トランプ政権に振り回されっぱなしの自動車産業、どうなる? ホンダを含めてEV戦略の大幅見直し… 日本市場への影響は?
米環境保護庁による温室効果ガスの危険性認定撤回で、EVシフトへの逆風が一層強まっています。トランプ政権の政策転換を受け、ホンダもEV戦略の軌道修正を表明。2026年は日本でも新型EVが続々登場しますが、米国の量産効果減による価格戦略への影響や、市場の冷え込みが日本へ波及する懸念も高まっています。
米「危険性認定」撤回で強まるEV逆風 ホンダの戦略修正と日本市場への懸念
トランプ関税の影響で大きく揺れ動いた世界の自動車産業。
今度は、排ガス規制に関するトランプ政権の判断が波紋を広げています。
ざっくり言えば、EVシフトへの逆風が強くなりました。これは日本市場にどんな影響があるのでしょうか。

アメリカの環境保護庁(EPA)が2026年2月13日、2009年のオバマ政権で下された温室効果ガスにおける危険性認定を撤回すると発表。
この認定とは、大気浄化法に関連した温室効果ガスの影響を精査し、自動車から排出されるCO2等の温室効果ガスが経済や政策に影響を及ぼすと結論付けたものでした。
認定そのものについて、トランプ政権は「根拠がない」と断定。昨年7月から認定の撤回案についてパブリックコメントを実施し、今回の認定撤回の発表に至りました。
要するに、EV(電気自動車)など次世代車に注力し過ぎたこれまでの政策を抜本的に見直すということです。
オバマ政権当時を振り返ってみると、アメリカは世界に先駆けて環境規制に大きく舵を切り、次世代環境産業の国際競争力強化を推し進めました。
EVなどの次世代環境車の研究開発や製造、また太陽光パネルを活用した再生可能エネルギー事業に対して連邦政府として積極的な財政支援を展開。
当時、米エネルギー省ではアメリカ国内で次世代環境車の製造を行う企業に対して10年間の低利子融資を行い、この制度を活用したテスラが「モデルS」製造に向けた事業基盤を確立させたのです。
そのほか、リチウムイオン電池やモーター・インバーターなどについての技術開発に関する数兆円規模の補助金を米エネルギー省が予算組みし、環境関連投資を後押ししたのです。
こうした各種補助事業の現場を全米各地で取材したところ、そのいくつかは事業計画が脆弱でその後に事業を精算するケースもあったことを思い出します。

その後、2015年のCOP21(国連気候変動枠組み条約 第21回締約国会議)で採択されたパリ協定がきっかけとなりグローバルで環境関連投資が急速に高まりました。その一環として、EVシフトが一気に進みます。
ところが、第1次トランプ政権の2020年11月にパリ協定から離脱するも翌年2月にはバイデン政権が復帰し、さらに第2次トランプ政権が発足した2025年1月に再度離脱するという、政策方針の転換を繰り返してきました。
2025年にはバイデン政権が推進してきたIRA(インフレ抑制法)に基づくEV購入に対する最大7500ドルの税額控除も撤廃したことで、アメリカでのEV販売に逆風が吹きます。
今回の「危険性認定の撤回」は、こうした一連の流れの中では十分に予想できたと言えるでしょう。
さらに「危険性認定の撤回」に関連して、CAFE(企業別平均燃費基準)ついての規制も見直すことになります。
CAFEは自動車メーカーそれぞれがアメリカで販売している全車種の平均燃費で、連邦政府が定める既定値以下とすることを義務化してきました。
その中で、EVについてはガソリン車に対して環境性能が良いと判断した係数を用いた優遇措置を講じています。
自動車メーカーとしては、アメリカで売れ筋の大型SUVとピックアップトラックでエンジンのダウンサイジングやハイブリッド化を導入したり、EVの積極的な導入をするなどしてCAFE対策を考慮してきたところです。
そうした事業戦略を、CAFEにおけるEV優遇措置の廃止によって自動車メーカーとして変更せざるを得ない状況です。
むろん、今後トランプ政権が終わり、連邦政府の環境政策の揺り戻しがくる可能性も否定できないでしょう。
それでも自動車メーカーとしては、短期、中期、そして長期というそれぞれの視点でアメリカでの次世代車開発と量産化の計画に向き合わなければなりません。

例えば、日本メーカーではホンダがEV戦略を軌道修正します。
2月10日に実施した、2026年3月期 第3四半期決算説明会で、同期の連結業績見通しの中で「事業環境変化を踏まえて経営の方向性」を提示。
具体的には、EV市場の成長鈍化と各国での環境規制緩和の動きを受けて、「EV市場動向に合わせた迅速な事業判断とモデルラインアップの選択と集中」を行います。
詳細については今後、中期経営計画などの中で説明があると思われますが、例えば北米市場ではGMとのEV協業体制の縮小に着手しています。
ホンダは2022年時点で、2027年以降はGMとの連携を深めて数百万台規模でEVをアメリカ国内で生産する計画でした。
また、中国市場では中国地場メーカーが戦略的な価格設定を武器にEV市場の拡大を進める中、ホンダは中国でのEV戦略を「白紙に戻す」(貝原副社長)という厳しい状況に追い込まれている状況です。

このように海外でEVへの逆風が強まる中、日本では2026年に様々なEVが発売されたり、本格的なデリバリーが始まります。
例えば、第3世代となった日産「リーフ」、インド生産のスズキ「eビターラ」、トヨタ・ダイハツは「軽商用EV」、スバル「トレイルシーカー」日本仕様は春頃発表。
そして中国BYDが日本市場向けに専用開発した軽EV「RACCO(ラッコ)」が夏頃に正式発表の予定です。
日本導入の一部モデルには、アメリカ市場向けもあるため、日本に比べてEV市場が拡大しているアメリカでの量産効果が下がることで、日本仕様で戦略的な価格が設定しずらくなるかもしれません。
また、風評被害についても注意しなければならないでしょう。
確かに、欧米ではEVに対する逆風が強く「EVは踊り場」という状況にあることは間違いありませんが、EV普及の進み方は国や地域の社会事情によって異なります。
その上で、日本市場でも日米欧中の各種EVモデルが増えたにもかかわらずEV普及率が伸び悩んでいることも確かですが、これはトランプ政権によるEV関連政策による影響ではなく、あくまでも日本市場でEV普及に向けた課題がまだ解決しきれていないことが原因です。
2025年時点でEV普及率はアメリカが7.8%に対して日本は1.57%にとどまっています。
なかなか普及の先行きが見えてこないグローバルでのEV市場。
日本でのEV普及戦略について今後、自動車業界全体での議論が進むことを期待したいと思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。























































