速く走るには溝は要らない? 新品でも「つるつる」スリックタイヤ、一般タイヤと何が違う?

「アレ?」GTマシンで使われるタイヤをよく見てみると、一般的に使われているタイヤと違うことに気がつくと思います。そうです、タイヤに溝がないのです。なぜ溝が無いタイヤがレースでは使われるのでしょうか?

一般タイヤは全天候型、レースタイヤは「早く走る」ため

「アレ?」GTマシンで使われるタイヤをよく見てみると、一般的に使われているタイヤと違うことに気がつくと思います。そうです、タイヤに溝がないのです。なぜ溝が無いタイヤがレースでは使われるのでしょうか?

レース用タイヤ(右:溝が無いスリックタイヤ/左:溝ありのウェットタイヤ)

 週末に行われた国内最高峰レースカテゴリー「スーパーGT 2018開幕戦岡山ラウンド」は、気温の低さと安定しない天候に悩まされたレースウィークとなりました。

 スーパーGTに参戦している各チームは、3月17日(土)/18日(日)に行われた公式テストでの気温をもとに、これがさらに上がることも予想して最終的なタイヤの性能を決定します。

 しかし、テスト時には汗ばむほどの陽気だった岡山国際サーキットの気温も、スーパーGTが開幕した4月7日(土)の気温は常に10度を下回る状況。雨や雪、雹まで降る悪天候の中、各チームともドライ用の「スリックタイヤ」と、雨天用「ウェットタイヤ」の選択で悩まされていました。

 ではなぜレースで使用するタイヤは、こうした天候や気温に性能を左右されるのでしょう。それはレーシングタイヤが「速く走ること」に性能をフォーカスした、レース専用タイヤだからなのです。

 普段、私たちが使う一般のクルマに履くタイヤは、雪道のスタッドレスタイヤを除いて「全天候型」が基本です。つまりひとつのタイヤで全ての路面をこなし、パンク等がない限りは3~4年のライフスパンをかけて履き通すのが通常です。

 それに対しレーシングタイヤは、晴れや曇り時に使う「スリックタイヤ」と、雨天時に使う「ウェットタイヤ」大きくわけて2タイプあります。これを天候に応じて使い分けます。

 雨が降らなければ使用する「スリックタイヤ」には、わたしたちが通常使うタイヤとは違って“溝”がありません。これはなぜなのでしょう?

 それは「加速」「ブレーキング」「コーナリング」という局面において、最大のグリップ性能を発揮させるためのタイヤだからです。

 遠心力や慣性に打ち勝って、タイヤがより高いグリップを発揮するためには溝がない方がよいのです。溝があることによってタイヤのゴム部分はよれやすく、グリップ力が下がってしまうからです。

 もともと「スリック」(slick)とは「つるつるした」とか「つるつる滑る」という意味です。もちろんレースで使われるレーシングタイヤは新品ですし、つるつる滑るということはないのですが、見た目で呼ばれたものが通称となったのです。逆の意味で呼ぶなんて面白いですね。

 この溝のないスリックタイヤにも、いくつもの種類があります。レーシングチームはその中から自分たちの取る作戦に照らし合わせながら、レースに必要な性能を持つタイヤを選びます。ひとりのドライバーが長く走る場合は「ハード」コンパウンド(ゴムのこと)と、ソフトコンパウンドの組み合わせだったり、予選を勝ち抜くためにソフトコンパウンドのタイヤだけを選んだりします。

 そしてここに、気温と天候が絡んでくるのです。

スーパーGT 2018レースクイーン写真で見る開幕戦(59枚)

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