ヤマハ渾身の「和製スーパーカー」! 全長4m以下「ちいさなボディ」の軽量「2人乗りモデル」! 高級ウッド内装もイイ「スポーツライドコンセプト」とは

楽器やバイクで知られるヤマハが、かつて本気で市販化を目指した「幻のスーパーカー」をご存じでしょうか。F1の技術も注ぎ込まれたその驚くべき中身とは、いったいどのようなものだったのでしょうか。

ヤマハの魂が宿る「幻のスポーツカー」

 自動車メーカーが未来の可能性を提示するコンセプトカー。その中には、市販化が熱望されながらも、さまざまな事情により幻となって消えていったモデルが存在します。

 過去を振り返ると、2015年10月に開催された「東京モーターショー2015」において、ヤマハ発動機のブースで世界初公開された「スポーツライドコンセプト(SPORTS RIDE CONCEPT)」は、まさにそんな1台でした。

 二輪車メーカーであるヤマハが本格的な四輪スポーツカーを発表したことは、会場で「最高のサプライズ」として受け止められ、国内外のメディアやファンから絶大な注目を集めました。

 ヤマハはかつて1992年にF1エンジンを搭載したスーパーカー「OX99-11」を発表し、1994年の発売を目指しながらも断念した経緯があるだけに、このモデルこそ”夢の再来”と期待され、当時は市販化を確実視する声も多く聞かれたほどです。

 ヤマハが掲げたコンセプトは、”大人が日常的に楽しめる正統派スポーツカー”です。
 開発テーマに「LIVE & RIDE感」を掲げ、ヤマハが得意とする”人機官能(人と機械が一体となる感覚)”を四輪車で表現することを目指しました。

 ドライバーとマシンの関係を、バイクに近い「ライダー・マシン・外界」という要素で捉え、まるでライディングしているような爽快感を意図したデザインスタディモデルです。

 そのスタイリングには、独自のデザイン思想”エレメンタリズム”が採用されました。

 これは、各部品が独立した機能と美しさを持ちながら、全体として調和するという考え方です。エクステリアは、モーターサイクルのタンクとカウルが独立しながら一体感を生むように、キャビンと前後カウルが構成されています。

 リアには同社のスーパースポーツ「YZF-R1」を彷彿とさせるセンター出しのアップマフラーや、独自のテールライトデザインが採用され、二輪車メーカーならではの美学が随所に散りばめられています。

 インテリアは、ドライバーとマシンの対話に集中できる機能的な空間としつつ、メタル、レザー、カーボンといった異素材を組み合わせて高い質感を表現しています。

 特筆すべきは、楽器メーカーとしてのヤマハの顔が垣間見える点です。

 シート後方のトップケースには、高級ギターにも使われる”カーリーメイプル”材にサンバースト塗装を施したウッドパネルを採用し、スピーカーを内蔵するなど、工芸品のような美しさを備えています。

内装のデザインも良すぎる…!
内装のデザインも良すぎる…!

 ボディサイズは、全長3900mm×全幅1720mm×全高1170mmという、非常にコンパクトで低いプロポーションを持っています。

 そして何より衝撃的だったのが、その車両重量です。現代の安全基準を満たす乗用車としては驚異的な、約750kgという軽さを実現しているのです。

 この圧倒的な軽量化を支えているのが、ゴードン・マーレーデザイン社が提唱する車両構造技術「アイストリーム(iStream)」です。

 F1マシンに源流を持つこの技術は、鋼管パイプフレームと複合素材パネルを組み合わせるもので、軽量かつ高剛性な車体を実現します。

 本モデルでは特に、カーボンファイバー素材を用いることで、軽自動車並みの軽さと、高い衝突安全性の両立を目指しました。

 気になるパワートレインやエンジンの最高出力・最大トルクといったスペックは、公式には明らかにされていません。

 ただし駆動方式については、2シーター後輪駆動のスポーツモデルであることが公表されました。メディアでは搭載位置について諸説報じられましたが、公式な仕様としての開示はありませんでした。

 これほどまでに完成度が高く、ファンの心を掴んだスポーツライドコンセプトですが、残念ながら市販化は実現しませんでした。

 その理由は、2018年12月の中期経営計画発表時において、四輪車事業への参入凍結(事実上の撤退)が決定されたためです。

 量産車として市場競争力のある価格で提供しつつ利益を確保することが、採算性の観点から極めて困難であると判断されたのです。

 その後、2017年の東京モーターショーでは、ピックアップトラック型のコンセプトカー「クロスハブコンセプト(CROSS HUB CONCEPT)」も発表されましたが、こちらも四輪事業参入の凍結に伴い、市販化には至っていません。

 しかし、スポーツライドコンセプトの存在感は今も色褪せていません。

 デビューから時間が経過した現在でも、SNSや自動車メディアでは「幻の和製スーパーカー」として度々話題に上がります。

 「750kgの軽量ボディで走ったら絶対に楽しい」「今からでも市販化してほしい」「デザインが古びていない」といった声が根強くあり、ヤマハが見せた「四輪への夢」は、多くのファンの記憶に刻まれ続けています。

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