トヨタの「“7ドア”ミニバン」! 全ドアヒンジ&豪華「ソファ」内装を採用! 8人乗りのながーーい感あるラウンジマシン! トヨタ米国のF3Rとは
かつてトヨタが北米で発表した「F3R」は、既存のミニバン像を覆す“7ドア”仕様の未来志向コンセプトカーでした。大胆すぎるその中身とはどのようなものだったのでしょうか。
ドアが7枚!? トヨタの"F3R"とは
自動車メーカーが未来のモビリティを提示するために製作するコンセプトカーは、ブランドの進むべき方向性や技術の可能性を映し出す存在です。過去を振り返ると、奇想天外な印象深いコンセプトカーが数多く披露されてきました。
2006年の北米国際自動車ショー(デトロイトショー)でトヨタが発表した「F3R」も、従来のミニバンのイメージを大きく覆す革新的なコンセプトカーでした。

開発は、トヨタの米国デザイン拠点Calty(キャルティ)と先進戦略チームによる共同プロジェクトで、若年層への訴求を意識した“クールなミニバン”という新しい価値提案が掲げていました。
F3Rのテーマは“Living Room On Wheels(車輪の付いたリビングルーム)”。車内を単なる移動手段から、社交やくつろぎの空間へと昇華させるというアイデアは、当時としては極めて先進的なものでした。
乗車定員は3列シートで最大8名。エンターテインメント性を重視したインテリアと大胆なエクステリアが組み合わされたこのモデルは、ファミリーカーの固定観念に一石を投じるものでした。
最大の特徴は、“7ドア構成”にありました。左右にそれぞれ3枚のドアと、後部テールゲートを加えた設計で、そのうち2枚目と3枚目のドアは観音開きとなる大開口ドアを採用。乗降性の向上だけでなく、ラウンジのような開放感を演出していました。
スタイリングは、楔形の「ウェッジ」シルエットと「ボックス」形状を融合。「bB」にも通じる直線基調のボディに、22インチホイールを四隅に配置。サイドの“コメットライトキャッチ”やLEDランプ、スナブノーズのグリルなど、個性的でアグレッシブな印象を演出していました。
そして最大の見どころは、徹底的に“ラウンジ化”されたインテリアです。運転席は回転式、助手席はシェーズロングに変形可能。2列目シートは床下に収納したり、L字ソファ化が可能で、センターにはチャイルドシート装着用のギミックも備えていました。
3列目には視界を確保するスタジアムシートを採用し、まさに“動くリビングルーム”という提案を体現していました。
照明にも工夫が凝らされており、シートやドアには光ファイバーを織り込んだ青色アンビエントライトを採用。モード切替で色調が変化するデジタルメーターや、車内全体のAVや照明を制御できる着脱式リモコンも用意され、居住空間としてのこだわりが随所に見られました。
さらに、フロアにはリサイクル樹脂「エコレジン」、シート表皮にはダイオキシン非発生素材「ミトス」を使用するなど、環境配慮の姿勢も明確に示していました。車載技術では、映画やゲーム用のフラットパネルを2基搭載するなど、当時としては斬新な装備が並んでいました。
パワートレインの詳細は明らかにされていませんでしたが、車体には「ハイブリッドシナジードライブ」のバッジが掲げられており、ハイブリッド技術の搭載を想定していたと見られていました。詳細なスペックは明らかにされていないものの、ロングホイールベースによる広大な室内空間が最大の武器とされていました。
F3Rは市販化には至りませんでしたが、3代目「シエナ」など、後のトヨタ製ミニバンにデザイン面で影響を与えました。快適性と多用途性を追求したその設計思想は、現在のレクサス「LM」など高級ミニバンにも受け継がれていると考えられます。
F3Rのように“くつろぎ”を中心に据えた車内空間は、その後のEV時代のコンセプトカーにも共通する要素です。自動運転やコネクテッド技術の進化により、クルマは単なる移動手段から生活・社交空間へと変化しつつあります。
斬新すぎるがゆえに市販化されなかったF3Rですが、“ラウンジ空間”を車内に持ち込むという発想は、電動化と自動運転が進む現代においてもなお重要なヒントを提示していました。ミニバンという枠組みを超えて、移動空間の未来像を先取りした先進的な試みだったといえるでしょう。
今後のモビリティ社会において、この大胆なアイデアが再評価される日が来るかもしれません。
2025年秋開催予定の「ジャパンモビリティショー」では、また新たな未来のミニバンの提案があるかもしれません。期待が高まります。
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