ヤマハ「“和製”スーパーカー」が凄かった! 全長4m切り「めちゃ軽量ボディ」の「2人乗りマシン」! 「YZF顔」採用の「スポーツライドコンセプト」2015年登場モデルを振り返る
二輪メーカーのヤマハが目指したスポーツカー「Sports Ride Concept(スポーツライドコンセプト)」を振り返ります。
夢物語で終わった二輪メーカーの挑戦
国内外で開催されるモーターショーでは、発売予定の新型車のほか、新時代の到来を示唆する意欲的なコンセプトカーも披露されます。
ただし、そうしたコンセプトカーのなかには、市販に向けて熱い視線が注がれるも、残念ながら市販に至らなかったモデルがあります。
そのひとつが、ヤマハが発表した「Sports Ride Concept(スポーツライドコンセプト)」です。「バイクメーカーが創った、750kgのカーボン製スポーツカー」という衝撃的なコンセプトは、当時多くの自動車ファンの心を掴みました。
現在では二輪メーカーとして世界的に知られることになったヤマハですが、四輪車に対しても意欲的でした。
それは単に四輪メーカーへのエンジンの提供だけでなく、ヤマハらしい具体的な四輪車像を示したものも、数多く登場していたのです。
1992年にはF1由来のV型12気筒エンジンを搭載した試作スポーツカー「OX99-11」を発表。市販化を目指していましたが、開発の遅れと当時の経済危機により1993年に計画がキャンセルされた経緯があります。
それから20年以上の歳月を経て、2015年10月に開催された「第44回東京モーターショー2015」でも、再び四輪コンセプトカーを公開。これがスポーツライドコンセプトでした。
二輪車製造を主業とするヤマハから、このような完成度の高い本格スポーツカーが登場したことは、国内外のメディアや自動車愛好家から「最高のサプライズの一つ」として高く評価されました。
内外装のクオリティは「このまま市販されてもおかしくない」と称賛され、ショーの主役として大きな注目を集めたのです。
このクルマはヤマハが掲げた「もしヤマハが、スポーツカーを創ったら」という挑戦的なテーマを具現化したモデルでした。

ヤマハは前回2013年の「第43回東京モーターショー2013」でもシティコミューター「MOTIV(モティフ)」を発表しており、スポーツライドコンセプトはそれに続く本格的な四輪コンセプトカーの第2弾となります。
根底には、ヤマハの二輪車デザインに共通する「エレメンタリズム」という哲学がありました。これは各部品が独立した造形美を持ちながらも全体として調和し、二輪車特有の「人機官能」という体験を四輪でも実現しようとする考え方です。
大胆な哲学を現実に近づけたのが、F1デザイナーとして名高いゴードン・マレー氏が開発した革新的な製造プロセス「iStream(アイストリーム)」でした。
スポーツライドコンセプトの核である「iStream Carbon」構造は、2枚のカーボンスキンの間にハニカムコアをサンドイッチした複合パネルによるモノコックで、従来の量産手法では難しかった「超軽量かつ高剛性」を実現したのです。
その結果、車両重量はわずか750kgという、当時の軽自動車に匹敵する驚異的な数値が達成されました。ボディサイズは全長3900mm×全幅1720mm×全高1170mmというコンパクトでワイド&ローな、古典的スポーツカーのプロポーションを持っていました。
エクステリアには、ヤマハのフラッグシップスーパースポーツバイク「YZF-R1」を想起させるシャープなLEDヘッドライトや、スポーツバイクの意匠を色濃く反映したセンター出しマフラーが採用されていました。
インテリアは厳格な2シーターレイアウトとなっており、カーボンやアルミ、サドルブラウンのレザーを効果的に配置することで、機能性と工芸品レベルの高級感を両立させていました。
特に注目すべきは、シート後方の構造部材にヤマハの楽器製造部門が手掛けた木製パネルが組み込まれていた点です。
駆動方式は後輪駆動(RWD)と示されていた一方、エンジン搭載位置については公式な情報が明らかにされませんでした。
センター出しマフラーの造形や俊敏性を志向するコンセプトからミッドシップ(MR)説がある一方で、フロントエンジン(FR)説を指摘する見方もありました。
いずれにしても、750kgという軽さを中心に、絶対的なパワーよりもドライバーとマシンの一体感を追求する「ライトウェイト哲学」が貫かれていたといえるでしょう。
しかし、これほど完成度の高いクルマが市販化されることはありませんでした。2019年に、四輪車開発プロジェクトを断念したためです。
競争の激しい市場、特にスポーツカー領域で「投資に見合うリターンが見込めない」という経営判断がその背景にあったとされています。
最も大きな要因として指摘されているのが、革新的な「iStream Carbon」を量産化するための巨額の設備投資と、それに見合う販売台数を確保することの難しさでした。
ただ、その情熱と技術が無駄になったわけではありません。
当時、他社スポーツカーへの波及が噂されたものの、直接的な影響を示す明確な情報は確認されていません。しかし技術的な遺産は、開発パートナーであったゴードン・マレー氏が設立した自動車ブランド「ゴードン・マレー・オートモーティブ(GMA)」に継承されました。
iStream Carbonで培われた技術や思想は、後に開発された「T.50」や「T.33」といった超高性能スーパーカーの基盤となったのです。
スポーツライドコンセプトは市場に登場することはなかったものの、純然たる日本メーカーの、しかも二輪車として絶大な支持を得ているヤマハが為し得た「幻の物語」として、現在もなお語り継がれる存在となっています。
Writer: くるまのニュース編集部
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