マツダ「CO2回収」の狙いは レース実証で目指すカーボンネガティブの取り組み 今後どうなる?
マツダはスーパー耐久シリーズの現場において、内燃機関の排気ガスから直接CO2を回収する技術の実証実験を進めています。本記事では、地球環境課題に対する同社のマルチソリューション戦略から、専用装置を用いた効率的な回収メカニズム、2026年に向けた参戦計画までを解説します。
マツダ、排ガスからのCO2回収システムをS耐で実証へ
マツダがスーパー耐久シリーズの現場で進めている、内燃機関からCO2を直接回収する技術の実証実験。
地球環境課題に対する戦略から、専用装置を用いた効率的な回収メカニズム、2026年に向けた参戦計画までどのようなかたちでカーボンネガティブに取り組むのかを解説しています。

自動車の環境対応として電動化が広く推進される中、マツダは内燃機関の可能性を追求し続けています。
スーパー耐久シリーズでは、カーボンニュートラル燃料と二酸化炭素回収技術を組み合わせた「カーボンネガティブ」を目指す競技車両がテストを重ねています。
地球環境の歴史を振り返ると、約4000万年前に1000ppm以上あった大気中の二酸化炭素濃度は、珪藻類などの光合成によって約2600万年前までに現在と同程度の水準まで減少したとされています。しかし現在、化石燃料に由来する二酸化炭素排出量は陸上植物や海洋の固定化機能による吸収量を超えており、毎年約19Gtが大気に残留し続けています。
この課題に対し、マツダは排出量を相殺するカーボンニュートラルにとどまらず、二酸化炭素を大気中から減少させるカーボンネガティブを目標に据えました。マツダの上席執行役員である中井英二氏は、その背景について次のように述べています。
「地球規模で二酸化炭素の収支を見たときに、二酸化炭素濃度を現在と同じように維持しようとしても、カーボンニュートラルを達成するだけでは十分とは言えません。壮大な大自然の活動に対して、その循環の力の一端を助けていきたいという思いでカーボンニュートラル燃料などに取り組んでいます」
マツダは内燃機関の進化や電動化技術に加えて、サステオなどの次世代バイオ燃料を活用し、排出ガスから二酸化炭素を回収して固定化するマルチソリューション戦略を推進しています。
■排ガス利用の回収システム
大気から直接二酸化炭素を回収する手法(DAC)と比較した場合、ディーゼルエンジンの排気ガスは二酸化炭素濃度が約12%と高く、回収に必要なエネルギーを約4分の1に低減できると試算されています。
二酸化炭素を回収するための吸着剤には、金属有機錯体(MOF)やアミンといった候補がある中で、高温でも安定しており特性が明確に公開されている「ゼオライト13X」が選択。技術研究所研究長の原田雄司氏は、システムの具体的なメカニズムについて次のように説明しました。
「我々は二酸化炭素を回収する手段として、吸着剤を使った技術にチャレンジしています。今回は構造安定性が高く、特性がしっかり分かっているゼオライトに着目しました。吸着フェーズでは外気を導入して常温程度にコントロールし、脱離フェーズでは同じ経路に排気ガスを通し、150度まで吸着器の温度をコントロールします」
回収プロセスは単純な吸脱着にとどまりません。ゼオライトは水分も同時に吸着してしまう特性があるため、排気システムには気液分離器や除湿タンクが組み込まれています。
実際の行程は、専用の二酸化炭素センサーと電動コンプレッサによる流量および圧力制御を活用し、予冷、吸着、掃気、脱離の4つのサイクルを遷移させることで、回収量を最大化する工夫が施されています。

スーパー耐久シリーズにおいて、マツダは2021年からレース用ディーゼルエンジンの開発を進めてきました。2026年シーズンには、第3戦の富士24時間レースで、吸着と貯蔵のフル機能(ステップ1.5)を55号車(MAZDA3)に初投入する予定です。
ファクトリーモータースポーツ推進部部長の上杉康範氏は、レースにおける目標を次のように語りました。
「今シーズンは、二酸化炭素回収装置を搭載すると速くなるというところまでを目指したいと思っています。最終戦に向けてはレースカーとして短期間でもカーボンネガティブを達成するために、詳細なデータを取りながらロードマップを作っていきます」
実際の24時間レースでは、行程を遷移しながら回収を続け、ピットインのタイミングで二酸化炭素タンクを交換することで、回収量が右肩上がりになるようシミュレーションされています。
また、車両のリアウインドウには吸着や脱離などの作動状態を示すステータス表示が設けられ、サイドステップには回収量に応じて赤から青に色が変わるLEDインジケーターが配置されるなど、外部からもシステムの状態が把握できる仕組みが実装されます。
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車載タンクに回収された二酸化炭素は、水酸化カルシウムに吸収させて炭酸カルシウムとして取り出されます。将来的には、これをカーボンニュートラルなセメントやプラスチック、あるいは高価値な肥料などに再資源化して固定化する計画です。
2027年以降を見据えたステップ2では、相変化冷却(沸騰)を活用した伝熱促進によって吸着剤の冷却および加熱速度を高め、回収率を飛躍的に向上させる構想も明かされています。
また技術開発の推進と同時に、サーキットのイベント広場では一般来場者に向けた周知活動も実施されています。
上杉氏は、外部から見えにくい回収の仕組みを理解してもらうため、Apple Vision Proを利用してミクロの世界を体験できるように開発を行ったと述べており、参加者が二酸化炭素分子の視点になって循環の仕組みを疑似体験できるMR(複合現実)コンテンツが提供されています。
また、回収機能の仕組みを取り入れたラジコンカーの操作体験など、体験型のコミュニケーションを通じてカーボンネガティブ技術への理解を深める取り組みが継続されています。
Writer: くるまのニュース編集部
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