ラリージャパン5月開催の成果と課題 名古屋拡大で客層変化、母国・トヨタ上位独占の軌跡

WRC第7戦ラリージャパン2026が愛知・岐阜で開催されました。開催5年目を迎え、5月への日程変更や名古屋市へのエリア拡大など大会は新たなフェーズへ移行。太田実行委員長の話や現地取材から見えたイベント全体の進化と課題、そして母国での戦いとなったトヨタ陣営が上位を独占した競技を振り返ります。

ラリージャパン、5月開催と広域連携で新たな局面へ トヨタ陣営の戦いを振り返る

 2026年5月28日から31日、「フォーラムエイト・ラリージャパン2026」が開催されました。
 
 現在の体制で5年目となる今大会は、秋から初夏へ日程を変更。名古屋でのデモラン実施など、大会規模の拡大が図られています。
 
 この記事では、ラリージャパンの現状や課題を前半に、後半ではエルフィン・エバンス選手が制したトヨタ陣営の戦いを振り返ります。

開催5年目のラリージャパン2026はどうだったのか
開催5年目のラリージャパン2026はどうだったのか

 愛知県と岐阜県で開催されるラリージャパンは、現在の運営体制で5年目を迎えました。

 これまでは11月に行われてきましたが、今年から5月に日程を変更。太田豊田市長(大会実行委員長)によると、「秋の紅葉シーズンに発生する交通渋滞を回避し、新たな地域でのコース設定が可能になった」と振り返ります。

 また大会の規模も段階的な拡大を続けています。初期は豊田市や恵那市を中心とした範囲で開始されましたが、世界に向けて「JAPAN」を冠する大会として発信するため、大都市である名古屋市の参画を決定。

 5月28日の開幕日には名古屋市内でデモランが実施され、トヨタ自動車の豊田章男会長(モリゾウ氏)が走行を披露。大都市圏への展開は、新たな層へ競技を認知させる機会となっています。

 実際にデモラン直後の豊田章男会長は「今回、豊田市だけでなく名古屋市にも規模を広げてラリージャパンが開催されるということで、新しい方々にもラリーの熱を届けられるのではないかと期待しています」とコメントしていました。

初の名古屋市でもイベント開催! デモランやオープニングイベントが開催された
初の名古屋市でもイベント開催! デモランやオープニングイベントが開催された

 ラリージャパンは開催から5年が経過するなかで観客層にも変化の兆しがあり、かつては熱心なファンが中心でしたが、現在は女性や子どもの来場が増加し、シールを使った会場調査でも全国各地から観客が集まっていることが確認されています。

 またトップクラスで参戦する地元出身である勝田貴元選手の存在がメディアの関心を高め、幅広い層がラリーに興味を持つ契機に。競技区間として生活道路の移動制限を受け入れる地域住民の協力などもあり、今日まで続いています。

 大会の認知度が向上する一方で、現地取材や実行委員長の話からは運営面の課題も見えてきています。

 筆者が取材した新設の「藤岡SSS」では、観客席の一部に屋根が設けられ、アスファルト路面に特設ジャンプ台を設置。ラリーマシンの動きを視覚的に伝える工夫が機能していました。

 またデイ3の「三河湖ステージ」にも訪れましたが、道幅の狭い山道をラリーマシンが通過する様子は公道競技の特性を体感でき、他のサーキットで行われるレースとは異なる魅力を感じられました。

藤岡の緑化センター内を駆け抜けるスーパーSSがサンセットステージで初登場
藤岡の緑化センター内を駆け抜けるスーパーSSがサンセットステージで初登場

 一方で拠点となる「豊田スタジアム」の活用には検討の余地が残ります。

 初年度はスタジアム内でセレモニアルスタート(オープニングイベント)が開催。2年目、3年目はスタジアムに特設コースを配置して、360度から見られる施策もありましたが、これは高額な施工費などの面から現在ではなくなっており、現在ではスタジアム内での競技や観客向けの具体的なコンテンツが配置されていない状況です。

 そうしたなかでも、会場には多数の来場者がいたことには驚きました。しかし今後はこのファンの関心の高さを活かし、豊田スタジアムという空間をどのように発展させるかが課題とも言えます。

 また、開催地の大半が山間部であることから、施設面の制約も存在します。

 太田実行委員長は、4日間のイベントのために新たな宿泊施設を整備することは現実的ではないと説明。宿泊は近隣地域やキャンプ場を活用するなど、既存の資源による「自己対応」を基本方針としています。

 名古屋市へのエリア拡大は新規層の開拓に寄与する反面、豊田市や岐阜県を含めた地理的な距離の課題も。観客の移動や運営スケジュールなど、複数地域を結びつける円滑な運営体制の構築が焦点となります。

ラリージャパン2023の豊田スタジアム内の様子。特設コースが設けられ照明などの演出もり、まるでフェスのような盛り上がりだった
ラリージャパン2023の豊田スタジアム内の様子。特設コースが設けられ照明などの演出もり、まるでフェスのような盛り上がりだった

 現在のラリージャパンの開催契約は2028年までとなっており、それ以降の継続はプロモーターとの交渉次第とされています。

 豊田市内の7地区ではそれぞれが独自に企画を行い、事前知識がなくても参加しやすい空間づくりといった地域主体の運営が定着。

 2025年には約133億円の経済効果があったとされ、地域住民の意見を取り入れながら改善を図る方針です。

 各地域が自立して活動することは、地方創生や活性化に繋がることが見込まれています。来年以降はそこに名古屋市がどのように関わってくるのかにも注目です。

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