日本の商用EV市場を揺るがすか Kia、新コンセプト「PBV」で挑む 韓国拠点レポ

2026年、日本の商用モビリティ市場に地殻変動が起きようとしている。韓国の自動車メーカーKiaが新コンセプト「PBV」を掲げ、次世代EVバン「PV5」を本格導入。4兆ウォンを投じた最先端工場や過酷な品質試験を行う研究所など、韓国の同社中枢拠点を現地取材。これまでの常識を覆す戦略の真価に迫った。

日本のモビリティ市場を変革するかもしれない… 次世代EVバン「PV5」を韓国・最先端拠点で徹底取材!

 2026年、日本の商用モビリティ市場に、韓国の自動車メーカーであるKia(キア)が展開するまったく新しいモビリティコンセプト「PBV(Platform Beyond Vehicle)」シリーズのEVバン「PV5」が導入されました。
 
 今回は、韓国にあるKiaの開発拠点などを現地取材し、KiaブランドやPV5の魅力を解説していきます。

商用用途からキャンプや車中泊のニーズまで、色々な使い方が出来るPV5
商用用途からキャンプや車中泊のニーズまで、色々な使い方が出来るPV5

 まず、Kiaが提唱するPBV戦略と日本市場への本気度について解説します。PBVとは「Platform Beyond Vehicle」の略称であり、EVの選択肢を広げ、様々なニーズに応じたユースケースを持つことで、カーボンニュートラル達成に向けたソリューションを提供するシリーズです。

 現地ではKiaの副社長であり、PBVビジネス事業部長であるキム・サンデ氏が、日本市場参入にあたり「一期一会」の精神で顧客に向き合う熱意を語りました。

 Kiaは、このPBV事業をヒョンデモーターグループの持続的な成長への原動力として位置づけており、2030年のグローバル販売目標としてKiaブランド全体で413万台、そのうちPBV単体で23万台という数値を掲げています。

 そして、この事業基盤を強化するために4兆ウォン(約4191億円)という巨額の投資を行っていることが明かされ、その投資を象徴するPBV専用工場「EVOプラント」では、無数の黄色いロボットアームが車体を精緻に組み立てる次世代の生産ラインがすでに稼働していることが確認できました。

 さらに品質向上を支える拠点である南陽(ナムヤン)研究所では、世界基準の品質を担保するために風洞、耐熱、対雨、耐雪といった過酷な環境を再現した試験設備が運用されており、日本向けのPV5もここで厳しい品質チェックを受けています。

 今回、その風洞において実際に風を発生させた状況を体験することができました。強い風が吹き抜ける中で白い煙を流し、車両の周囲を流れる気流(空力)を発生させる場面も見ることができました。

 また、Kia PBVエクスペリエンスセンターの実車展示エリアでは、様々な仕様のPV5が展示されており、なかでもオーディオブランド「harman/kardon」のロゴが配されたミントグリーンのPV5キャンパー仕様は、サイドオーニングを展開してベッドや本格的なキャンプギアを機能的に配置したモデルだったのが印象的でした。

PV5には様々なバリエーションが存在する
PV5には様々なバリエーションが存在する

 PV5には大きく分けてパッセンジャーモデルとカーゴモデルの2タイプが存在し、カーゴモデルには標準ボディのほか、カーゴ・ロング、コンパクト、ハイルーフ、さらには後部に荷台を持たないキャブ付シャシまで設定されています。

 パッセンジャーモデルは5人乗り、6人乗り、7人乗りのシートレイアウトが選べるほか、車いす仕様車である「WAV」もラインナップされています。これらをベースにしたコンバージョン(架装)モデルとして、後席を設けた「クルー」、パッセンジャーベースの「ライトキャンパー」、キャブ付シャシベースの「平ボディトラック」などの展開も予定されています。

 車両のメカニズムやスペックに目を向けると、バッテリーはスタンダード(51.5kWh)とロングレンジ(71.2kWh)の2種類が設定され、一充電走行距離(WLTCモード)はカーゴのロングレンジで528km、パッセンジャーのロングレンジで521kmという十分な数値を確保しています。

 日本市場向けにはCHAdeMO(チャデモ)規格の急速充電に対応し、車両から家電等へ給電するV2Lや建物へ給電するV2Hにも対応するため、非常用電源としての活躍も期待できます。

 初期の販売ネットワークは町田、厚木、鈴鹿、名古屋、倉敷、福岡の各拠点に東京の直営店を加えた7箇所からスタートし、アフターサービス整備工場は52箇所を展開する計画が進行しています。

Kia PBVエクスペリエンスセンターの敷地内で試乗。 直線・コーナー・凸凹など様々なシチュエーションを体感
Kia PBVエクスペリエンスセンターの敷地内で試乗。 直線・コーナー・凸凹など様々なシチュエーションを体感

 そんなPV5ですが、実際の乗り味を確認すべく、韓国のKia PBVエクスペリエンスセンターで試乗を行いました。

 PV5のステアリングを握って走り出すと、加減速においてEVらしい力強さとシームレスさをはっきりと体感できます。あえて凹凸のある路面も走行してみましたが、従来の商用バンにありがちな不快な突き上げ感は巧みに抑えられており、乗用車に近い乗り心地でストレスを感じることはほとんどありません。

 さらに後席に乗ってもその好印象は変わらず、商用バン特有のバタつきや乗り心地の悪さが払拭されているため、ファミリーユースなどの乗用用途でもまったく問題なく使える高い仕上がりを実感しました。

Kia Unplugged GroundではARを用いてPV5を提案
Kia Unplugged GroundではARを用いてPV5を提案

※ ※ ※

 取材の最後に訪れたソウル市内の聖水洞(ソンスドン)にあるブランド体験施設「Kia Unplugged Ground」は、60年以上前に建てられた印刷工場などをアップサイクリングした空間であり、歴史ある資産を活かしながらモビリティの未来を切り拓くKiaの姿勢を美しく象徴していました。

 館内ではKiaのEVシリーズをテーマ毎に体感することができ、EV4やEV6などの体験展示が行われているほか、PV5についてもARなどを活用した先進的な演出がなされており、リアルとバーチャルが融合した未来的な印象を受けました。

 今回新たに登場したPV5は、これまでの商用車やEVの常識を塗り替え、日本のモビリティ市場に新しい風を吹き込む大きな存在となるかもしれません。

【画像ギャラリー】これが新たなバンです。 PV5を画像で見る!(28枚)

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Writer: くるまのニュース編集部

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