ダカールラリーで市販車部門優勝! ラストランの「ランクル200」 9連覇の偉業を支えたタイヤとは【PR】
トーヨータイヤとの初タッグが新たな可能性をも生み出した
三浦選手がドライバーとして参戦するようになって7回目の今大会となったわけですが、その感想を聞いたところ、印象的な言葉が返ってきました。
「こんなに楽しかったラリーはないというほど、充実した大会でしたね。その理由というのは、リップサービスでも何でもなくて、タイヤなんです」。
じつはTLCがダカールラリー2022へ出場するにあたり、ふたつのファクターから総合上位が狙えるのではないかと言われていました。
そのひとつが、マシンの熟成度です。2009年大会以来、14度目のチャレンジとなるランドクルーザー200ですが、今大会でいよいよ引退の花道。熟成に熟成を重ねて、今回はわずかな改善で済むほどの完成度に達していたといいます。
そしてふたつめのファクターは、トーヨータイヤという新たなパートナーが加わったことです。
三浦選手らドライバーが感じていた従来のタイヤにおける弱点やリクエストを、同社の開発スタッフが念入りにリサーチして、約2年の歳月をかけて新たに「オープンカントリーM/T-R」を開発。その性能の高さが今回の戦いを有利に運んだと、三浦選手は強調します。
「今までの大会は、タイヤの限界に合わせて走っている場面がありました。これ以上はパンクするなとか、リム落ちするな…と。でも、オープンカントリーM/T-Rは、ダカール前哨戦のモロッコラリーで、“今回のタイヤはイケるぞ!”という確信があったので、タイヤの限界を気にすることなく、ランドクルーザーのポテンシャルを引き出すことに注力できました」。
オープンカントリーM/T-Rの開発にあたり、スタッフがとくに注力したポイントは、砂路面において、高い空気圧で優れたトラクション性能を発揮するということ。
「このタイヤのおかげで、走り方そのものが変わりました。無茶はしないまでも、従来はアクセルを閉じていたような場所で、積極的にアクセルを開けることができるようになりました。実際、データログを確認してみたら、毎日どんどんアクセル開度が大きくなっていたんです」。
チームに帯同したトーヨータイヤ開発スタッフの松原圭佑さんによれば、今大会でパンクしたタイヤの数は2台でわずか15本だったといいます。
サイドの剛性やトレッド面の耐久性においてまだ改善の余地がある、と松原さんは話しますが、あれだけ過酷なラリーにおいて、この数字は驚くほど少ないといえます。
優れたタイヤ性能がドライバーに大きな精神的余裕を与えましたが、それでも競技中の三浦さんは、次なる高みを常に意識していたといいます。
「タイヤの性能が良くなったからといってこれに甘んじてはいけないと。だから、ラリー中はやったことのないことにトライすることを常に念頭において走っていました」。
ランドクルーザー200の熟成、トーヨータイヤとの新たなコラボレーション、そして245号車のドライバー、ロナルド・バソ選手やメカニックとのチームワークが三位一体となって掴んだ、今回のクラス優勝9連覇。来年はいよいよ新型ランドクルーザー300にマシンが代わり、10連覇という偉業に向け新たなチャレンジが始まります。
三浦選手は「次回も開催地として選ばれることが濃厚なサウジアラビアは、グラベルの下に堅い岩盤があることが多く、そこに入ると急激にタイヤに荷重がかかってしまいます。そこでスローパンクのようなトラブルが起きていたので、さらにタイヤの剛性を高めることで対策できるのではと、トーヨータイヤの松原さんと話していました。
もちろん、そうしたトラブルを避ける自分のドライビングテクニックも磨かなければいけないですが、2週間ノートラブルということはあり得ませんから、やはりタイヤに助けてもらう部分があります。
ドライビングでどこまでやって、タイヤ側でどこまでカバーしてもらうかという情報共有を、タイヤのエンジニアさんとこれまで以上にしていかないと、次のレベルには達せないのかなと思います」と語ります。
改造車クラスの性能が著しく向上しているダカールラリーにおいて、ユーザーが乗るものと同じ市販車での出場にこだわり続けるTLC。街を走るランドクルーザーがさらにどこまで戦えるのか、三浦選手、オープンカントリーM/T-Rが次はどんな夢を見せてくれるのか。
Writer: 山崎友貴
自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。