三菱が新「デリカD:5」の“中身”を大公開! 分解モデルで仕組みがまる分かり!? ランエボからAI活用の未来まで…三菱四駆「S-AWC」の歴史と進化とは 人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA

2026年5月27日に開幕した「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」にて、三菱自動車は独自の四輪制御技術「S-AWC」をテーマとして出展しました。大幅改良された新型「デリカD:5」の分解モデルを公開し、電動化や知能化を見据えた次世代の走りなども紹介。三菱が追求するクルマづくりの真髄とはどのようなものなのでしょうか。

ドアやバンパーがない! 「デリカD:5」の分解モデルに注目

 2026年5月27日、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」が開幕しました。同展は、国内外の自動車メーカー、部品サプライヤー、素材・化学メーカー、IT・ソフトウェア企業など500社以上が集まり、最新技術や製品を紹介する自動車技術展です。

 三菱は、「三菱自動車の走りを支える Super All Wheel Control」というテーマを掲げ出展。ブース内には、四輪制御技術の粋を集めた展示物が並んでいます。

 ひときわ目を引くのが、今年1月に大幅改良を施して発売された「デリカD:5」の分解展示モデル。

 フロントバンパーをカットしたり、助手席側ドア、右フェンダー、ボンネットなどを外してあるため、車両の内部構造を直接見ることが可能です。モデルの下には鏡が設置してあり、下回りをじっくり確認することもできました。

三菱 デリカ:D5の分解展示モデル(人とくるまのテクノロジー展2026)
三菱 デリカ:D5の分解展示モデル(人とくるまのテクノロジー展2026)

 加えて、技術を深く理解するための大型展示パネルも設置されています。

 パネルのテーマは多岐にわたり、三菱自動車の誇る四輪制御技術「Super All Wheel Control(S-AWC)」の分かりやすい解説をはじめ、1953年に登場した三菱ジープから最新車種へと至る四駆の歴史の系譜、同社の知能化技術への取り組み、そして唯一無二の走りを支えるデリカD:5の9つの要素について、それぞれ詳細に紹介されています。

パネル展示で三菱四駆の歴史や技術を解説
パネル展示で三菱四駆の歴史や技術を解説

 さらに、ブース内に設けられた講演ステージでは、開発フェローである澤瀬薫 博士や四輪制御技術エンジニアによる技術プレゼンテーションが会期中毎日実施されており、車両運動統合制御システムや「新型『デリカD:5』 歴代最強ミニバンの走りを支える技術」について、開発者から直接詳しい解説を聞くことができます。

 ブースの目玉であり、ステージ講演の主役の1つでもあるデリカD:5は、力強いスタイリングと走りをさらに進化させたモデルとして注目を集めています。

 エクステリアデザインには新たにホイールアーチモールなどが追加され、より力強さが増した外観へと変更されました。

 また、運転支援技術「e-Assist」の強化やフル液晶メーターの採用によって、安全性能や利便性が大きく向上している点も特徴です。

 そして何より、三菱自動車独自の四輪制御技術である「S-AWC」を新たに搭載したことで、さまざまな路面状況下における高い走破性と優れた操縦安定性を実現しました。

三菱 デリカ:D5の分解展示モデル
三菱 デリカ:D5の分解展示モデル

三菱・四輪制御技術の結晶「S-AWC」とは?

 今回の出展のメインテーマであり、三菱自動車が追求する走りの理想を体現したS-AWCは、長年にわたりモータースポーツや悪路走破の現場で培ってきた四輪制御技術の結晶です。

 その歴史は、2007年に販売を開始した「ランサーエボリューションX」への初搭載から始まりました。

 ランサーエボリューションXに搭載された初期のS-AWCは、サーキット走行やハイスピードなスポーツ走行において理想的な旋回性能とトラクションを発揮させるため、電子制御差動制限機構である「ACD(アクティブセンターディファレンシャル)」を四駆システムのベース(ハードウェア)として採用していました。

 このモータースポーツ直系の高度な制御思想とシステム構成の考え方は、その後の三菱自動車のクルマづくりへと脈々と受け継がれていくことになります。

 S-AWCのユニーク点として挙げられるのが、「あらゆる路面で誰もが安心して愉しく走れる」という制御の根本的な思想やシステムの枠組みを踏襲しながらも、前後輪間のトルク配分を担う4WDのハードウェアに関しては、それぞれのクルマが狙いとする走行環境やキャラクターに合わせて、異なる最適な方式を選択・採用していることです。

 例えば、プラグインハイブリッドSUVである「アウトランダーPHEV」においては、日常の市街地走行から舗装路での軽快なスポーツ走行、さらにはちょっとした悪路までをマルチにカバーすることが求められます。

 そのため、前後に独立したモーターを配置して高速・高精度な演算を行う「ツインモーター4WD」方式をS-AWCのベースとして採用し、理想的な前後駆動力配分を瞬時に実現しています。

各車種の想定走行環境に合わせて最適な4WDの方式を採用
各車種の想定走行環境に合わせて最適な4WDの方式を採用

 一方で、圧倒的な極悪路走行や過酷な環境への対応を想定して開発されたピックアップトラックの「トライトン」には、険しい泥濘路や岩場をも力強く踏破できるよう、三菱自動車伝統の堅牢なシステムである「スーパーセレクト4WD-II」をベースにしたS-AWCが組み込まれています。

 そして、日常のオンロードドライブからそこそこのオフロード(悪路)までを高い次元でこなし、家族を乗せてどんな天候でも安全に移動できる歴代最強ミニバン「デリカD:5」には、緻密なトルク制御によって安定性と曲がりやすさを両立させる「電子制御4WD」方式が選択されました。

 このように、サーキット、市街地、日常のオン・オフロード、そして極悪路に至るまで、各モデルの想定される走行環境に最も適した4WD方式をベースにしながら、一貫して「人の感覚に寄り添うシームレスな統合制御」を行うことで、三菱自動車独自の個性的な走りと安心感が作り上げられています。

三菱自動車工業 フェロー 博士(工学)の澤瀬薫氏

 澤瀬氏は三菱自動車が提供したいクルマの姿を、「一歩踏み出す勇気や新しいことへ挑戦する気持ちを後押しする相棒」とし、「どんな路面や天候であっても、初心者ドライバーからベテランドライバーまで、誰もが安全・安心・快適に自信を持って運転を愉しめる状態を提供することを目指しています」と語ります。

 例えば、キャンプ場内の急な坂道でタイヤが空転する不安や、スキー場に向かう雪道でクルマが滑りそうになる心配といった走破性の悪さによる挫折感を払拭します。

 また、高速道路の長距離走行でクルマがふらついて疲労が溜まったり、突風にあおられてヒヤリとしたりする直進安定性の課題を解決し、雨の高速や横風の中でもフラつかず快適なロングドライブを実現するといいます。

 さらに、高速道路のジャンクションで予想よりカーブがきつく驚いたり、山道走行でスムーズに走れずに同乗者が車酔いしてしまったりする操縦性の悪さを克服し、曲がりくねった道でも俊敏かつスムーズで安心できる走りを提供。

 澤瀬氏によれば、「これらの走破性、直進安定性、操縦性のすべてを、人の感覚に寄り添った制御でシームレスに向上させるのがS-AWCの真髄」とのことです。

 具体的には、ドライバーのステアリング、ブレーキ、アクセルといったインプット操作に対し、クルマの「走る・曲がる・止まる」というアウトプットの動きがピタリと追従するようにシームレスな連続制御を行います。

 一般的な制御システムでは、ドライバーの操作は連続していても、減速時、旋回時、加速時の制御が切り替わる際に断絶が生じることがあります。

 しかしS-AWCでは、これら3つの制御を滑らかにラップさせて連続させることで、常に緻密な制御を行いつつも、ドライバーにはその制御の介入を感じさせないほど自然なチューニングが施されています。これにより、ドライバーの操作に対するクルマの動きのレスポンスとリニアリティが飛躍的に向上します。

 また、四輪の前後力を自在に制御することで、横力も含めてすべてのタイヤの最大摩擦力をバランスよく活用する仕組みを持っています。

 路面摩擦係数と荷重から導き出されるタイヤ最大摩擦力の円の中で、前後輪間のトルク配分を担う「4WD」、左右輪間のトルク移動を行う「AYC」、そして四輪のブレーキ力を個別にコントロールする「ABS/ASC」という3種類のサブシステムを巧みに統合制御し、安定性を生み出しています。

3種類のサブシステムを統合制御するS-AWC
3種類のサブシステムを統合制御するS-AWC

電動化&知能化で、性能とサポート力の向上目指す

 三菱自動車は、このS-AWC技術を現在の水準に留めることなく、電動化技術と知能化技術の進化によってさらに高みへと引き上げようとしています。

 電動化の側面では、電動モーターの高応答・高精度・高自由度な特性を最大限に活かし、運転操作や路面・天候の変化に瞬時に対応することを目指しています。

 現在のアウトランダーPHEVに搭載されている「Twin Motor 4WD」による理想的な前後駆動力配分からさらに歩みを進め、将来的にはモーターの高速な演算・動作特性を活かしたデュアルモーターAYCや、トリプルモーター4WD、さらにはクアッドモーター4WDやインホイールモーターといった形への進化を見据えており、レスポンスとリニアリティのさらなる向上を計画しています。

S-AWC 電動化技術による進化
S-AWC 知能化技術による進化

 知能化技術の側面では、多様なセンシング情報とAIを組み合わせることで、路面状況や天候といった走行環境、車両の状態、さらにはドライバーのスキルや状態までも同定するシステムを構築します。

 これにより、現在の安心・快適な先進運転支援システム(ADAS)の枠を超え、ドライバーのレベルや状況にシステム側が自動で適合する「Auto Fit」機能の実現を目指しているとのこと。

 初心者でもベテランでも、あるいは疲労が溜まっている状態であっても、AIがそれらを感知し、誰もがどこでも最適なサポートを受けながら究極の走りを体感できる未来像を描いています。

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Writer: くるまのニュース編集部

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