三菱自動車、「尖った商品」と技術力で攻める“新中長期ビジョン”を発表 26年秋には新型「パジェロ」復活! ブランド力強化で成長と構造転換目指す

三菱は2026年5月29日、2030年代に向けた新たな中長期ビジョンを発表しました。事業環境が目まぐるしく変化するなか、「尖った商品・ブランドの強化」を掲げ、持続的な成長と収益体質の強靭化を図ります。さらに、クロスカントリーSUV「パジェロ」を復活させ、2026年秋に世界初公開することも明らかにしました。同社の今後の戦略を紐解きます。

新たなビジョンは「尖った商品・ブランドの強化」

 三菱は2026年5月29日、2026年度から2030年代に向けた新中長期ビジョンを発表しました。

 現在の自動車産業を取り巻く事業環境は、地政学リスクの拡大や環境規制対応の見直しなど、不確実性が継続的に高まっている状況にあります。

 こうした背景のもと、三菱は従来の中期経営計画の単なる延長線にとどまることなく、より中長期的な方向性を明確に打ち出しました。

三菱自動車工業 代表執行役CEOの加藤隆雄氏
三菱自動車工業 代表執行役CEOの加藤隆雄氏

 会見にて登壇した代表執行役CEOの加藤隆雄氏は下記のように語ります。

「不確実性の高い需要環境が続く中、自動車業界はグローバルに次の数年で大きく変化すると考えています。したがって従来の中期計画の延長線ではなく、当社のアイデンティティを再定義し、抜本的な改革に向けた施策を明確にすることが重要と考えました。

 こういった議論を重ねた結果、2030年代に向けては成長戦略と構造転換を両輪として同時に推進していきます。

 成長ドライバーは、とがった商品力とブランドの強化です。三菱自動車らしさを体現する尖った商品、技術の投入、ブランド有利性の強化。そのように特徴を生かしたバリューチェーンにより需要拡大を図ります。

 一方で、構造転換として、コスト競争力の強化、損益分岐点の最適化、AI、DX活用による生産性向上を進め、収益体質そのものの変革を進めてまいります。成長戦略と構造改革の相乗効果により、環境変化に左右されにくい持続的成長可能な事業基盤の確立が可能と考えています」

成長の鍵を握る「アセアン」と「オフロード」

 成長戦略の具体的な内容として、三菱は自社のブランドを色濃く体現する商品および技術の強化に注力します。

 とくに商品戦略においては、自社の強みを最も発揮できる領域である「アセアン商品群」と「オフロード商品群」の2つに経営資源を集中させる方針です。

 この選択と集中の戦略のもと、2026年度から2031年度にかけてハイブリッド車(HEV)5車種とプラグインハイブリッド車(PHEV)5車種を含む全13車種を新たに市場へ投入する計画を明らかにしました。

2026年度〜2031年度に全13車種を投入する
2026年度〜2031年度に全13車種を投入する

 地域戦略としては、ブランドの優位性が高い市場への重点投資を行います。具体的には、現在成長が著しいフィリピンやベトナム、そして日本を重点国と位置付け、成長投資を優先的に配分していきます。

 一方で、市場ポテンシャルの高い中東や中南米などの地域については、三菱が長年培ってきたブランド力を活かしてさらなる事業育成を図っていく方針です。

 さらに、新車販売のみに依存するのではなく、中古車販売や販売金融、アフターサービス、用品といったバリューチェーン事業を拡充することで、クルマ1台当たりの収益力を最大化し、価値訴求の進化として「収益アップ戦略2.0」を推し進めます。

 これらの成長戦略を根底から支えるのが、収益体質の強化を狙う構造転換の取り組みです。

 新興メーカーの急速な台頭などに対抗するため、これまで45ヶ月を要していた車種の開発期間を、人工知能やデジタルトランスフォーメーションの活用により36ヶ月へと短縮し、市場のニーズ変化に対する対応力を劇的に高めます。

地域戦略
バリューチェーン戦略

「尖った技術」の進化と知能化・電動化へのアプローチ

 新中長期ビジョンにおいて、商品戦略を根底から支えるのが「ブランドを体現する技術戦略」です。自社らしい「尖った技術」に経営資源を集中させ、これまで培ってきた技術をさらに進化させる方針を打ち出しました。

 その中核をなすのが、「知能化への対応」と「電動化技術の進化」という2つの重要なアプローチです。

知能化・電動化へのアプローチ
知能化・電動化へのアプローチ

 まず「知能化への対応」については、自社の最大の強みである四輪制御技術と電動化技術をベースに据えています。

 そこに、部品メーカーとの共同開発によって高度なE/Eアーキテクチャ(電子プラットフォーム)や先進運転支援システム(ADAS)の技術を掛け合わせる戦略をとります。

 独自のハードウェア技術に最新の知能化技術を融合させることで、安全で快適、かつ三菱自動車らしい走りを実現する新時代のブランド技術へと進化させていく構えです。

 一方「電動化技術の進化」に関しては、プラグインハイブリッド車(PHEV)およびハイブリッド車(HEV)に特化したエンジンの自社開発に注力します。具体的には、世界トップクラスの熱効率48%を誇る超高効率エンジンの開発を進めています。

 この自社開発エンジンと、部品メーカーと共同開発する高効率なeアクスルを組み合わせることで、電動化システムの次世代化を図ります。

 これらの次世代ハイブリッドシステムを、堅牢なラダーフレームを採用するモデルも含めた、すべての電動車に搭載していく計画である点にも注目です。

 このように三菱はすべてを自社で抱え込むのではなく、自社のコア技術である「四輪制御」「電動化」「高効率エンジン」にリソースを集中させています。

 そして、急速に進化する知能化技術や電動駆動モジュールについては、有力な部品メーカーと戦略的に協業することで、効率的かつ確実に「尖った技術」を磨き上げ、唯一無二のブランド価値を創造していく方針です。

フラッグシップSUV「パジェロ」が7年ぶりに復活

 そして今回最も注目の発表と言えるのが、三菱を象徴するクロスカントリーSUV「パジェロ」の復活です。

 同社は、かねており登場を示唆していた新型クロスカントリーSUVの車名を正式にパジェロと決定し、2026年秋に世界初公開することを発表しました。

26年秋に「パジェロ」復活。シリーズで投入される
26年秋に「パジェロ」復活。シリーズで投入される

 パジェロは、1982年に初代モデルが発売されて以来、クロスカントリー4WDの優れた悪路走破性に加え、乗用車の快適性を融合させた当時の新しいRVの概念を確立したモデル。これまでに4世代にわたり世界170以上の国と地域で累計325万台以上を販売した歴史を持っています。

 また、世界で最も過酷なモータースポーツのひとつとされるダカールラリーにおいては、1983年からの参戦で7連覇を含む通算12勝を挙げ、比類なき操縦安定性と信頼耐久性を世界に証明してきました。

 日本国内においても1990年代のRVブームを強力に牽引し、アウトドアレジャー文化の普及に多大な貢献を果たしましたが、国内仕様は2019年に、海外向け仕様も2021年に惜しまれつつ生産を終了。

 国内市場では実に7年ぶりの復活となる新型パジェロは、極めて高い堅牢性を誇るピックアップトラック「トライトン」で採用されているラダーフレームをベースに改良が施されます。このラダーフレームを活用することから、生産はトライトンと同じくタイで行い、グローバルに供給されます。

 キャビンや前後のサスペンションなどをパジェロ専用に新規開発することで、伝統の卓越した悪路走破性はそのままに、現代にふさわしい上質かつ快適な乗り心地を実現するとしています。

 三菱の冒険心と挑戦心をふたたび体現する新たなるフラッグシップモデルとして、現在鋭意開発が進められており、今秋に発表予定となっています。

 加藤CEOは復活の経緯について下記のように語ります。

「パジェロは、販売終了後も復活を望む声が多くありました。我々としても改めて、商品ラインナップをお客様の希望に沿ったものにする必要があるのではないかと協議を重ね、今回パジェロとして復活させた方がよいだろうという判断をしました。

 我々のコアなファンには一旦離れられたお客様もいると思うので、その方たちに戻ってきてもらうために、また新たに興味持ってもらう方が増えることに期待しています」

 新型パジェロの投入は、先述のオフロード商品群の強化という成長戦略の核をなすものであり、将来に向けたパジェロのシリーズ展開も視野に入れられていることが示唆されています。

 資料ではパジェロとともによりサイズが小さな2台の車両シルエットが掲載されており「シリーズで投入」の文字が。また、今後投入予定の13車種には「スモールSUV」「コンパクトSUV」がラインナップされています。

「パジェロをフックとし、その下にシリーズとして最終的には進化・導入していく予定です。現時点では、コンパクトSUV、スモールSUVの展開が想定されるということになりますが、これから商品構造を固めていくところもありますので、決まり次第またお話ししたいと思います」(加藤CEO)

 さらに、この新型パジェロ投入を期に、ハイブランド旗艦店舗が新設されることも発表されました。フラッグシップカーにふさわしいサービスや店構えなど、特別感を提供できる店舗が必要との考えに至ったとのこと。

 また、バリューチェーンの強化も鑑み、オフロード商品群に合ったカスタマイズパーツなども揃えるような店舗演出も。

 地域や店舗数など詳細については現在検討中とのことで明らかにされませんでしたが、都市部を中心にトライアルを行って行きたいとしています。

1兆円規模の成長投資で持続的な企業価値の向上へ

 三菱は、これらの「成長戦略」と「構造転換」の両輪を着実に実行することで、野心的な財務目標の達成を目指します。具体的には、2029年度に営業利益1600億円、営業利益率4.5%、自己資本利益率であるROE10%を目標として掲げました。

 さらにその先の2030年度以降には、営業利益2000億円から2500億円、営業利益率5.5%以上、ROE12%以上という高い水準への到達を見据えています。安定的に確保できる水準への引き上げを目指します。

 成長を確かなものにするため、2029年度までの4年間で研究開発費や設備投資を含めて約1兆円という大規模な成長投資を重点分野に集中して実施します。

 あわせて、総額1000億円規模の株主還元を行うことも約束し、規律ある資本配分のもとで企業価値の最大化を図るとしています。

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Writer: くるまのニュース編集部

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