「レオン」や「フィフス・エレメント」といった代表作を持つリュック・ベッソンが制作・脚本を務め、「グランド・イリュージョン」などのルイ・レテリエがメガホンを取った、2002年公開のカー・アクション映画「トランスポーター」。

　主人公フランク・マーティン（ジェイソン・ステイサム）は、「契約厳守」「依頼者の名前は聞かない」「依頼品を開けない」といった厳しいルールを自身に課している、いわゆる運び屋（トランスポーター）。そんなストイックな主人公フランクによる激しいカー・チェイス、ムキムキの肉体から繰り出される格闘シーン、さらに疾走感あふれるストーリーで、一躍人気シリーズとなりました。

　第1作目でフランクが相棒に選んだ車は、1999年型のBMW735i（E38）。こんな高級車でカーアクション！？ と驚いてしまいますが、作品序盤では“荷物”である銀行強盗を運ぶ＝逃がすため、この735iでニースの細い街道を猛スピードで滑走します。繊細かつ大胆な運転でパトカーをまく様子は爽快の一言。フランクの運転の激しさに強盗団が窓を開けて嘔吐する場面がありますが、これは「TAXi」を連想させるベッソン流の遊び心でしょう。

　そんな激しいカーアクションを繰り広げながらも、車庫に戻ってきた735iはピッカピカ。実は制作費の問題で車をあまり壊せないという事情もあったと言われていますが、キズ1つない車体は完璧主義のフランクの性格を象徴しているかのようで、その演出にも一役買っています。

　しかし劇中、荷物を運ぶ最中にドライブインで休憩していたところ、突如735iが大爆発。トランクに積んでいた荷物は、誓いを一つ破ってしまったフランクの口を封じるために犯罪組織が仕掛けた時限爆弾だったのです。危うく殺されかけたフランクは組織への復讐を誓いますが、ここからがアクション俳優・ステイサムの腕っぷしの見せどころ。王道の対多人数バトルから多彩なシチュエーションバトルなど、カーチェイスシーンと併せて楽しませてくれます。

　同作の大ヒットによりシリーズ化していく「トランスポーター」ですが、735iの出番は本作まで。犯罪の片棒を担がされた上に悲惨な末路を迎える735iを、その目に焼き付けましょう。