ダカールラリー2024直前!「ランクル300」で市販車部門11連覇を狙うTLCとその走りを支えるトーヨータイヤの挑戦とは【PR】
2024年1月5日から19日まで、サウジアラビアで開催される「ダカールラリー2024」。トヨタ車体の「チームランドクルーザー・トヨタオートボデー(TLC)」は、前回に引き続きトヨタ「ランドクルーザー300」で参戦、市販車部門11連覇を目指します。その走りを支えるのはトーヨータイヤ「OPEN COUNTRY M/T-R」。その開発者に話を聞きました。
世界一過酷なモータースポーツ「ダカールラリー」に挑戦し続ける意義とは
トーヨータイヤは2021年、「ダカールラリー」に出走を続けるトヨタ車体「チームランドクルーザー・トヨタオートボデー(以下、TLC)」のサポートを開始。専用開発のタイヤ「OPEN COUNTRY M/T-R」で、「ダカールラリー2022」および「ダカールラリー2023」の市販車部門優勝に貢献しました。
トーヨータイヤ技術開発本部OEタイヤ開発部で「OPEN COUNTRY M/T-R」の開発を手がける松原圭佑氏は、参戦に至るまでの経緯を以下のように振り返ります。
「タイヤ供給を前提とした調整は2020年春にはじまりました。そして参戦が決まった段階で関係部署を横断した社内プロジェクトチームが発足、タイヤの開発もスタートしました。最初に感じたのは、TLCがそれまでに成し遂げてきた『ダカールラリー市販車部門連覇』の重みです。これを途切れさせるわけにはいかないという思いで、正直、大きなプレッシャーでもありました」(松原氏)
開発にあたっては、当時装着していた他社のタイヤをベンチマークとしたそうです。
「当社の北米販売会社を通じ、メキシコで開催されるオフロードレース『BAJA 1000(以下、バハ)』に参戦しており、開発にあたってはそのレースで培った技術をベースに、2021年まで装着していたタイヤを上回る耐久性、耐パンク性、走破性を目指しました。
ただ、なによりも苦労したのは、ダカールラリーが行われるサウジアラビアの砂漠を想定したテスト環境がなかったことです。サウジアラビアの砂漠は非常に細かい砂が特徴ですが、バハは固いダートですし、国内にもサウジアラビアに似た環境はありませんでした。現地で確認しようにも、サウジアラビアは一般人の入国が厳しく規制されている上、当時はコロナ禍が全世界に拡大し、国境を越えた自由な往来も困難でした」(松原氏)
唯一、近い環境に触れることができるはずの機会も、コロナ禍により十分な成果を得ることはできませんでした。
「2022年からの参戦に向け、前哨戦となる『モロッコラリー2021』に帯同しました。しかしコロナ禍によりスタッフはビバーク(ラリーのステージが終了し、次のステージのスタートまでに止まる停泊地)から外に出ることは許されず、砂漠そのものを見ることもできなかったのです」(松原氏)
そうした状況で、開発の大きな助けとなったのが、トヨタ車体社員であり、ドライバーとしてダカールラリーを戦っている、三浦 昂選手の存在でした。
「OPEN COUNTRY M/T-Rの開発は、兵庫県伊丹市のトーヨータイヤ本社に隣接するタイヤ技術センターで進められました。目標とする性能に向け設計し、各種シミュレーターでその性能を確かめ、その上で試作品を実際に作り、試験機で台上試験を行い、想定通りになっているかどうかを確認します。その後、タイヤを当時の競技車両であるランドクルーザー200(以下、200系ランクル)に装着し、国内のオフロードコースで三浦選手に評価してもらうという流れです。この実走テストで、三浦選手から『これなら大丈夫だろう』というコメントが得られたときは、本当に安堵(あんど)しました」(松原氏)
ダカールラリー2022ではサイド部分が損傷する予想外の事態に
そして年が明けて2022年。トーヨータイヤのダカールラリー2022への挑戦がはじまります。
「サウジアラビアに着き、砂漠に足を踏み入れたとき、想像以上の砂の細かさには驚くしかありませんでした。靴は砂の中にするすると潜るし、両手で砂をすくい取っても指の間から抜けるように落ちていくんです。
こうした現地のコンディションがわからないまま、手探りでの開発でしたが、シミュレーションや台上試験が奏功し、結果としては狙った性能を出せたと思います。タイムロスの大きな原因となるパンクの回数も前年に比べ減らすことができましたし、走破性についても三浦選手から高い評価をもらうことができました。そして『市販車部門9連覇』も達成し、TLCとともに喜びを分かち合うことができました」(松原氏)
しかし唯一予想外だったのは、ステージ途中に起きたタイヤの損傷でした。
「タイヤのサイド部分が破断して、最悪の場合、トレッドがサイド部分から欠落することもあったんです。現地では持ち込んだタイヤでなんとかするしかないので、原因の詳しい究明はラリーを終え、帰国してからとなりました」(松原氏)
詳しい調査の結果、トラブルの原因には、年々難度を増すダカールラリーのコース設定が大きくかかわっていると判明しました。
「通常のSUVの場合、車種にもよりますが、空気圧は230kPa(キロパスカル)前後が指定されています。しかしラリーで砂の上を走るとき、より大きなトラクションを稼ぐため、空気圧を落とすことが一般的です。タイヤ開発にあたり、厳しいステージでは超低内圧で走行することを想定して設計していました。しかし実戦では想定よりもさらに低い空気圧での走行を余儀なくされることが多く、それがサイド部分の想定以上のたわみと過熱につながっていたのです」(松原氏)
開発チームはこの反省から、ダカールラリー2023に向けて、さらに低い空気圧にも対応できる設計へと変更しました。