トヨタ初代「クラウン」誕生秘話 日本人の手で国産初の高級車という夢…
徹底した市場調査と新技術の採用
初代クラウンは、徹底した市場調査の結果、いくつかの新技術が採用されています。その1つは、前輪独立懸架式(ダブルウィッシュボーン式)サスペンションという、現在でも高級車に用いられるサスペンションです。
これにより悪路での上下の揺れが少なくなり、乗り心地が大きく向上しました。また「トヨグライド」と名付けられた半自動のオートマチック・トランスミッションも日本で初めて採用されました。いまでこそオートマチック・トランスミッションは当たり前ですが、当時はまだマニュアル・トランスミッションが主流であり、しかも、ダブルクラッチといって、一旦ニュートラルにシフトを入れた上でエンジンとギアの回転数を丁寧に合わせてからシフトチェンジ行う必要があるなど、なかなか大変なものでした。
トヨグライドは、現在のマニュアル・トランスミッションのクルマと同様、クラッチを踏んで直接シフトチェンジをすることを可能にしました。まだまだ、世界では弱小メーカーだったトヨタが生き残るためには、ライバルたちとの絶対的な差別化が必要であり、それが新技術を採用するということだったのです。
また、初代クラウンには観音開きのドアという見た目にもわかりやすい特徴があります。現在では、ロールスロイスの各モデルなどに採用されている観音開きのドアですが、これは後部座席が乗り降りしやすいという大きなメリットがあります。観音開きの採用と、当時の公務員初任給の100倍以上である101万4860円という販売価格からもわかるように、初代クラウンはタクシーなどの業務用を強く意識したモデルでもありました。