ひと昔前はいきなり50万円引きも… 最近の新車値引きが渋くなった理由

安全装備が充実しても価格を抑えている

 一つは「最近は安全装備の充実などによって、クルマのコストが高まっています。そこで販売会社やメーカーの儲けを削り、新車価格が過剰に高まるのを防いでいます。そのためにクルマ販売の利益も下がり、以前のような多額の値引きが困難になりました」といいます。

ディーラーでセールスマンと商談する購入希望ユーザー イメージ

 もう一つの理由では、「以前はメーカーから、いわゆるインセンティブ(販売奨励金)が活発に支給されていました。これを原資に値引き額を増額しましたが、最近は特別な時期を除くとインセンティブが支給されなくなりました。そうなると多額の値引き販売もできないわけです」と説明してくれました。

 その一方で日本の自動車メーカーは、北米などの海外市場では、活発にインセンティブを支払っています。インセンティブに頼ったり値引きを増額させる売り方は好ましくありませんが、販売促進の対象が国内から海外に移っているのは事実です。

 国産メーカーにとって国内市場の優先順位が下がり、値引きや販売促進のコストも減って、クルマの売れ行きが低迷しています。

 日本のユーザーとしては、海外で多額のインセンティブを使うなら、国内で売られるクルマの価格をもう少し下げて欲しいものですが、値引きは商談の仕方で差が生じて不公平ですから、安全装備の充実や環境性能の向上によって高まった価格を是正するのは、日本のユーザーに対して良心的な配慮ともいえます。

 ちなみに最近は輸入車(主にドイツ車)の売れ行きが少しずつ伸びていますが、この背景には、国産車とは逆にインセンティブの支給があります。発売から一定以上期間を経て販売台数が下ったり、次期型へのフルモデルチェンジが近づくと、車種によっては多額のインセンティブが日本市場に向けて支払われます。

 そのために小売価格が400~500万円の輸入車でありながら、商談の開始直後に「今月のご契約なら、100万円以上の値引きが可能です」という話になったりするのです。これでは値引き比率は価格の20%以上ですから、先ほどの計算式では自動車取得税の納めすぎになります。

国産セダンで欧州車に立ち向かう新型クラウン等写真で見る(5枚)

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