安全への認識の甘さ? 法制化から18年経っても装着率6割のチャイルドシート
チャイルドシートが法制化されて18年が経過していますが、JAFや警察庁の調査によると、直近の装着率は64.1%です。なぜ義務化になってもチャイルドシートの装着率は低いのでしょうか。
実はあまり知られていない正しいチャイルドシートの使い方
チャイルドシートは法律で使用が定められた唯一の育児用品です。2000年に法制化されて18年が経過していますが、JAFや警察庁の調査によると、最新(2017年)のデータでも装着率はまだ64.1%です。また、チャイルドシートを使っていたとしても正しく使われているケースはごくわずかです。なぜ義務化になってもチャイルドシートの装着率の低さや誤使用が多いのでしょうか。
筆者(加藤久美子)は2001年にチャイルドシート指導員の資格を取得し、これまで数百台のチャイルドシート診断を行ってきましたが、10台中完璧に使われているのは1台あるかないかで、そのほとんどは誤装着です。
また誤使用で「ベビーシート(乳児用)なのに前向きで使っている」なども多いのですが、本当に危険なのが「子どもの身体を拘束するハーネスが緩すぎる」ことです。
チャイルドシートが車の座席に確実に装着されていても、ハーネスが緩いと事故の際、衝撃でハーネスの間から子どもの身体が飛び出してしまい危険です。また、子どもを乗せるときにはできるだけ薄着で、分厚いコートなど着ている場合は脱がせましょう。車のシート(背もたれ)、チャイルドシートの背もたれ、子どもの身体、この3者ができるだけ密着するように使うのが安全です。
チャイルドシートメーカーはどう考えている?
では、実際にチャイルドシートメーカーは装着率の低さや誤使用、誤装着が多いことに対してどのように考えているのでしょうか? 株式会社カーメイトでチャイルドシートなどを扱うブランド「エールベベ」を担当する西條宗丈さんに話を聞いてみました。
――― チャイルドシートの装着率がなかなか上がらない理由はどんな事だと思われますか?
今まで事故したことがないから大丈夫。事故しなければチャイルドシートは使用しなくて問題ないだろうという、親の安全に対する認識の甘さによるものだと思います。新生児がいながら使用していない場合は、完全に親としての義務感が欠けていると言えますが、装着率が1歳以降に下がることに関しては、親としての義務感が子供の成長と共に緩んでいるということが原因だと思います。
―――誤装着や誤使用が多いのは何が理由だと思われますか?
チャイルドシートメーカーによって取り付け方が異なり、同じメーカーでも機種により取り付け方が異なるなどの複雑さも原因であると思います(特にシートベルト取付タイプ)。ですので、メーカーや機種による違いがそれほどなく、人の力に頼らないISOFIX(国際標準化機構が定めたチャイルドシートの固定方法)取付タイプを推奨していきたいです。
―――チャイルドシートの取付や使用方法など、ユーザーから多い質問はどんな内容ですか?
「ベルトの長さが足りない」「こどもが窮屈でつらそう」などチャイルドシートの調整の仕方に関する内容が比較的多いです。詳細をお聞きすると新生児用クッションを付けたままであるとか、ハーネスやヘッドレストの調整をしていなかったとか、厚い上着を着せたまま乗せていた、などのちょっとしたミスユースが要因であることが多いです。
―――チャイルドシートを正しく使ってもらうために、御社ではどのような取り組みを行っていますか?
製品では取扱説明書だけでなく、わかりやすい動画の作成(お持ちのスマホなどで、製品本体のQRコードから見ることができます)を徹底しており、販売店様においては商品の説明と実車での取付実演などのイベントも定期的に行っております。もちろん、よりミスユースを起こさない簡単でわかりやすいチャイルドシートを開発するということは日々努力し続けております。
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チャイルドシートに関する正しい情報はチャイルドシートメーカーの公式サイトで、まずは自分の車にそのチャイルドシートが装着ができるかどうかのチェック(適合)から始めましょう。その際、車名と年式などが必要になってきます。「ミニバンだからチャイルドシートも余裕でつくだろう」と思っていたら、スライドシートのレールがサポートレッグに当たって装着不可など、商品によっては取り付けできない場合も意外と多いのです。
また、ISOFIXタイプのチャイルドシートを付ける場合は、マイカーにISOFIXバーが付いているかどうかも確認しましょう。
【了】
Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。