軍用車から派生したと言われる「Gクラス」 実はカーマニアの国王の鶴の一声で誕生!?
軍用車として使われた実績…厳密に言えば市販車として誕生
ドイツ連邦軍のコンペティションで敗れたゲレンデヴァーゲンですが、最初に制式化に踏み切ったのは、フォークランド紛争の準備を進めていたアルゼンチン軍。その後はドイツ連邦国境警備隊での採用を皮切りに、オーストリア軍、スイス軍、そしてNATO軍、国連軍、結果的にはドイツ連邦軍にも制式採用されることになりました。
ちなみにゲレンデヴァーゲンの民生用は1979年に誕生した「W460」、軍用は1981年に生産が開始された「W461」と型式上でも区別されており、基本的なボディデザインは同じでも様々な部分で異なっていました。そして軍用車は「ヴォルフ(ウルフ)」と別な名前も与えられています。
その後、GfGは解体となり、ダイムラー・ベンツ社が引き続き開発を、プフ社は下請けで生産を担当することになります。また1993年(日本では1994年から)モデル名の再編が行われ、ゲレンデヴァーゲンは現在のGクラスとなりました。1990年からW463に進化した同モデルですが、フルタイム4WD化やエンジン換装、トレッドサイズの拡大、AMGモデルの追加など、時代に即した高級クロスカントリー4WDの道を着実に歩んでいくのです。
日本法人であるメルセデス・ベンツ日本の広報部に話を聞いたところ、「もともと軍用車では…というお問い合わせがありますが、厳密に言えば市販車として誕生しました。ただ、さほど登場年にタイムラグがないこと、軍用車として使われてきた実績から、軍用車のDNAを持った優れたクルマとしてご案内することもあります」ということでした。
Gクラスは新型になってから、従来にないイージードライブ性能と安全性を身に付けました。さらに車内のゴージャス感もパワーアップしています。オンロードでの走りもシャープになり、クロスカントリー4WDということをあまり意識せずに乗ることができるようなりました。「あんなのはGじゃない」と嘆く向きもいるようですが、元々快適かつ安全にすべてのステージを走れるように造られたGクラスにとっては、新型はまさに正常進化の形と言えるのではないでしょうか。
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Writer: 山崎友貴
自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。