新型車は魅力ない? 人気車はマンネリ化、古いモデルの販売が好調の理由とは

売れてるクルマが売れる時代

 こうなる理由は、まずクルマを実用的なツールとして購入するユーザーが増えたからです。冒頭で羅列した発売から4年以上を経過しても好調に売れ続ける車種は、大半が軽自動車/コンパクトカー/ミニバンという実用重視のカテゴリに含まれます。それ以外の売れ筋車種を見るとSUVが人気です。ボディの上側はワゴン風の形状ですから、後席も快適で荷物も積みやすく、実用重視に準じたカテゴリです。

ホンダ ヴェゼル

 実用重視の車種は、経済性にも配慮して選ばれるため、新型車が発売されても飛ぶように売れることはそうそうありません。愛車の車検期間が満了に近づいた段階で、購入条件が有利な決算期などに買われる傾向です。そうなると発売から時間が経過しても、売れ行きが下がりにくいのです。

 ユーザーの心理も、実用指向のクルマは新しさではなく用途に合っているから選ぶため、発売から時間が経過した車種を買うことに抵抗はありません。むしろ多くのユーザーが使う人気車では、膨大な販売実績が信頼感を高めます。「みんなが使っているから自分も買う」のは、日本的な付和雷同と受け取られやすいですが、クルマのような高額商品を選ぶ時の判断としては合理的です。

 その理由は、一般的なクルマの使われ方が、おおむねパターン化されているからです。「幼い子供が2人いる生活の中で、安全で便利に使える経済的なクルマが欲しい」というニーズであれば、使い方はどこの世帯でも大体同じです。

 そこで自分と同じような生活環境の人達が、どのようなクルマに乗っているのかを観察すると、N-BOXやタントといった軽自動車が目立ちます。親子で使っている様子を見ていると、そこに我が家の姿が重なり「これなら間違いないでしょう」と判断するのです。

 この消費行動のどこが悪いのでしょうか。給料が上がらないのに、住宅やクルマに費やすお金は年々高くなります。ムダなく安全に使いたいから、みんなと同じ商品を選ぶのです。

 販売の上位にランクされる人気車からは、このような日本のユーザーの消費をめぐる気持ちと、その行動が読み取れます。そして日本の人達の生活を本当に考えて開発されたクルマが少ないため、一部の車種だけが好調に売れ続ける状況になりました。

 問題はこの点にあります。自動車メーカーが、今の国内の消費動向に安住しているのです。かつてはセダンやクーペも含めて、いろいろなカテゴリの車種が、それぞれに合った日本のユーザーを想定しながら開発されていました。それが今では実用重視の軽自動車/コンパクトカー/ミニバンになったので、売れ筋車種も凝り固まっています。販売会社のキャンペーンも、これら実用重視の車種が中心です。

 セダンやクーペは海外向けに開発され、日本のユーザーにとっては違和感が伴うために、売れ行きを発売当初から低迷させます。そうなるとセダンやクーペは、海外向けに開発された国産車ではなく、本家本元ともいえる輸入車を選ぶのは当然でしょう。最近は、輸入セダンの売れ行きが伸びました。

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