コンビニの駐車場では、よく「前向き駐車にご協力お願いします」などと書かれた看板が設置されています。

　一般的には、「後向き駐車（バック）」でクルマを駐車することが多いですが、なぜコンビニでは前向き駐車をお願いしているのでしょうか。

　自宅や商業施設などの駐車場にクルマを停める際、「バック」で駐車枠に入れるのが一般的です。

　前向き駐車の場合は、出庫時にバックする必要があります。

　そうすると、バックしながら周囲のクルマや人を確認しなければなりません。

　そのため、一般的にはバックで駐車する「後向き駐車」を選択する人が多いです。

　では、なぜコンビニは「前向き駐車」をお願いしているのでしょうか。

　コンビニが「前向き駐車」をお願いする理由は、「近隣の民家への配慮」「顧客への配慮」「後向き駐車での事故リスク軽減」だと考えられます。

　ひとつずつ、詳しく解説していきます。

【近隣の民家への配慮】

　1つ目に考えられるのが、近隣住民への配慮です。

　コンビニは周辺に民家があるケースが多く、駐車場と民家が隣接している場合があります。

　後向き駐車の場合、立地によっては排気ガスやマフラー音が民家から近くなります。あまりにもひどいと、近隣住民から苦情が来るかもしれません。

　コンビニとしてはそのような状況は避けたいため、近隣の民家に配慮して、前向き駐車をお願いしていると考えられます。

　また、「前向き駐車」の看板を設置することで、「近隣住民に配慮して運営しています」という姿勢を示す効果が期待できます。

【顧客への配慮】

　2つ目に考えられるのが、顧客への配慮です。

　コンビニの入り口付近に駐車場がある場合、後向きでクルマを停められてしまうと、店内に排気ガスが流れ込む可能性があります。

　また、店舗に訪れた顧客に排気ガスがかかり、不快感を与えるリスクも考えられます。

　このように、顧客に気持ちよくコンビニを利用してもらいたいという思いから、前向き駐車の協力をお願いしているケースも少なくありません。

【後向き駐車での事故リスク軽減】

　3つ目に考えられるのが、後向き駐車での事故リスク軽減です。

　前向き駐車の場合、クルマの前方から駐車枠に入り、枠内でブレーキを踏んで、シフトレバーを「パーキング（P）」に切り替えて駐車します。

　一方、後向き駐車の場合は、クルマの後方から駐車枠に入れます。シフトレバーを「リバース（R）」に切り替えて、ブレーキを踏みながら枠内に収めなければなりません。

　1回で上手く停められなかった場合は、数回シフトレバーを切り替える必要があります。

　シフトレバーを何度も切り替えているうちに、「リバース（R）」の状態でアクセルとブレーキを踏み間違えて、店舗内に突っ込んでしまうという事故は珍しくないです。

　コンビニでは前向き駐車を推奨しているケースが多いですが、必ず前向きで駐車しなければいけないわけではありません。

　たとえば、市街地などのコンビニの場合、駐車場から歩道や車道までのスペースが非常に狭いです。

　このような状況のとき、後向き駐車であれば前向きで出庫できるので安全です。

【「前向き駐車」と「後向き駐車」の判断はどうすればいい？】

　店舗側は、前向き駐車してほしい場所に看板を設置しているケースが多いです。そのような場合は、前向き駐車に協力しましょう。

　また、店舗の入り口付近に停める場合も、看板の有無に関係なく、排気ガスを配慮して前向き駐車するのがおすすめです。

　郊外などの駐車スペースが広いコンビニの場合、店舗の入り口付近と看板が設置されている場所以外は、後向き駐車で問題ないでしょう。

【「前向き駐車」の看板を無視したら違反になるのか】

　コンビニが設置している「前向き駐車のお願い」の看板は、あくまで協力依頼です。無視して後向き駐車しても違反にはなりません。

　しかし、「前向き駐車の協力依頼」には、近隣住民や顧客への配慮、事故リスクの軽減という意味があるため、できる限り協力しましょう。

　また、「前向き駐車」の看板を無視して、後向き駐車をして何かしらの事故が起きて裁判になった場合、ドライバー側が不利になる可能性があるので注意してください。

【「前向き駐車」のコツ】

「前向き駐車」は、「内輪差」を意識して駐車するのがポイントです。

　ドライバーは、無意識に前輪の軌道をイメージしてハンドルを切る傾向にありますが、曲がる際は、前輪よりも後輪が内側に入ります。

　そのため、小さく回ると、クルマの後方が隣のクルマに接触してしまう可能性があります。

「前向き駐車」で隣のクルマとの接触を回避するには、少し大きく回って駐車枠に入るのがコツです。

　駐車は焦る必要はないので、落ち着いて前方後方どちらにも注意して、安全に停めるようにしましょう。

　また、「前向き駐車」をした場合は、出庫時にバックする必要があります。

　後退時は、人や他のクルマとの接触事故が多いため注意しなければなりません。

　バックカメラだけではなく、必ず目視で確認して出庫することを心掛けてください。