トヨタ「ランドクルーザー」かいすゞ「D-MAX」か!? 陸上自衛隊の軽装甲機動車のベース車に選ばれるのは? 2028年度中に評価試験

陸上自衛隊で運用されている軽装甲機動車(LAV、ラブ)の後継車について。防衛省が、民生用車両に装甲を施した車両の導入を検討していると、複数メディアで報じられており、そのベース車の候補にトヨタ「ランドクルーザー」といすゞ「D-MAX」が挙がっています。どうしてこの2車種が選ばれたのでしょうか。

防弾化を行った上で2028年度中に評価試験へ、どのモデルが使われるかは未発表

 陸上自衛隊で運用されている軽装甲機動車(LAV、ラブ)の後継車に注目が集まっています。

 防衛省が民生用車両に装甲を施した車両の導入を検討していると、複数メディアで報じられており、そのベース車の候補にトヨタ「ランドクルーザー」といすゞ「D-MAX」が挙がっています。

 どうしてこの2車種が選ばれたのでしょうか。

現在自衛隊に採用される三菱「1/2tトラック(旧73式小型トラック)」
現在自衛隊に採用される三菱「1/2tトラック(旧73式小型トラック)」

 すでに様々な媒体で報じられて話題になっているのが、陸上自衛隊で運用されている軽装甲機動車(LAV、ラブ)の後継車について。防衛省が、民生用車両に装甲を施した車両の導入を検討しているというものです。

 この“ベース車”の候補に挙がっているのが、トヨタ「ランドクルーザー」2車種と、いすゞ「D-MAX」の計3車種。これらを防衛省が調達し、防弾化を行った上で2028年度中に評価試験を行うといいます。

 軽装甲機動車は小松製作所が開発・生産を行った小型車両で、2000年から陸上自衛隊の各部隊で運用が開始されました。

 一定の防護力と機動力を持ちながら、島しょ地域や遠隔地などに航空力で迅速で運べる重量であることが特徴となっています。

 自衛隊のイラク派遣や東日本大震災の災害派遣で使われたことにより、一般に広く知られました。

 2019年には後継車両の検討が開始され、小松製作所が現行車両に引き続き開発計画を進めましたが、開発コストに対して利益が見込めないことから2019年に撤退を発表。

 それ以降はタレス社(フランス)「ホークアイ」やMOVAG社(スイス)「イーグル」といった装輪装甲車が国内企業から提案されていましたが、何らかの理由により調達が見送られた形となりました。

 その結果、白羽の矢が立ったのがランドクルーザーとD-MAXというわけです。意外と知られていませんが、実はランドクルーザーは海外で軍用車としての採用実績があります。

 その1台が、70系(HZJ76)をベースに改造を施したテクナム社「マスティックT4」。フランス陸軍に制式採用されている軍用車両で、非装甲軽多目的装甲車という名目で500台が調達されました。

 フランス国家憲兵隊の特殊部隊「GIGN」もまた、ランドクルーザーを使っています。昨年開催された軍事見本市「ユーロサトリ2024」のデモンストレーションでGIGNが使っていたのは、特殊装備を施した200系。車体には防弾が施されているほか、ルーフが大きく開口するよう改造されています。

 改造を手がけたのはフランス企業センティゴン社で、民間用から軍用まで様々なミリタリー仕様のクルマを製作しています。ちなみに現行モデルは、300系ベースの「ランドクルーザー・フォートレス300」となっています。

 こうした海外での実績も鑑みて白羽の矢が立ったと思われますが、構造的なアドバンテージもあります。クロスカントリー4WDやピックアップトラックは、“ラダーフレーム構造”と“リジッドアクスル式サスペンション”というメカニズムを持ち、堅牢性と耐久性に優れています。

 重量物を積むのも問題ありません。苛酷な状況で長年運用される軍用車には、まさにうってつけです。

 また、ラダーフレームから上のアッパーボディを変えることで、多様なボディバリエーションを容易に実現することができます。70系に多くのバリエーションが存在していることからもわかるでしょう。

 なおスズキ「ジムニー」も同じ資質を持っていますが、ノマドでもボディサイズが小さいため、採用されるのは難しいと考えられます。

 このような理由から今回のモデルが選ばれたことは明白ですが、ただし評価試験にどのモデルが使われるのかは発表されていません。前述の“実績”を考えれば、70系バンと300系の「GX」が思い浮かびます。

 しかし装輪装甲車という性格を考えれば、この2台にベース車としての適正があるのか少々疑問です。というのも、今回の候補にD-MAXが入っているからです。

 D-MAXは日本未導入のピックアップトラックですが、実は世界で活躍しているモデルです。

 アジアはもちろんのこと、シボレーやマツダのOEMモデルとして各国で販売されています。問題はなぜピックアップトラックなのか、ということです。

 実は世界の軍が現在使用している装輪装甲車は、ベース車両にトラックを使うのが主流。兵員が乗る居住区画と装備品などを積む荷室部分が、分離している車両がほとんどです。

 これはボディの一部を変更することで、搭載できる火器や用途を多様化させるためです。様々なシーンでの戦闘を行う現代戦への対応と言えるでしょう。

 こうしたことを考えれば、70系に関してはダブルキャブやシングルキャブが候補になっていることが十分考えられます。

 同時に、最新の設計思想で造られている300系のベースグレード・GXも候補に入れて、フォートレス300の発展形のような車両も想定しているのかもしれません。

 ちなみに筆者が2年前に開発関係者に聞いた話では、その時点で防衛省が70系バンに興味を持っているということでした。

 ただこちらの話は、調達終了が噂されている三菱製「1/2tトラック(通称パジェロ)」の後継ではないかとも言われています。

 1/2tトラックは「73式小型トラック」と呼ばれた時代、つまり1996年の運用開始からすでに30年近くが経過しており、2代目パジェロをベースにした設計はすでに前時代的と言われています。

 またタイヤを筆頭に部品調達に滞りが出ているという隊員の話が各駐屯地で聞かれ、“三菱はコスト割れで生産終了のタイミングを見計らっている”と見る向きが少なくありません。

 ただし生産計画やアフターの部品供給のことを考えると、汎用小型車両と装輪装甲車が同じベース車になることは難しいかもしれません。

「自衛隊で使うために70系バン(ナロー)の国内販売を数年以内に行うのでは?」という話も巷で出ていますが、使われるのはいずれかで…というのが筆者の予想です。

※ ※ ※

 今回のニュースを受けてネット上には、「ランクルが自衛隊に採用されたら、ますます一般人は買えなくなるよ」「これ以上の増産はトヨタ車体の製造ラインが心配すぎ」と危惧する声も。また、「トヨタやいすゞが防弾のノウハウを持っているのか?」という意見も見られます。

 果たしてどの車両が採用されるのか、2028年以降の結果が注目されます。

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Writer: 山崎友貴

自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。

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