スズキの小型トールワゴン「ソリオ」なぜ“軽じゃないスライドドア車”が人気? 強敵ライバル「ルーミー」に“負けない”ところとは?
背が高いボディとスライドドアがなぜウケる?
このようにソリオが高い人気を得た背景には、ルーミーの設計が古くなった影響もあるでしょう。
ルーミーのライバルは、今のところルーミーの姉妹車であるダイハツ「トール」およびスバル「ジャスティ」と、ソリオおよびその姉妹車のデリカ「D:2」のみですから、ユーザーは実質的に二者択一となっています。
そして、ルーミーを買いたいユーザーがライバル比較をすれば、ソリオを選ぶ可能性も高まります。

しかもルーミーは相当な人気車です。2024年には、製造メーカーのダイハツが型式指定申請に関する不正問題で、ルーミーは一時出荷停止となったものの、1か月平均で5642台を登録しました。2025年1月は6258台、2月は7800台と増えており人気は根強いです。
ソリオはルーミーに需要を奪われているというより、ライバル車になることで、ユーザーを紹介してもらっている形だといえるでしょう。
それならルーミーは、なぜ発売から8年以上を経過しながら販売が好調なのでしょうか。
販売店では「軽自動車のスーパーハイトワゴンの人気によるところが大きい」といいます。
今は軽自動車が国内で売られる新車の40%近くを占めて、しかも軽乗用車の半数以上は、全高が1700mmを超えるボディにスライドドアを装着するスーパーハイトワゴンです。国内販売1位のホンダ「N-BOX」、軽自動車で販売2位のスペーシア、3位のタントは、すべてスーパーハイトワゴンです。
そしてスーパーハイトワゴンが欲しいものの、何らかの理由で軽自動車は避けたいと考えるユーザーが、ルーミーやソリオを選ぶというわけです。
販売店では「今の30歳以下のお客様は、(1990年代の中盤から急速に普及した)ミニバンに幼い頃から親しんでいたので、スライドドアの付いた背の高いクルマを選ぶ傾向が強いです」といいます。
クルマ選びの条件に、スライドドアを備えた背の高いコンパクトな車種を挙げるユーザーが増えたことで、軽自動車のN-BOXやスペーシア、小型車のルーミー、さらにライバルのソリオが売れ行きを増やしました。
今の売れるクルマ造りの秘訣が背の高いボディとスライドドアの装着にあるなら、2024年にコンパクトミニバンのトヨタ「シエンタ」が1か月平均で9258台、ホンダ「フリード」が7114台売れたことも納得できます。
コンパクトミニバンも、実質的にシエンタとフリードしかないためです。
そうなると日産は、かつて人気車だった背の高いコンパクトカーの「キューブ」に、スライドドアを装着して改めて復活させると良いでしょう。
マツダも現在の「マツダ2」に加えて、2代目「デミオ」や以前の「ベリーサ」のような背の高いコンパクトカーを投入するとユーザーから喜ばれるはずです。
ソリオ/ルーミー/シエンタ/フリードの高人気は、今の日本のユーザーが、スライドドアの付いた背の高い小型車を求めていることを明確に示しているといえ、商品開発の大切なヒントになると思います。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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