鹿児島県は2025年11月25日、同年3月に全線開通を迎えた「都城志布志道路」で実施した交通調査から、半年間で地域にもたらされた開通効果をまとめたレポートを公開しました。

　都城志布志道路と周辺地域には、どのような変化が起こっているのでしょうか。

　都城志布志道路は、宮崎県南部の都城市にある都城ICから、鹿児島県曽於市を経由して、大隅半島の「付け根」となる鹿児島県志布志市にある志布志港までをダイレクトに結ぶ延長44.2kmの高規格道路です。

　途中までは九州地方を東回りで南下する国道10号のバイパスとして、宮崎県道12号線、鹿児島県道109・63号線で構成されています。一部区間を除き、自動車専用道路です。

　鹿児島県が国および宮崎県とともに進めてきた道路事業で、2005年に鹿児島県内の末吉IC～松山IC間が開通したのを皮切りに、宮崎県内の五十町IC～梅北IC間が2011年に開通するなど、両県内で順次工事が進められていきました。

　2025年には2月に都城IC～乙房IC間、同年3月に志布志IC～志布志港間が開通して、1994年の計画策定から約31年越しに全線開通を迎えました。

　これまでの同区間は、国道222号や国道269号といった一般国道のほか、東九州道、県道・市道が利用されており、各所で交通が混雑していたため、地域にとって待望の開通といえます。

　そんな都城志布志道路の交通量に関する調査結果を見てみると、末吉IC～松山IC間で行われた調査では、開通当初は12時間あたり1300台が利用していましたが、順次開通していく中で交通量は右肩上がりに増えていき、全線開通から半年が経過した現在は12時間あたり8300台が利用しているそうです。

　開通前後で比較すると、交通量はおよそ6倍に膨れ上がりました。

　開通前は都城ICから志布志港までの所要時間は約69分でしたが、都城志布志道路を利用すると約43分で到着できるようになったといい、所要時間は30分近くも短縮しました。交通量が大幅に増えても交通の流れはとてもスムーズな様子がうかがえます。

　周辺地域の交通状況に目を向けると、都城市街地北断面の国道10号などの並行路線の交通量は約2割も減少しており、都城志布志道路に交通転換が起きていることを示唆しています。

　また、頻繁に混雑が見られていた都城市の都北交差点や同市の乙房交差点の渋滞も緩和しているといいます。

　志布志ICと志布志港を結ぶルートでも、都城志布志道路に交通が分散されるようになったことで、県道63号線や一般市道などで交通量が2割減少し、渋滞が起きていた県道63号線の北大原交差点では、朝夕のピーク時における混雑時旅行速度が向上しているそうです。

　都城志布志道路周辺の交通が円滑に流れるようになったことで、周辺の工場などと志布志港間の輸送時間が短縮され、労働時間内の輸送回数が2.5往復から3往復に増加するなど、物流ネットワークの効率が工場しています。

　また、交通の円滑化は地域全体の医療面でも効果を発揮しているといい、曽於市内にある消防組合大崎分署から地域医療を支える総合病院・都城市郡医師会病院への所要時間は約34分も短縮。

　一般的な入院治療などの総合的な医療を受けられる「60分圏域」も拡大したことで、広域的な地域医療も充実したとしています。

　開通から半年で、周辺地域には多大な効果をもたらしている都城志布志道路について、地域住民からは「子供の通学の送迎時間が短縮して送迎の負担が減った」「鹿児島空港、宮崎空港、都城北高速バス停へのアクセスが良くなった」「何かあった時、都城市内病院が近くなり、安心」など、交通の円滑化と地域医療の充実といった点で好意的な反応がみられ、地域で暮らす人々も日々の生活の中で恩恵が感じられている様子です。