良さの相乗効果でしょう。“乗り味”と言う意味ではスズキの軽自動車最良といっていい仕上がりです。
ブレーキペダルは内燃車よりも踏力コントロールがしやすく、回生ブレーキとの協調も滑らか。インパネ右下のスイッチでワンペダル走行が可能な「イージードライブペダル」に切り替えることもできます。加減速のコントロールが容易なのは言わずもがなですが、アクセルOFFで減速感はシッカリありつつも頭がゆざぶられるような感覚は少ない。電動車感を味わいたいならON、内燃車と同じ感覚が良いならOFFがいいでしょう。
Hotモデルの登場も期待したくなるほどしっかりした“走りの土台”
総じて言うとe SKYは「極めてプラティカルなBEV」です。中国メーカーなどをはじめとする新興勢力が豪華な素材や大容量バッテリーを組み合わせてBEVを作るのに対し、スズキは長年軽自動車を作ってきたエキスパートとして、最後の一滴まで魂を込める「すり合わせ」と「軽量化」で勝負を挑んでいます。そういう意味では、良くも悪くも“力技”で挑んできたBYD「ラッコ」とは対照的です。
もちろん「スライドドアではない」「先進性が薄い」と言う声も出ることでしょう。しかし、「気負いなくBEVを体験できる」モデルと考えたら一つの正解なのかもしれません。個人的には控えめながらも初代アルト、初代ワゴンRのように「軽を変える」と言う“志”や“想い”がギュッと込められたモデルだと感じました。
そして、実際に走らせてみて強く感じたのは、「素性の良さ」と「ポテンシャルの高さ」です。これほどしっかりとした走りの土台があるのなら、単なる日常の足だけに留めておくのは正直もったいない。
例えば、前後トレッドを広げてワイドフェンダーを纏い、足回りを引き締めて出力を引き上げた「e SKYワークス」もしくは「スーパーe SKY」のようなHotモデルの登場を、思わず妄想、期待したくなってしまったほどです(どこかのメーカーに似たようなモデルがありますが…)。

かつて規格や装備の均一化によって「コモディティ化」が懸念されていた軽自動車市場ですが、電動化という新たなフェーズを迎えた今、軽BEVや最新電動車を見ると各社のらしさがより一層際立っています。
軽BEVとして圧倒的な軽量化と「クルマとしての走り」を愚直に追求するスズキ、ワクワクさせる走りのホンダ(「N-ONE e:」等)、自社技術のフルHEV(e-SMART)で独自の答えを提示するダイハツ(近日発売予定と噂されている)、そしてBYDといった強力な海外勢まで出揃いました。
つまり、電動化により軽自動車はこれまで以上に刺激的で面白い時代に突入しています。スズキが満を持して送り出すe SKYもまた、その未来を力強く牽引する注目の1台であり、今後の軽自動車市場の展開から目が離せそうにありません。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。






































































