ダカールラリー2024に向けてモロッコで初テスト! トヨタ「ランクル300」の仕上がりと“世界一過酷なラリー”に挑むタイヤとは【PR】
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もうひとつの大きなテーマであるタイヤについて、サポートするトーヨータイヤは、ダカール2023で使ったタイヤ(2023スペック)に加え、ダカール2024向けに改良した3つのタイプのテストタイヤを用意しました。
「新しいタイヤをテストするとき、通常はまず『このタイヤはこんな特性を持っている』というブリーフィングが行われるんですが、先入観なしに試してみたかったので、ブリーフィングなしに乗ってみることにしました。1セット目は2023スペックよりもタイヤの軽さを感じ、加速のツキもよかったんですが、『本命はまだあとに控えてるんだろう』となんとなく思ったんですよね(笑)。そして2セット目はドンピシャの性能、3セット目はそれよりちょっと柔らかいかなという感じでした。どのタイヤも、ベース車両の性能アップにしっかりマッチしている、うまく行き過ぎかなと思ったくらいです」
ただ三浦選手の判断は、長丁場のラリーという環境では、2セット目は必ずしも“ベストマッチ”ではない、というものでした。
「オフロードのラリーでは、タイヤとサスペンションが適切に働くことで、ボディへの衝撃を和らげ、ハイペースでの走行と耐久性を両立します。理想型はショックアブソーバーがきちんと働ける剛性を持つタイヤで、今回の2セット目の特性はそれに近いものでした。
ただ市販車部門では太いショックアブソーバー、つまり内部に十分なオイル量のあるアフターパーツが使えないため、ショックアブソーバーの“働き過ぎ”は、オイルの過熱につながり、減衰力が低下してしまうんです。
そこでタイヤの“たわみ”に頑張ってもらうことにして、現段階では3セット目を本番用に想定しています。ダカール2023では、石や段差で強い入力がかかったときにタイヤがたわみすぎ、リムがヒットしてパンクすることがあったんです。今回、その対応も進めつつ、軽く、また適度なたわみを持つタイヤをしっかり作ってくれたトーヨータイヤさんには、感謝です」
しかしタイヤを軽くしながら適度なたわみと剛性を両立するには、どういう工夫があったのでしょうか。トーヨータイヤの技術開発本部OEタイヤ開発部の松原圭佑氏は、その仕組みを以下のように語ります。
「トレッド面を薄くして、溝も浅くしているんです。このアイデアは200系ランクルで参戦しているときから温めていたものなんですが、300系ランクルになり車重が軽くなったことで、採用してみようということになりました。三浦選手から高評価をいただき、うれしく思います」
そしてこの浅溝化で、走破性にも大きなメリットがあると、三浦選手は感じています。
「サウジアラビアでのダカール2023は柔らかい砂のステージが大半を占めました。今回のテストで砂地での性能にも手応えを感じたことから、ダカール2024で大きな武器になると思っています」
なお松原氏によると、2024スペックは性能の向上だけでなく、サステナブルな観点から、植物など自然由来の素材をこれまで以上に採用しているとのことです。
「基本的なテーマは“脱石油”です。そうした自然由来の素材が過酷なラリーステージで十分な耐久性を持っているのかどうか、そこも今回のテストに持ち込んだタイヤでの大きなポイントでした」
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なお今回のモロッコでのテストの直前、TLCは悲報に包まれました。ダカール2023をはじめ、長きにわたり三浦選手のパートナーを務めたローラン・リシトロイシター選手が、プライベートで参戦していた同じモロッコで行われたラリーで不慮の事故に遭い、命を落としたのです。
「彼は『一介のサラリーマンをダカールに出すってプロジェクト、エキサイティングじゃないか』と、TLCに加わったメンバーでした。
それ以前、自分がナビゲーターをしていた時期から、同じナビゲーターとして知り合いだったんですが、同じチームでドライバーとナビゲーターとして組むことに、不思議な縁を感じていたんです。そして私にとってはこれまで、ローランありきのダカールでした。ダカール2023のゴール後に彼は『来年はプロフェッショナルな仕事をしような!』と、初日に転倒という素人みたいなミスをした私に、ねぎらいともからかいとも思える言葉をかけてくれて、互いに笑って別れたんです。本当に残念です」
最後に三浦選手にダカール2024に向けての展望をうかがいました。
「クルマの改良も進んでいますし、タイヤの性能も大きく向上しました。まず目指すのは“本当の完走”で、きちんと走ることができたら、クラス優勝、そして総合も前回以上の順位が見えてくると思ってます。私自身については、ダカール2023での初日のミスをあらためて反省し、今回は乗る前の準備、走行中の運転への集中など、基本への立ち返りを心がけています。ダカール2024では最終日まで走りきり、ローランに『ちゃんと約束を守ったよ』と伝えたいですね」