トランプ氏の「米国車が日本で売れてない!」発言が波紋… 実際「アメ車」は日本にアンマッチなのか? 過去には「日本特化モデル」導入で失敗も どうあるべきなのか
新たに米国大統領に就任したトランプ氏によると発言が物議を呼んでいますが、なかでも「我々は日本でまったく車を売っていない」というコメントは、自動車業界で波紋が広がっています。一体どういうことなのでしょうか。
アメリカ車は日本で売れない? 実際どうなのか
トランプ大統領が就任し、関税など日本の自動車業界にも大きな影響があることが予想されています。その中で「我々は日本でまったくクルマを売っていない」というトランプ大統領の発言が物議を呼びました。
たしかに、日本市場でアメリカ車の割合は少ないですが、その理由を改めて整理してみてみましょう。

アメリカ車が日本市場で売れない。それは事実なのでしょうか。まずは数字で見てみましょう。
2023年度に日本で登録された輸入乗用車は24万3383台で、もっとも売れたアメリカ車ブランドであるジープの台数は1万627台で、シェアは4.37%でした。
次に多く登録されたアメリカ車ブランドはシボレーで、台数690台のシェア0.29%、その次にキャデラックで505台、シェア0.21%といった具合でした。
現状、日本に正規輸入をしているアメリカ車ブランドはジープ、シボレー、キャデラック、テスラの4つで、テスラは日本での販売台数を公表していません。
ちなみに、最も輸入車ブランドの中でシェアが大きかったのはドイツのメルセデス・ベンツで、5万1526台。シェア21.17%となっています。
アメリカ車ブランドが日本市場で売れていないのは、ディーラー網が少ないこと、ボディサイズが大きい傾向にあり、日本の道路事情にマッチしていないこと、そして排気量が大きいモデルが多く日本の税制とマッチしていないことが現状の主な理由といえます。
それぞれの国ごとの道路事情がその国のクルマたちを作るともいえますが、日本の輸入車市場の中でも人気はヨーロッパブランドに集中しています。
これはヨーロッパ諸国では市街の道路が狭いところが多く残っており、日本の道路事情に似ているという面もあるのでしょう。
ただ、現在の状況としてテスラは例外的といえます。テスラは日本市場での台数こそ公表していませんが、聞くところによると近年の日本市場での販売は想定よりも好調で、これから先もブーストをかけていきたいそうです。
BEV(バッテリー電気自動車)で先進的なイメージが、新たなブランドイメージを求める顧客層にマッチしているのでしょう。
日本市場での主力といえる「モデル3」も、サイズ感的にBMW「3シリーズ」やメルセデス・ベンツ「Cクラス」といった、輸入車のなかでも20年以上販売台数のトップを飾ってきたDセグメントセダンと近いので、日本で受け入れられやすいのもあると思います。
ちなみに過去、アメリカメーカーは日本市場でも売れるクルマを投入するために、日本市場に真剣に向き合った時期がありました。
それがサターンの「Sシリーズ」やクライスラー「ネオン」などで、当然右ハンドル仕様なども用意されていました。
なかでも、対日本市場向けが最も色濃く出ていたのがGM(ゼネラルモーターズ)製の「キャバリエ」で、日本車同様に右ハンドル化やウインカーレバーが右側に移設されていることに加え、トヨタへOEM供給を実施。
トヨタディーラーでトヨタ「キャバリエ」として販売されていたのです。
これらのクルマたちは元々アメリカ市場で販売されていた小型車を日本市場向けに仕様変更したものがほとんどですが、仕様変更をおこなって販売しても、その販売実績は芳しくなく、数年で日本市場から撤退してしまいました。
販売が芳しくなかった理由としては、質感の低さや装備の不十分さなどがいわれています。
日本車はコンパクトながらも質感の高い内装を持ったグレードがあったり、充実した装備があったりするのが特徴的です。
また、ヨーロッパ車は「プレミアムコンパクト」といった表現が使われることも多く、小さいボディサイズながらプレミアム感のある魅力的なモデルが多いのも、日本市場で受け入れられている理由でしょう。
アメリカ車が日本市場でよりシェアを拡大するのに必要なのは、粘り強さかもしれません。
単にコンパクトなモデルを投入するだけではダメで、そこにプラスして質感や先進性といった魅力を持ったモデルが必要なのです。
そのようなコンパクトカーへと投入したクルマたちを仕上げていく前に、アメリカ製のコンパクトカーは日本市場から撤退してしまいました。
今後、アメリカ車が支持されるには時間をかけ、日本市場で受け入れられるモデル作りが必要かと思いますが、現在の日本市場はアメリカブランドにとって、それを行う費用対効果が見合うとは思えません。
いわゆる「ビックスリー」の1つであるフォードが撤退したように、アメリカブランドにとって日本市場は魅力的な市場ではないのです。
Writer: 西川昇吾
1997年生まれ、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。大学時代から自動車ライターとしての活動をスタートさせる。現在は新車情報のほか、自動車に関するアイテムや文化、新技術や新サービスの記事執筆も手掛ける。また自身でのモータースポーツ活動もしており、その経験を基にした車両評価も行う。


















































