新型「SUBARU BRZ」この車に2代目のジンクスはない! 先代からの進化点をサーキットで徹底検証【PR】
重量は初代同等のまま剛性が大幅アップし、足周りも強化された
プラットフォームの基本構造と言う意味では初代を継承していますが、その中身は「インナーフレーム構造」、「構造用接着剤」、「リアスタビライザーボディ直付け」などSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)で採用された技術が盛り込まれた進化版で、初代に対して「フロント曲げ剛性約60%アップ」や「ねじり剛性約50%アップ」を実現しています。
剛性アップを喜ぶ一方で、「重くなるのは勘弁」と言う意見もありますが、そこに関しても新型は抜かりなしです。ルーフ/エンジンフード/フロントフェンダーなどにアルミ素材の使用やスチール素材の薄肉化、更に細かい部品の見直しなどにより、初代よりも厳しい衝突安全性能(スモールオーバーラップ)をクリアしながら初代同等の車両重量を実現しています(実際の軽量化分は75kg相当)。
加えて、前後のみならず左右の重量配分の適正化や初代で大きくアピールしていた重心高も更に5mm下げられています。もちろん、体幹を大きく鍛えた車体に対して、サスペンションのセットアップも全面的に見直されています。タイヤもベーシックな「R」グレードには215/45R17のミシュラン・プライマシーHP、上級の「S」グレードには215/45R18のミシュラン・パイロットスポーツ4が奢られています。
コーナーを一つ曲がるだけでわかる 初代との圧倒的な違い
実際の2代目SUBARU BRZですが、その進化は走り始めた瞬間から実感できるレベルです。
大きく改良されたシフトはもちろん、初代から大きく変わっていないはずのステアリング系やペダル周りのシッカリ感に驚きます。これは車体……特にバルクヘッド周りの剛性アップが効いていると言います。
シートも同様でホールド性やフィット感の向上だけでなくフレーム剛性も高められたことで、操作系の信頼がアップ。より正確な運転環境になったように感じました。
ハンドリングはコーナーを一つ曲がるだけで誰でも解るレベルです。ステアリングを切ると、直結感(タイヤの情報がより伝わりやすい)が増している上に引っ掛かりのない滑かでスムーズな操舵フィールに驚きます。後述で補足しますが、これは初代とは明らかに異なる部分でした。
ボディは絶対的な剛性の高さはもちろんですが、初代で感じた「どこか緩さが残る」がない上に、操作してからの応答性の高さやフロントからリアにかけて伝わる力の連続性など、ノーマルの時点で量産の粋を超えて手が加えられたSTIコンプリートカーを超える「強靭でしなやか」なボディに仕上がっています。
車体がいいとサスペンションはよりいい仕事をしてくれます。具体的にはより粘りを増したリアのスタビリティとノーズがシッカリと入るフロントの応答性の良さ、そして新たに採用されたミシュラン・パイロットスポーツ4のグリップの高さも相まって、まるでトレッドが拡大されたかのような安定したコーナリングが可能です。
更に凹凸のある路面でも軽やか&スムーズに路面を捉える足さばきの良さは、サスペンションチューニングだけでなくSUBARU BRZ専用のアルミ製ナックルなどによるバネ下重量の軽減も効いているはずです。
まるでAWDのような安定性だが、走らせ方次第で自由自在にも扱える
味付けの部分は初代の旨みである「自在性」や「コントロールする楽しさ」はシッカリと継承しながらも、新たな走りのステージに進んだように感じました。
具体的にはコーナリング時の一連のクルマの動きの「連続性の高さ」で、まるでAWD車のような滑らかな動きに驚きます。
ただ、洗練=牙を抜かれたのではなく、むしろハンドリングはより精緻になっています。つまり、過度な部分がなくなった事で、更に細かい操作が可能な上にその際にも無駄な動きが少なく、結果としてコントロール性も高められています。ちなみに“クルマなり”に走らせると、初代よりも格段に増したスタビリティの高さが印象的で、予期せぬアンダー/オーバーステアが出にくい安定感を持っています。
特にタイヤが滑るか滑らないかのギリギリの領域でのリアの粘りや、タイトコーナーでアクセルを踏んだ時にグッとリアが沈んでトラクションがシッカリ路面に伝わる安心感などは、初代とは雲泥の差となっています。
これだけ言うと「新型は安定方向に振ったのね」と思われがちですが、それは半分正解で半分間違いです。
確かにクルマなりに走らせると安定方向に感じますが、ドライバーがクルマにその意思(=荷重移動)をシッカリ伝えるとドリフトも自由自在。ちなみにドリフト時もクルマの挙動が安定している上にクルマの動きも解りやすいのと、初代のようにスライドしたら横に流れっぱなしではなくシッカリとトラクションが掛かり前へ前へと進む速いドリフトも可能です。
更に失敗した時のリカバリーのしやすさもアップしており、より「懐」の高い走りになっています。個人的に、初代は「0:100の全輪駆動」と言われていましたが、新型はより自在性が増したハンドリングから「トルクスプリット機能を備えたFR」と呼びたいくらいです。
新型SUBARU BRZは「安心」と「愉しさ」を全身で再現したクルマだ!
このように基本性能を大きく引き上げた走りに加えて、AT車には待望のアイサイトをはじめとする運転支援機能の充実、スポーツカーの中では世界トップレベルの衝突安全性能を備えるなど、まさに「スバルらしい」総合力を備えた新時代のFRスポーツと言える存在です。
価格は若干上がっていますが、全方位の伸び代を考えると個人的にはバーゲンプライスだと思っています。
それではそろそろ結論に行きましょう。
新型SUBARU BRZは初代ユーザーにとっては嫉妬するくらいの「進化幅」、スポーツカー経験者にはより懐が深くなった「自在性」と「FRらしさ」、スポーツカー未経験者にはスポーツカーならではの「安心」と「愉しさ」、そして初代では若干物足りなさがあった大人の琴線にも響く「クーペとしての魅力」や「質感向上」など、人によって様々な価値が備わった一台と言えるでしょう。
クルマだけに限らず、2代目は偉大な初代を超えることはできないと言われますが、これらを踏まえると新型SUBARU BRZに「2代目のジンクス」はないと思っています。そして初代と同じく、皆さんの手で育ててあげてほしいと思います。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。